《【書籍化】萬能スキルの劣等聖 〜用すぎるので貧乏にはなりませんでした》不平等な世界

「じゃっ、今日はこれで解散よ。各自で伝達は行って頂戴」

アリシア様が皆さんに聲をかけて、解散となりました。

當然、私はアリシア様の元に殘っています。

「エルザ、あなたの部屋に案するから付いてきなさい」

アリシア様に促されて司令室を出ました。

廊下をし歩き、薄暗い階段を上ります。ところどころに変わった木彫りの彫刻品が並べられており、私はチラッとそれを見ました。

あれはクマかしら、それとも……。

「ああ、ソレはあたしが作ったのよ。下手くそでしょ? ふふっ、うまくいかないのよねぇ」

アリシア様は私の思っていることを見通して仰いました。

「へっ、あっアリシア様が作られたのですか? えっと、その、個的で素敵だと思います」

「バカね、気を使わないでいいのよ」

そう言って、アリシア様は再び歩き出しました。

3階に著きました。ここは主に城に住んでいる者の部屋があるフロアだそうです。

私の部屋は1番東側の角の部屋とのことで、アリシア様と共に角部屋まで行きました。

「ごめん、し散らかってるけど、気にしないで。ほらっ、ベッドにでも腰掛けてていいから」

部屋はかなり広く、窓も4つあり、大きなベッドと本棚、それにテーブルにソファ、機と椅子が置かれていました。

屋敷に住んでいた頃の自分の部屋と同じくらいですね。本音を言うと、もっと小ぢんまりした部屋かと思いました。

ただ気になる點は……。

「あのう、そちらに畳まれているお召しはかなり小さいと思うのですが、どちら様のでしょうか?」

私はベッドの上に置かれたピンクのパジャマに目をつけました。

「えっ、あたしのだけど」

「なぜ、アリシア様のパジャマが私の部屋に?」

「そりゃあ、あなたの部屋とあたしの部屋が同じだからよ」

「えっ!」

私は卒倒しそうになりました。

「だって、空部屋が無いんだもの。この部屋はあたし一人にはちょっとばかり大きかったし……。まぁ、あなたが嫌なら考えるわよ?」

アリシア様は腕を組ながら私にそんなことを仰っています。

嫌なはずがないですが、その……。

「わかりました。それではご一緒させて頂きます。ソファーで眠ったことはありませんが……」

「はぁ? ベッドがあるんだから、ベッドで寢なさいよ」

「ええっ、ではアリシア様はどこで寢るのですか?」

「ベッドに決まってるじゃない」

「同じベッドで二人で寢るんですかー?」

私は目を白黒させていた。だって、その、アリシア様と同じベッドでなんて……。

「大丈夫よ、結構大きいのよ。二人ぐらい平気、平気」

アリシア様はベッドを叩きながらニコニコしていた。

気にしているのはそこではありません……。でも、アリシア様と一緒なのは……、本當は……。

私は生唾を、飲み込みました。

「そっかー、人間って二人で寢たりとか抵抗あるのね。だったら、仕方ないわね……、他を……」

「まっ待ってください! 私、アリシア様と一緒に寢たいです!」

いやいや、違います。私はなんてことを大聲で言っているのでしょうか?

絶対に怒られます。主君に向かってなんてはしたないことを……。

「うふふ、そう言ってくれて嬉しいわ。ありがとうね、エルザ」

アリシア様は白い歯を見せてニコリと笑いました。やはり、この方は天使なのでは……。

かくして、私は畏れ多いことに魔王アリシア様とルームメイトになりました。

「ほら、紅茶を淹れたわよ。あなたも飲むでしょ」

「そっそんな。お茶くらいでしたら私が淹れましたのに」

アリシア様は主君なのにも関わらず、私によく世話を焼いてくれます。

ですから、私はどうしても気になっていることを聞いてしまいました。

「あっアリシア様、どうか一つだけ質問をお許し下さい」

「ん? 別にそんなに畏まらなくていいんじゃない? 言ってみなさいよ」

「そのう、アリシア様はどうして世界を獲ろうなどとお考えになられたのでしょうか? 先程からのアリシア様を見ていると、支配者になりたいとか、そういったじに見えなかったので……」

私はとても失禮なことを言ってしまった気がしました。

「ああ、そういえば全然話して無かったわね。この國って、海の上にポツンとある小さな島なの。でね、あと數年で海の中に沈んじゃうんだ」

アリシア様はとんでもないことを仰ってました。海の中に沈む? どうしてそんなことが?

「この世界の魔力の幹は魔粒子と呼ばれる目に見えない小さな粒。最近、魔粒子が海の中に大量に発生しててね。あたしとレイシアの研究だとその影響で海の水の量が年々増大してるのよ。だから、このままだと海に沈むの」

アリシア様は難しい言葉を出しながら説明をして下さいました。

理屈は正直理解出來ませんが、その口ぶりは噓を付いているようにじられません。

「あたしは、それを知って移住先を探しに人間たちの住んでいるんな國を見て回ったわ。でもね、あたしたち魔族をれてくれそうな所は見つからなかった。それどころか、あたしは人間たちの嫌な部分ばかり見つけちゃったのよ」

アリシア様は寂しげな表でした。確かにない人數とはいえ、魔族や魔王を助けるという発想が出來る國など皆無かもしれません。

「どの國も多くの民が多額の稅金や年貢に苦しみ、特権階級がそれを貪っていたわ。特に王族や貴族は最低ね。生まれた家で運命が決まる。そんなのってあんまりじゃない? だから、あたしは決めたの。世界の王となり全てを変えてみせるってね。魔族だけ助かっても、気分が悪いってなってしまったのよ」

「そ、そんな大仰な目標で世界征服を開始したんですか?」

「まぁね。もちろん、世界を敵に回したせいで世界中の冒険者ギルドからも反撃をけて侵攻はなかなか上手くいってない。あたしが出れば戦況は変わると思うけど、くなら萬全を期してからにしたいの」

アリシア様はこの世界の幹から変えてしまうつもりなのですね。

この方は自分の仲間だけじゃなく、苦しんでいる人間たちの救世主になることが目的。

私は大きく銘をけると同時に怖くなりました。

私こそ、アリシア様の嫌悪する貴族そのものなのですから。

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