《【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無雙する》2章:異世界帰りだと學校でも無雙(1)
■ 2章 ■
由依との『契約』を終えて帰宅すると、マンションの窓には燈りが點いていた。
築二十年の小さな二階建てマンションの角部屋。
そこが、オレと妹の雙葉が暮らす家だ。
両親がキツイとらしていたローンの返済はいつの間にか終わっていたし、管理費を催促されることもなかった。
そして、そのことを不思議に思ったこともない。
これもまた、因果ごと喰われた人間の周囲を、世界が無理矢理補正した結果だったのだろう。
「ただいま」
ただいまと聲をかけて、おかえりと返してもらえることがいかに幸せか、オレはよく知っている。
「ちょっとお兄ちゃん、どこ行ってたの? もうご飯できてるよ。帰宅部なんだから、ご飯くらい作ってよね」
妹の雙葉が、キッチンからひょいと顔を出した。
口うるさく、オレにはよく毒を吐くが、大切な家族である。
そういえば「おかえり」なんて言葉、妹と二人暮しになってから、聞いた覚えなかったわ……。
背は低いが、それ以上に顔も小さく可らしい。長いツインテールを揺らしながら、不機嫌そうな顔を向けてくる。
これで外では明るく禮儀正しいので、かなりモテるらしい。
オレとは全く似てないのは、義理の妹だからだ。
雙葉はそのことを知らないはずだが。
「わかった。明日はオレが作るよ」
薙刀部で部長をしている雙葉は帰りも遅い。
部活が終わった後に、近くの道場にも通っているらしい。
全國優勝経験もある有選手だ。
「はいはい。お兄ちゃんの料理を食べてお腹壊すくらいなら――って、え? 作るの!? お兄ちゃんが!? 家事全般ダメダメな穀潰しのお兄ちゃんが!?」
そこまで言わなくてもよくない!?
これでも一人暮しを二十年近く……と考えたところで、オレが一人暮しを始めたきっかけを思い出せないことに気がついた。
就職先が遠かったわけじゃない。
雙葉が出ていったわけでもない。
このマンションで、オレは一人暮しをしていた。
まさか、雙葉もなのか……。
くそっ! 前のオレはそんなことも知らずにのうのうと生きてたってのかよ!
「お、お兄ちゃん? どうしたの、怖い顔して。そんなに嫌なら、あたしが作るよ?」
日頃の口は悪いが、こういう優しさが雙葉の良いところだ。
「ごめん、なんでもないよ。ごはんにしよう」
「お兄ちゃん……?」
由依だけじゃない。雙葉も護りたい。
今のオレにはそれをするだけの力があるんだ。
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