《【書籍化】天才錬金師は気ままに旅する~世界最高の元宮廷錬金師はポーション技の衰退した未來に目覚め、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖さま扱いされていた件》38.森の王、驚愕する
【★☆★読者の皆様へのお知らせ★☆★】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
セイが獄計畫を著々と進めている一方……。
エルフ國の王城、その玉座に座る一人の男がいた。
筋骨隆々、上半。
左右にはエルフを侍らせ、頭には王冠をかぶっている。
彼の名を【サザンドーラ】といった。
「森の王! ご報告があります!」
「あーん……?」
エルフの兵士がひとり、サザンドーラの前に現れる。
だが彼は不機嫌そうに顔をゆがめると、指をくいっと曲げる。
「がっ……!」
突如として兵士が苦しみだした。
何をされてるのかわからない。ただ、誰かに後ろから首を絞められている。そんな……じがした。
「おれさまが子貓ちゃんたちと楽しくやってるのによぉ、なーに邪魔してくれちゃってんだぁ? ごら? ああ?」
「も……じわげ……ござい……ません……森の、王……がはっ!」
首締めが解かれて、兵士がその場で咳き込む。
後ろを振り返るが誰もおらず、兵士は誰に何をされたのか結局わからずじまいだった。
ふん……とサザンドーラは鼻を鳴らすと、地べたを這いつくばる兵士を見下ろしながら言う。
「で? なんだ」
「げほ……捉えたが獄したと、アブクゼニー様よりご報告がありました」
「なに? おいアブクゼニーを連れてこい!」
セイによって牢屋に捕らわれていたアブクゼニーが、部屋の中へとってくる。
「おい何があったのだ!」
「も、申し訳ないです……我がギルドを乗っ取ろうとしていた不埒をとらえて、王の前に連れてこようとしたのですが、逃げられてしまいました」
「ちっ……! どこの誰だ、俺様の功への道《ロード》を邪魔するバカは」
「不可思議なを使うでした。部下達の心をわし、掌握したのも、きっとそのを使ったからです」
斷じて否である。
彼らは別に魔法によってられてなどいない。
セイの人柄、そして技者としてのその卓越した錬金の腕前に、ほれこんだだけである。
権力を振りかざし、自分の言いなりにしていたアブクゼニーとは大違いだった。
さて、サザンドーラがなぜアブクゼニーに命令し、捉えたのか?
彼は國を乗っ取り、この富な資源を使って魔道師ギルドを作り、大したのだ。邪魔をされては困る。
ゆえに、ギルドの工房を乗っ取ったというそのをひっとらえ、処分しようとしたのである。
「兵士を出せ。外に逃げたを捕まえろ」
「それがその……」
「なんだ?」
「あのは、獄したのですが城の外に逃げていないのです」
「は……? そりゃどういうことだ」
「何を思ってか城の中をあちこちこそこそと嗅ぎ回っておられるのです」
「ちっ……訳がわからん。ただ城の中に居るなら好都合、を捕らえここに連れてこい」
と、そのときである。
「で、伝令! 伝令!!!」
伝令のエルフ兵士がかけあしで、部屋の中にってきたのだ。
「し、城の中で囚人達があばれまわっております!」
「! 囚人が暴れ回ってるというのはどういうことだ!」
「わかりません。ただ、あのの手引きであることは間違いないかと」
兵士は次に、囚人たちとが別行していることを報告する。
「なぜとらえん! やつはだろ! 兵士どもは何をしている!」
「そ、それがその……とにかく妙なのです。誰も彼に近づくことができず……」
兵士の報告は要領を得ない。
アブクゼニーは、何かまた妙なを使っているのだろうと思った。
「は一直線にこちらに向かっております。おそらくは王に會いに來たのかと……」
「ふん……向かってくるなら好都合。ここで俺様が迎え撃つとしよう」
だがアブクゼニーは不安だった。
神威鉄《オリハルコン》の鉄格子をぐにゃりと変形させた技といい、兵士を近づけないという妙な技といい、セイの使う魔法に未知なる恐怖を抱いていた。
サザンドーラがあのに勝てるのだろうか、という不安をいだいていた。
「がっ……!」
「顔に出てるぞアブクゼニー」
まただ。さっきの兵士に使ったのと同じ技を、アブクゼニーに使っている。
彼は苦しそうにもだえ苦しむ。
「俺様を誰と心得る? かの【いにしえの大賢者】に師事し、免許皆伝をもらった男だぞ」
「ず、ずびば……せん……うたがって……ごめん……なさい……がはっ!」
が解かれて、アブクゼニーが自由に呼吸できるようになる。
何をされたのかさっぱりわからないが、しかしすごい力だとアブクゼニーは思った。
これなら勝てる……それに……。
「いにしえの大賢者さまというのは、各地を放浪し、その強大な力を振るうという、あのお方ですか?」
「その通り。くく……下手人は知らぬだろう。俺様がいにしえの大賢者の弟子であることをなぁ。それを知ったときの顔を想像するのが、楽しみでならないなぁ……くはっはっは!」
と、そのときである。
どがんっ、と玉座の間の扉がふっとんだのだ。
「ごきげんよう、森の王さま」
「來やがったな、ぁ……!」
アブクゼニーがにやりと好戦的に笑う。 飛んで火にる夏の蟲とはこのことか。
今まさに、あのこと……セイは、強力無比なる力を持った森の王の前に、のこのこと現れたのである。
「あらら、アブクゼニーじゃない。あんた獄してきたの?」
「獄したのは貴様だろうが!」
「はいはい。それで? そちらのかたが森の王?」
「おうとも! 王はなぁ、すごいんだぞ! なにせあのいにしえの大賢者様の一番弟子なのだからな!」
「ほーん……? 誰……?」
いにしえの大賢者と言われても、セイは知らない様子だった。
ふんっ、と鼻を鳴らしていう。
「無知なる貴様に教えてやろう! いにしえの大賢者様、またの名を【ニコラス・フラメル】さまといって、魔法、剣、そして錬金。ありとあらゆる技をおさめた、最強のの使い手よ!」
「え? ニコラス・フラメルですって。いにしえの大賢者とかいうやつが?」
「そうだ! ですよねサザンドーラ様! ……サザンドーラ様?」
アブクゼニーは振り返って、驚愕に目を見開く。
さっきまで自信満々だったサザンドーラが……。
玉座の上で、がたがたがた! と振るえているからだ。
まるで、【とても恐ろしいもの】に出くわしたかのような、そんな恐怖に染まった瞳で、目の前のを見つめている。
一方でセイはじっと目をこらすと……。
「あら、あんた……はなたれ小僧のサザンドーラじゃないの」
「ひぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! せ、セイ先輩ぃいいいいいいいいいいいいいい!」
サザンドーラは、セイに向かって【先輩】といった。
そう……なぜなら。
サザンドーラもまた、セイと同様に、ニコラスフラメルの弟子であり……。
セイの方が彼よりも上の弟子、つまり……姉弟子なのだ。
彼は知っている。
このこそが、ニコラス・フラメルの一番弟子であることを。
彼は知っている。
このの、恐ろしさを。
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