《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》魔王軍の幹部たち
自己紹介が終わり、私もアリシア様に促されて席に座りました。
今日は地上のどの國を攻めるのか話し合うのだそうです。
「炎の魔城と氷の魔城を落とされたと聞いた。こちらの戦力をさらに増強して攻勢をかけねば厳しいのでは?」
青髪でメガネをかけているレイシアは現実的な話をしていました。
「んなこたぁ、みんな承知してんだろ? アリシアには、何か考えがあるはずだ。じゃねぇと、オレたちをここに呼ぶわけねぇもんな」
黒いバンダナのグレンは相変わらず口が悪いですね。
「あら、グレン。わかってるじゃない。あたしが無策な訳がないでしょ。次に落とすのはココよ」
アリシア様がを乗り出して、地図の中のある國を指差します。
一生懸命腕をばす姿が何とも可らしい……。私はまた、変なことを……。
その國はエデルジア王國じゃないですか。かなりの大國ですが、どういう意図でしょうか?
「アリシア様ぁ。エデルジアは大國ですよぉ。下手に攻めたら、わたくしたちの被害は大きいですわぁ」
黒の翼をもつミリアは泣きそうな聲を出しました。
「そうだよー、もうちょっとボクは弱い國からしずつ落とすべきだと思うけどなー」
赤髪のツインテールのメリルも渋い顔をされてました。
「今までのように弱い國からジワジワ落とす作戦はもうストップしていいわ。あたしの戦略にかかれば大丈夫なんだから。作戦はあるから安心していいわ! まずは――」
アリシア様がエデルジア王國を數で攻略する戦略を公開しました。
こ、この方は恐ろしい程の力を持っていることは承知していましたが、もっと恐ろしいのは、智謀なのかもしれません。
アリシア様は兵法家としても超一流でした。私は想像以上に偉大でとてつもない方の部下になってしまったようです。
空中要塞ですら、囮に使うダイナミックな戦略。
どうやら一年がかりで準備して確実に落とす恐ろしい作戦のようです……。私は背筋に寒気がしました。
「――っとまぁ、こんなところよ。どうかしら?」
アリシア様のプレゼンが終わりました。五人はしばらく黙っていました。
「――やれる。それでいい」
最初に口を開いたのは、終始黙っていたガッシリとした筋質のネルソンでした。
それに合わせて殘りの四人も頷きます。
アリシア様は満足そうな笑みを浮かべていました。この方は、魔王ではなくて天使なのではないでしょうか?
「じゃあ、これからはエデルジア攻略の準備に取り掛かるわ。みんな、厳しい戦いになるかもしれないけど、あたしたちには使命がある。この世界をあるべき理想の世界にするために! 流はもちろん、乗り越えなくてはならないことは沢山あるわ! それでも、諦めちゃ終わりよ! ついてきなさい、あたしがみんなを導くわ!」
アリシア様は會議の最後を締め括られました。
五人の顔つきが変わったように見えたのは気のせいでしょうか?
皆さん、口では々と仰っていますが、アリシア様のことを認めてらっしゃることは短い時間でよく分かりました。
「でっ、エルザはどうだった?」
アリシア様は私に急に話を振って來られました。
「えっと、私ですか?」
私はいきなりで言葉が詰まってしまった。
「そうよ、あたしたちの印象とか々とあるでしょ。今、この中に人間ってあなたしか居ないから、あなたの意見って貴重なのよ」
アリシア様は私に意見を求めてられました。
思ったままを言って良いものなのか? 私はしだけ、迷いました。
「思ったままを言いなさい。あたしたちは何にも気にしないわ」
アリシア様は優しく仰ってくれました。
そっそうですか。遠慮なく申し上げましょう。
「魔族の方々と聞いていましたので、もっと何と言うか、怪のような方々だと思っていました。そして、兵士も……その、魔とか魔獣などを遣われるのかと……。ですから、今日皆さんを見て想像と違うなぁとじました」
私は自らの想像する魔王と魔族とのギャップについて話しました。
「はっはっはっ、そうかー。人間ってオレらのことをそんな風に思ってんだなぁ。魔なんて、れたらこんなに小さい島に引きこもってねぇよ」
グレンは大聲で笑い出しました。
「ふふっ、なるほど。わたくしたちって、結構怖がられていますのね。道理でこの島に誰も寄り付かない訳ですわ」
ミリアも今気が付いたという表をしました。
「しかし、これは大きな問題ではないか? 我々魔族の印象は最低と言っても過言ではない」
レイシアは腕を組んで考え込んでいます。
「はぁ、あんたたちは人間たちの魔族への印象を今更知ったの? あたしたち魔族は昔から畏怖される存在だったのよ。魔王なんて、何度も世界征服を企んで勇者にやっつけられてることになってるんだから」
アリシア様はため息をつきながら説明されました。そっそれも違うのですか?
「當たり前よ、本當に世界征服をしようと考えた魔王はあたしが最初だわ。魔王っていうのは、魔族で一番魔力が高い者に與えられる稱號みたいなものなの。だから、あたしの親は魔王じゃないわ。前魔王はそこのグレンの父親よ。魔族は人數がないから、野心を持つものはほとんど出てこなかったの。だから、この世界の端っこポツンとある島でひっそりと暮らしているのよ」
アリシアは魔族について噛み砕いて説明をして下さいました。
私はかなり大きな勘違いをしていたみたいです。
「では、私たちに伝わっている勇者の話というのは?」
「まぁ、創作も多いと思うわ。あとは、強力な魔を魔族だと思ったとか。まっ、今からあたしが世界を獲りに行くから、畏怖される魔王って存在も上手く利用できるかもしれないわね」
アリシア様は大して人間たちが自分たちに良い印象を持ってないということを気にされてませんでした。
「ボクらは嫌われ者かー。エルザはボクらのこと嫌な奴だと思うのかい?」
メリルはしょんぼりしながら私に尋ねました。
「とんでもありません。皆様、アリシア様の良い友人みたいですので、私も仲良くしたいです」
「そっか、じゃっ、今日からはボクとエルザは友達だねー」
メリルはニッコリと笑いました。そして、私のところに歩いてきて手を差し出しました。
私はメリルと握手をして友人になったのです。
「そんなら、オレも混ぜてくれや」
「ふっ、私も頼もう。同志エルザ、よろしく頼む」
「ああん、わたくしもお友達がほしいですわ」
グレンとレイシア、そしてミリアも私に握手を求めてきました。
「皆様、よろしくお願いします!」
私は握手をして、改めて挨拶をしました。
「あら、ネルソンは良いのかしら」
アリシア様がネルソンに聲をかけます。
ネルソンは目を瞑って微だにしませんでした。
私は立ち上がり、ネルソンの元に近づきました。
「ネルソンさん、よろしくお願いします」
私は勇気を出してネルソンに手を差し出しました。
「――ふん、拙者は馴れ合いはスカン。だが、禮儀は大事だな」
ネルソンはゆっくりと私の手を握りました。
「あー、ネルソン。顔が赤くなってるぞー」
メリルはネルソンを冷やかしました。
「……ふんっ」
ネルソンは鼻を鳴らして、また目を瞑りました。
私にとても素敵な友人が五人も増えたのでした。
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