《【書籍化】天才錬金師は気ままに旅する~世界最高の元宮廷錬金師はポーション技の衰退した未來に目覚め、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖さま扱いされていた件》18.工房へ、修行へ
師匠の工房にて、師匠のお世話係のメイドロボとの戦いに勝利した。
「まったく、暴れん坊すぎるでしょこのメイド……」
「……セイ様。この魔導人形《ゴーレム》どうします? このまま放置ですか?」
エルフ奴隷のゼニスちゃんが私に問うてくる。
「いや、とりあえず……治すかな。このポンコツ、ちょっと不合でてるっぽいし」
私はしゃがみこんで、メイドロボ……シェルジュのスカートをめくる。
「あ、主殿!?」「わわっ! だ、だふね何も見てないのです!」「……セイ様は、そっちの気があるのですか?」
奴隷ちゃん達が顔を赤らめてる。
「ああ違う違う。急停止ボタンがここにあるのよ」
下腹部に、転移ポータルと同じ模様があった。
私はそこに手をれて魔力を流す。
すると暴走モードだったシェルジュから、かくん……と力が抜ける。
きが止まったのを確認してから、接著剤をポーションで溶かす。
「トーカちゃん、このポンコツ運んであげて」
「しょ……承知した!」
ちょっと顔を赤くしながら、トーカちゃんがシェルジュをおんぶする。
みんなも顔赤い。なんだろ?
「どーしたの? 風邪? お薬のんどく?」
「……ち、違います。その……ちょっと子供には刺激が強くて……」
「? まあいいわ。工房へいきましょ」
私たちは庭園を抜けて、小さなレンガの小屋へとやってきた。
ゼニスちゃんは首をかしげる。
「……偉大な錬金師の工房の割に、かなりその、こぢんまりしてますね」
「見た目はね」
私が扉に手をかける。私の魔力に反応して、足下に魔法陣が出現。
ふぉん……! という音を立てて私たちは工房の中へと転移。
「おおー! す、すごい!」「わぁ! お城の中みたいなのですー!」
さっきの小さな小屋からは創造できないくらい、中は広かった。
立派な赤い絨毯が引いてあって、天井にはシャンデリア。2階吹き抜けのホールが私たちの前に広がっている。
ダフネちゃんが城の中って評したのは言い得て妙ね。
「トーカちゃんはついてきて。そのポンコツを工房に運ぶから。ダフネちゃん達は適當に、部屋使っていいから休んでて」
「だふねもついてくですー!」「……私も、興味あります」
好きねえ。
「ま、いいけど。ついてらっしゃい」
私たちは2階へと上っていく。
正面に趣味の悪い、大きな絵畫が飾ってある。
「……このしいは、誰ですか?」
七の髪のを持ち、七のドレスをに纏った、ゴージャスなの姿が描かれてる。
「師匠よ」
「……に、ニコラス・フラメルさまは、なのですか?」
「今はわからないわ」
「????????」
「あの人、別も見た目も、コロコロ変わってるからね」
「????????」
「ま、深く考えちゃだめよ」
私が絵畫の前に立つと、一瞬で扉に変わる。隠し扉なのだ。
別に敵なんてってこないってのに……やたらとこの手のトラップを仕掛けたがるのよねぇあの人。
中には、それは見事な錬金師の工房が展開してる。
出などの作業道、珍しい素材の數々。
「トーカちゃん、そのメイドをテーブルの上にのっけて」
シェルジュを仰向けに寢かせる。
私は彼のスカートをめくって、そこに再び手を置く。
すると眼が開いて、空中に明な板を出現させた。
「……セイ様、これは?」
「式……あー……。このポンコツをかしてる、脳みその中ね」
魔法文字が、木のっこのように、複雑な模様とか數式を描いてる。
魔導人形《ゴーレム》をかすためには、この式が正常にくように整えておく必要がある。
ほころんでる箇所に、私は指をつきたてる。
指先に魔力を込めて、いくつかほころんでる式を直した。
