《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》きっかけ

アーツブルク王國騎士団専用の演習場は剣が衝突する金屬音が鳴り響いていた。

白い円形の実踐訓練の舞臺で私はいつものように剣を握り、舞った――。

――鈍い金屬音とともに決著がつく。

「どうしました? 騎士団長、今日は調子が悪いのですか?」

私は剣の切っ先を白銀の鎧をに付けた壯年の男の顔に突きつける。

「はぁ、ついに本気でやっても秒殺されるようになったか。この天才め! 自信なくなっちまったじゃねぇか。はっはっは」

壯年の男は両手を挙げて降參の姿勢をとった。そうですか、もうこの方でも相手にはならなくなってしまいましたか。

私はしだけ殘念な気持ちになってしまいました。

「お前さんが騎士団にって天才《剣姫》なんて呼ばれるようになっちまった。最初は貴族のお嬢様に厳しい稽古つけてやろうと思ったのにさ、オメーは本當に化じみた才能だぜ」

アーツブルク騎士団長のグレン=ブラームスはニヤリと笑って軽口を叩く。

実際、私もそう思います。貴族が騎士団にるのは所詮お遊び。

戦になっても前線には決してれてはくれません。こんなとき公爵家の娘という分が煩わしいとじます。

自惚れかもしれませんが、自分の剣の才能は並みじゃありません。

稽古すれば、際限なく強くなってしまいます。

だからこそ、力を上げても戦えないもどかしさに苛つきをじるのかもしれません。

「私が力をつけることが出來たのは、騎士団長の厳しい稽古があったからですよ。共に戦場に出られないのは殘念ですが」

「ははっ、違ぇねぇな。公爵家の令嬢が戦場でドンドン首を取っていったらみんな引いちまうもんな。嫁の貰い手が居なくなっちまう」

グレンはニヤリと笑った。

「相変わらず、お口が悪いのですから。そうならないように善処します」

「おっと、すまねぇ。がっはっはっ」

グレンは豪快に笑い聲を上げた。しかし、私は本當に殘念なのだ。戦場に出られないのは……。

おそらく誰もそんなことは理解してくれないだろう。

「エルザ様ぁ、エルザ様っ。大変でございます!」

ハルクメルズ家の執事、アモスがこちらに駆け寄ってくる。

何でしょうか? あんなにも急いで……。

「るっルドルフ皇太子殿下が、火急の用事があると……、はぁはぁ、こちらに……。なんでも、天才《剣姫》と話がしたいと……」

アモスは息絶え絶えになりながら、ルドルフが我が家に訪問した旨を伝えた。

火急の用事とは穏やかではありませんね。

、皇太子殿下が直々に臣下の所に足をお運びになるなんて、滅多にないことです。

私と顔を會わせた回數も3回ほどしかありませんし。何の用件なのか見當がつきません。

「とにかく戻りましょう。アモス、疲れているところ申し訳ありませんが、走りますよ」

「はっはい。エルザ様!」

私とアモスは急いで帰路についた。

ルドルフの訪問は事実だった。既に応接間で待たれているとのことだったので私は急いで著替える旨を従者に伝えました。

「殿下は火急の用と仰ったのです。格好など何でも構いません」

フードを深くかぶって、赤の竜の刺繍のしたローブを著た従者はそのようなことを言いました。

「ええっ、しかし流石にこの格好では……」

私は躊躇しました。それもそのはず、私は鍛錬場からそのままの格好で戻ってきたのだから。

はしたないどころの話ではないのです。

「急がれた方がよろしいかと、殿下は待つことがお嫌いです。そのままで構いません」

従者はそれでも譲りませんでした。そこまで仰るのなら仕方がありません。私は赤い鎧という令嬢としてはありえない格好で応接間に向かったのです。

「はぁ、憂鬱ですね。しかし、これもハルクメルズ家のためです」

私は廊下を進み一番奧の部屋の前で深呼吸しました。用件とは何なのでしょうか?

――ガチャりと扉をあけて私はまず頭を下げた。

「遅くなって申し訳ありません。あと、この格好はその……」

私はやはり何を言えばよいのか分からなくなりました。

「やぁ、エルザ。元気そうだな」

長い茶髪で青い目をした端正な顔立ち。ルドルフ皇太子殿下がソファーに座りながら聲をかけました。

「はっはい。殿下もお変わりないようで……」

私は相変わらず張しっぱなしです。

そういえば腰の剣すらに付けたままということに気が付いて顔が青くなっていました。

「いや、突然ここに來た僕が悪いんだ。剣の稽古をしていたんだろ? 天才《剣姫》さん」

「えっあっはい、そうです。申し訳ありません」

私は恥ずかしくなってしまい俯きそうになってしまいます。

「謝らなくても良いじゃないか。騎士団の者たちが使っている剣にはちょっと興味があるんだ。見せてくれたまえ」

急ぎの用件があるにも関わらず、剣を見せてしいとはどういうことなんだろう?

私はし疑問に思いましたが、素直に剣を手渡しました。

「うわっ、結構重いな。僕が使う訓練用のレイピアとはえらい差だ。ふーん」

ルドルフは剣を抜いて眺めていた。用件って……。

「ああ、ごめんごめん。用事って言うのはさ。ちょっと君に皇太子殺人未遂の罪を被ってしいんだ」

ルドルフは笑顔で私を見た。はっ? この方は冗談を言われているのか? 本當に何を言っているんだ?

私はキョトンとした顔をしていました。

殺人未遂の罪を……?

「殿下? 今、穏やかではないことを仰っておられたような気がしますが? なぜ私が?」

私は訳がわからずにルドルフに説明を求めました。

ただ、漠然と嫌な予には襲われていました。

「君は僕に恥をかかせた。君のようなバカには復讐が必要だよ」

ルドルフは顔を歪ませながら笑顔を更に強調させて、私の剣に赤いのようなを塗り付けた。そして……。

「助けてくれっ! 殺されるっ!」

ルドルフは大聲を上げる。

私の頭は混が渦を巻いていました。

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