《【書籍化作品】離婚屆を出す朝に…》27、忍び寄る終わりの足音
「終わったよ!」
「え? もう?」
実家から帰って三日が過ぎていた。
今朝は那人さんは遅い出社にしたらしく、私と由人が塾のプリント対決をしている橫で朝ごはんを食べていた。
最近プリント対決は日課になっていた。
いまだ私が由人に勝った事はない。
子供の計算能力は鍛えればコンピューターを超えるというのが、塾の先生の持論だ。
でも大人でも理系脳と文系脳の人がいるように、子供の中でも得意な子と得意でない子がいた。
割合として、計算能力は男の子の方が得意な子が多いようだった。
中でも由人は、ずば抜けているらしい。
「俺も數學は得意だったからな」
どうやらこれは那人さんの伝らしかった。
「はい! 全問正解!」
由人は得意げに自分で丸をつけて鼻を膨らましている。
「凄いね、ゆひくん。お母さんこの問題が分からないんだけど……」
「もう、しょうがないなあ。じゃあ、教えてあげるよ」
結局いつも私が由人に教えてもらって終わる。
「よし、じゃあ今度は父さんと勝負だ、由人」
朝食を食べ終えた那人さんが腕まくりをして鉛筆を手に持った。
「いいよ! じゃあ、これね」
由人は鼻息荒く、別のプリントを2枚出してきた。
「じゃあ、ようい始め!」
私が橫でジャッジをする。
慣れたようにサラサラ解いていく由人の隣りで、那人さんも鉛筆を走らせる。
かなり大人げなくムキになっている。
「終わったーっっ!!」
言ったのは、ほぼ同時だった。
さすが那人さんだ。
尋常でないスピードの由人に負けてなかった。
「じゃあ、丸つけするわね」
私が赤ペンで丸付けをするのを二人が凝視している。
そして……。
張したのか、珍しく由人が一問間違えて那人さんの勝利だった。
「うーっっ! ちょっとうっかりしただけなのに……」
余程悔しかったのか、由人は目に涙を浮かべている。
そんな由人もまた可いかった。
ふふっと微笑む私は、次の那人さんの言葉で凍りついた。
「父さんの勝ちね。お母さんのリベンジだ」
「!!」
リベンジ……。
その言葉がに突き刺さった。
これは翁《おきな》達が、早くリベンジを終わらせろと那人さんに言わせているのかと勘ぐった。
そう……。
私は終わってしまうのを恐れていた。
だから那人さんに何も聞けないまま三日が過ぎた。
那人さんにすべてを聞けば、私のリベンジは終了してしまうような気がする。
そうしたら……。
私は霊界裁判に戻って、リベンジシステムの治験が終わる。
それはつまり……。
この二人との永遠の別れを意味する。
あと一日……あと一日だけ……。
そう願ってずるずると日を延ばしている。
「お母さん、早く。もうバスが出る時間だよ」
ベレー帽をかぶって、稚園の準備をする由人を見て我に返った。
「あ、ホントだわ。急がなきゃ。
じゃあ那人さん、ちょっと下まで由人を送ってくるわね」
「お母さん、弁當忘れてるよ」
「ああ。そうだったわ。これをリュックにれて」
「お箸がないよ。この間も忘れたでしょ」
「ごめん、ごめん」
那人さんはいつも通りのダメ母としっかり者の息子を、笑いながら玄関まで見送った。
……………………
由人を見送って戻ってくると、那人さんはもうスーツに著替えて、考え込むようにして食卓の椅子に座っていた。
「まだ出かけるまで時間はあるの?
コーヒーでもいれようか?」
「いや、いいよ。
それより話があるから座ってくれ」
那人さんはさっきまでと一転して、深刻な表を浮かべている。
私は一気にの気が引いていくのが分かった。
いよいよ終わりの時が來たのだと思った。
もともと1ヵ月だけ離婚屆けを出すのを待ってしいと言って待ってもらっていた。
この事実は変わらない。
これは那人さんにとっては、つけたしの追加課題でしかない。
早く終わらせて次に向かって進まねばならない人だ。
ここで終わる私と違って……。
あまりにこの日々がおしくて、幸せで、つい那人さんの優しさに甘えていた。
本當なら私から言い出さねばならない事だった。
でも……。
どうしても言えなかったの……。
ごめんなさい……。
「いつかは……きちんと話さなければならない事だった。
このままずっと……、なかった事にして暮らせれば……。
この數日、ずっとそう思いながら過ごしてきた」
那人さんの言葉に私は驚いて顔を上げた。
那人さんも同じように思っていたの?
この日々が続いてくれればと……。
「でも……。もう時間がないんだ……」
「え?」
時間がない?
那人さんも時間がないの?
いったい何の時間が……?
「だから、もう一度これを渡しておく」
那人さんは足元に置いていたビジネスバッグから紙切れを取り出した。
ああ……。
何度見ても心がえぐられる紙切れ……。
「前に書いていた分は、事故の時破れてしまったからもう一度渡しておく。
紫奈のサインだけ書けば出せるようになっている」
「ああ、それから……」
那人さんは続けて通帳を取り出した。
「紫奈の名義の通帳に1000萬れておいた。
先に渡しておくよ」
那人さんは通帳と紙切れを私に差し出した。
そう……。
離婚屆けを……。
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