「これでよし。あとは燃料ね」
私はまたメイドの下腹部にふれて、魔力を流す。
すると……。
「…………」
シェルジュがゆっくりとを起こす。
「久しぶりね、シェルジュ。500年ぶり?」
「おはようございます、セイ・ファート様。正確には、500年と265日14時間53分26秒ぶりです。以上」
「ああ、そう……」
シェルジュがテーブルから降りる。
「改めて紹介するわね。この子はシェルジュ。師匠のお世話係のメイド魔導人形《ゴーレム》よ」
スカートを摘まんで、ぺこっと會釈する。
メイドちゃん達も挨拶を返す。
「トーカでござる!」
「だふねは、だふねなのです!」
「……ゼニスです。しかし、すごい。本當に人間みたいですね」
ゼニスちゃんがしげしげと、シェルジュを見つめる。
「まー見た目はね。でも食事も睡眠も必要ないし、そこは魔導人形《ゴーレム》ね。まあ融通利かない部分があるけど」
命令通りくってことは、命令がないとそれ以外なにもできないからね。
「シェルジュ。師匠はあんたになんて命令したの?」
「ここを守れ。以上」
アバウト~……。そんなアバウトな命令をずっと律儀に守ってるなんて。
「師匠ってどんくらいここに來てないの? 年計算で」
「502年です」
「あ、そ……」
放置プレイが過ぎるでしょ……まったく。誰もメンテしないんじゃ、壊れてもしょうがないわね。
ま、直ったしいいか。
「さて……と。これからのお話ししましょうか。みんなちゅーもーく」
シェルジュがぼーっと私の隣に立ってる。
奴隷ちゃん達がこっちを見てくる。
「とりあえず私は、今から何日か引きこもって、上級のポーション創るわ。その間、みんなはどうする? 好きにしていいわよ」
まず、トーカちゃんが手を上げる。
「拙者はもっと強くなりたいでござる! シェルジュ殿にも、ガーディアン殿にも負けてしまった……だから! もっともっと強くなって、皆を守れるくらいに強くなりたいのでござる!」
なるほど、トーカちゃんは戦う力を鍛えたいと。
「……セイ様。ここに魔導書はありますか?」
「あるある。腐るほど」
「……でしたら、魔法の訓練を。私も何かあったときに、セイ様やみんなを守れるくらいに、力がしいです」
ゼニスちゃんは魔法を鍛えたいと。
「だふねは……だふねは、ちーちゃんのお世話するです! あとあと、みんなのごはん作るです!」
ダフネちゃんは家事と。
「うん。オッケー。じゃ、三人とも、これつけて」
工房にあった魔道《マジックアイテム》を、私は奴隷ちゃん達に配る。
イヤリングみたいな、魔道だ。それぞれデザインが異なる。
「……セイ様、これは?」
「五共有イヤリング。これをつけてると、あなたたちの五と私の五をリンクさせられるの」
「……? それは、すごい。でも、これをどうして?」
「え? 修行の監督するからよ?」
はて、とトーカちゃん達が首をかしげる。
「主殿はこれから、ポーションを作るのでは?」
「うん。だから、ポーションを作りながら、トーカちゃんの戦闘修行、ゼニスちゃんの魔法修行、ダフネちゃんにはこの屋敷の案を……同時にするんだけど」
困する奴隷ちゃん達。
「あれ? シェルジュ、私何かおかしなこと言った?」
「はい。4つのことを同時に行おうとしてるので、戸ってる様子です。以上」
「あ、大丈夫大丈夫。私事を並列して考えるの得意だから」
え、コミック読みながらご飯食べながら、タブレットとかっていじったりしない?
4つくらいの作業なら、同時にこなせない?
「すごいでござる、さすが主殿!」
「おねえちゃんすっごーいのです!」
「……セイ様の頭脳は、我々常人とはかけ離れているのですね。さすがです」
あ、あれぇ? そんなすごいことだったのこれ?
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