翌朝。

ラネは両親に挨拶をすると、昨日のうちにまとめておいた荷を持って、村の広場に向かった。

生まれ育った村と両親から離れるのは寂しいが、このままでは両親にも迷をかけてしまうかもしれない。それに、この村でいつまでもエイダ―のことを引き摺るよりは、新しい生き方を見つけた方が自分のためだ。

両親にも、落ち著いたら必ず手紙を出すと約束した。

「に気を付けるのよ」

「ええ、父さん、母さんも」

大きな荷を不審に思われるかもしれない。そう警戒したけれど、集まった者達は皆、同じような荷を抱えていた。

(これで、余計なことを聞かれずにすむわ)

それを見てほっとする。

馴染として一緒に育ってきたが、村を離れることを誰にも話す気はなかった。

もちろん、別れの挨拶もしないつもりだ。

薄かもしれないが、向こうも話すのは嫌だろう。

そう思いながら、ちらりと馴染たちを見つめる。

もともと村の達の中では、ラネは浮いた存在だったのだ。

エイダ―が逞しく長し、出世していくに従って、ラネにきつく當たる者が出てきた。

婚約した當時は、好きだとさんざん笑っていたくせに、エイダ―の優しさに付け込んで無理やり婚約したのだと噂を流したのだ。

とくに、洗濯場で嫌味を言ってきたメグと、彼と仲の良いミーエはひどかった。

彼たちはラネが振られたのが嬉しくてしょうがないようで、何度もこちらを見てくすくすと笑っている。

馴染のはもうひとりいる。ふたつ年下のクレアだ。

彼はおとなしくてラネに嫌味を言ったりしないが、やはりエイダ―のことは好きだったらしい。むしろラネよりも彼の結婚に衝撃をけているようで、暗い顔をして俯いている。

男は、エイダ―の他にも三人いる。

村長の孫のトリザに、鍛冶屋の息子のロン。そして、猟師の息子のソルダ。三人とも屈強なつきをしていて、の小さいエイダ―をよくいじめていた。今は彼のほうが出世して、複雑な気持ちなのだろう。

彼らの表はどれも、あまり晴れやかではなかった。

エイダ―の両親は、まるで貴族のように上等な服裝をしていた。ふたりの傍には、荷を持った従者もいた。急にこんな待遇をされてしまえば、自分達が特別な存在だと思うのも仕方がない。

そんなことを思いながら、ぼんやりと村の景を眺めていた。

もう戻ることはないかもしれない。

しだけ傷的になっていると、広場に突然、複數の人間が出現した。

驚いて聲を上げそうになりながら見ると、彼らはしい裝飾が施された揃いの制服を著ている。

王立魔導師団だった。