エルフ國アネモスギーヴに到著した私たち。

最初に立ち寄った村は公害による被害をけていた。

原因は魔道師ギルド【蠱毒の食家】たちが垂れ流す瘴気。

村の浄化は終わったけれど、この瘴気を発生させないようにしない限り、本的な解決には繋がらない。

ララちゃん達のいるエルフの村でとりあえずある程度報を集めた。

そして私は村に一番近い、蠱毒の食家の工房へと足を踏みれた。

「なにぃ？　【アブクゼニー】さまに會いたいだとぉ？」

工房の付にいた、どーみてもやる気の無さそうな人間の男に、私は聲をかけた。

アブクゼニーとはこの工房の代表責任者……工房長の名前である。ララちゃんから聞いたのだ。

「はい。私たち旅の商人でして、是非とも蠱毒の食家さまの魔道を買い取りたくおもい、こうしてはせ參じた次第でございます」

ま、噓だけど。

ララちゃん達の村の位置、村人達の癥狀から判斷して、公害を引き起こす原因となっているのは、この工房にあることは間違いない。だが確証があるわけじゃない。

そこでまずは工房に潛して証拠を集めようということになった。

「ふん。の分際で商人なんぞやってるのか。セイ・ファート……？　そんな商人聞いたことないぞ。怪しい奴め」

「まあまあそう言わずに。シェルジュ。このお方に【山吹のお菓子】を」

「ああ？　山吹のお菓子だぁ？」

シェルジュはストレージから革袋を取り出して、付の男に手渡す。

彼はいぶかしげに中を改めて……驚愕の表を浮かべる。

「あ、あんたこれは……」

「お菓子、ですわ。どうぞお好きに、召し上がってくださいまし。まだまだありますので」

男は何度も袋の中の【それ】と私とを見比べて、へこへこと頭を下げ出す。

「へっ、へへっ。すぐにアブクゼニー様呼んできますので、ちょっとおまちくだせえ！　お嬢様」

すたこらさっさと男が建の奧へと消えていく。やれやれ。

「……セイ様。あの男に何を渡したのですか？」

「んー。シェルジュ。ゼニスちゃんに同じやつ渡してあげて」

メイドロボはエルフ奴隷のゼニスちゃんに、同じのった革袋を手渡す。

「……なっ！？　こ、これは……！」

「なになに、なんなのです……えええ！？」

「ふむ……どうしたお二人……ぬおおおお！　これはー！」

驚いてる奴隷ちゃん達が私を見て言う。

「「「金じゃないですか！」」」

革袋にずっしりとっていたのは金塊だ。

手のひら大のそれらがゴロンゴロンと大量にってる。

「おおおお、おねえちゃん！　どうしたのですこんな大金！」

「ここに來る前にちょろーっとね」

「ま、まさか盜みでござるか！？」

「ちゃうちゃう、作ったのよ、錬金で」

ぽかんとするダフネちゃんとトーカちゃん。

ゼニスちゃんは「なるほど……」と神妙な顔つきで、私の作った金塊を見てつぶやく。

「……錬金は元々は、金を作り出すというのが始まりでしたね」

「そ。ま、結局難しくって大半の人たちは諦めちゃって、副産のポーションとか魔道とか作るようになったんだけど、出発點は錬金、つまり価値のない鉱から価値のある鉱を作り出すことだったのよ」

「……すごい。本當に金を作り出すなんて。本の錬金だ。おとぎ話とばかり思ってました……」

「ん～？　意外と簡単よ。師匠もバシバシ作ってたし」

まあとはいえ、あんまり無から金を作り出しすぎるのはよくない。どこで手にいれたんだって必ず疑われるし。

やり過ぎると金の価値が下落するとかで、よくないんだけどね。

「ふむん？　これは食べられるのでござるか？　山吹のお菓子と主殿は申しておったが」

「賄賂の比喩表現よ。いちおう本の金だから、食べちゃだめよ？」

ほどなくして、デブのおっさんが私たちを応接間へと通してきた。

「いやぁ大商人様！　こんな辺鄙なところまでわざわざきてくださり誠にありがとうございますぅうう！」

おっさんはにっこにこで私に想を振る舞ってくる。

こいつがアブクゼニーね。

どうやらさっきの付の男が、金持ってるが來たと報告でもしたのね。

金はないけどな。

「いえいえ。私はセイ・ファートともうします。蠱毒の食家の魔道がしくて、ゲータ・ニィガ王國からやってまいりました」

「それはそれは！　遠いところからご苦労様です！」

「さっそくだけど魔道を作ってるところを見せてもらえないかしら？　商品を仕れる前に、製造工程を確認しておきたいのよね」

「どーぞどーぞ！　ささ、ご案いたいしますぞぉ！」

アブクゼニーってば、もうなんというか、悪黨のお手本みたいな下品な笑みを浮かべていたわね。

私のことを、人な奴隷を3人も引き連れて、メイドまで同行させている、さぞ金持ちのボンボンだと思ったことだろう。

殘念、こちとらただの元孤児の錬金師ですよっと。ま、向こうが勝手に勘違いしてるだけだからね。

アブクゼニーに連れられて工房のなかを見學することになったんだけど……。

「……これは？」

「従業員達ですぞ！　彼らにはこうして毎日泊まり込みで作業をさせ……んん！　自主的に作業をしているのです！」

……噓だ。顔を見ればわかる。作業員さんたちの目が、みんな死んでる。

あの目を私は知っている。上司から仕事を押しつけられて、無理矢理働かされてる人たちの目だ。

生気のない顔つきに、星のない夜空のような黒々とした瞳。

知らず、私は憤っていた。私もまた、彼らと同様に、上司からげられ無理矢理働かされていた……社畜だったからだ。

ぶちん、と私の中で何かがキレた音がした。

「トーカちゃん」

「……なんでござろうか？」

ああ、トーカちゃんも怒ってる。そりゃそうだ。こんな風に人が、まるで家畜のように働かされてるところを見たらね。

自分たちも奴隷として、酷い重労働を強いられてきた過去があるがゆえに、許せないのだろう。

「私が許す。このバカをぶん毆りなさい。思い切り！　シェルジュ！　強化ポーション！」

シェルジュから強化ポーションをけ取り、トーカちゃんがそれを飲み干す。

ぐぐっ、と拳を握りしめると……。

ばこぉおおん！　とアブクゼニーの頬をぶん毆った！

「ほぎゃぁあああああああ！」

建の壁をぶち抜き、すっとんでいくアブクゼニー。

「シェルジュ！　謝料と権利の買い取りだ、ありったけの金塊をまとめてプレゼントふぉーゆーしてやりなさい！」

ストレージにっていた金塊を持ち上げて、アブクゼニーが飛んでいった方向へとぶんなげた。

「あなたたち！　よく聞きなさい！」

目が死んでる作業員さんたちに向けて、私が言う。

「今このときをもって、この工房は私がのっとり……指揮する！」

私の宣言にみんな困している様子。

だが寢不足で頭が回らないのか、生気のない顔でこちらを見ているばかりだ。

「とりあえず今日はポーション飲んで……寢なさい！　話はそれからよ！」