《【書籍化&コミカライズ2本】異世界帰りのアラフォーリーマン、17歳の頃に戻って無雙する》3章:神ってにまみれたヤツ多いよな(5)
道場の扉が勢いよく開け放たれた。
そこに立っているのは加古川だ。
スカしたイケメンの顔は、ぐにゃりと不自然に歪んだり戻ったりを繰り返している。
顔が歪むたび、彼から発せられる魔力が微弱な人間のものから、魔族のような巨大なものへと変わる。
このじは……。
「なあ由依。ヴァリアントって、人間を依り代に顕現するのか?」
「そんな話は聞いたことないわ。突然異界から現れて人間を喰う悪しき存在で、それらは神話の存在の殘滓を核にしてるという説が有力らしいのだけど……」
組織とやらが本當にそれだけしか把握していないとは考えにくい。
今の加古川のような狀態を、これまで誰も見たことがないとは思えないからだ。
神の適応者といえども、上から匿されている報は、オレが思っているより多いということか。
加古川が現れたのと同時に、の臭いが漂ってきた。
彼の手を見ると、そこには生徒の生首がぶら下がっている。
あの首は……誰だ? そう……たしか……保健委員の……なんだ? 彼に関する記憶がぼんやりしている。
名前はもともと覚えていなかった気もするが、加古川のとりまきをしていた様子を見ていたはずなのに、そのことすら上手く思い出せない。
生首を見て顔をしかめていた由依も、いぶかしげな顔をしている。
「その娘を喰ったな?」
「なん、な、なん、なんの、ことだだだだだ? ゆいちゃん、おいし、そう。たべ、たいたいたいたいたい」
加古川は気持ちの悪い聲を発しながら、のあちこちをびくんびくんと震わせている。
「由依はモテるなあ」
「やめてよ……」
「神の改造は後回しだな。とりあえず応急処置だけしておく」
ひとまず、由依自のの修復、そして神への魔力供給を行った。
これでいったんは、由依への負擔が減るはずだ。
由依は神を起し、加古川に向かって構えた。
「戦えるか?」
この問いは的、能力的な意味の他に、もと同級生を場合によっては殺せるのかということだ。
「正直嫌いなタイプだけど、助けられるなら助けたい。でも、彼が他の誰かを殺すかもしれないなら、これ以上生かしておくことはできないわ」
そう言った由依の拳は小刻みに震えていた。
オレもかつて通った道だ。
ここは大きな一線である。
越えてしまえばもう戻れない。
迷いも恐れもあるのだろう。
それでも彼は即答した。
命の価値と優先順位については、これまでさんざん考えてきたのだろう。
ならばオレから言うべきことは何もない。
「じゃまままじゃまをするなああ! せ、せふれに、やってもらおおおお、さ、んにににんでたのしももももも」
加古川が保健委員の首を床に落とすと、その首がギロリとこちらを向いた。
やがてその頭に、昨晩のダークヴァルキリーと同じサークレットが出現した。
さらに首の切り口から、にょろにょろと手が生え、やがてそれが束となったを形していく。
同時に顔も側からぼこぼこと形を変え、立ち上がったその姿はダークヴァルキリーそのものとなった。
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