《【書籍化】「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法でした【コミカライズ】》理由を聞いてみる
『先程のあれは何だったのですか?』
向かいに座っているテレサは、唐突に質問をしてきた。
あれから、盜賊たちを連行し近くの街を訪れ、財寶を山分けにして懸賞金をもらった。
財布が潤ったので、祝杯と稱して酒場を訪れた俺たちはメニューを片っ端から注文してそれらを平らげ、酒を呑んでいるところだったのだ。
「あれって、どれだ?」
既にテレサは酔っているのか半眼になり俺を見ている。
彼が空中に書いた文字を消すのだが、かすかに吸い取る魔力が極上の馳走なのでついつい手をばしてしまう癖がついていた。
『盜賊が放った魔法をけ止めた時のことですよ!』
どうやらテレサには酒を自重するブレーキが欠けているらしい。先日も大量の酒を呑んでは翌日頭痛に悩まされていた。
俺はさりげなく酒を勧めるふりをして水を注ぐと、彼の質問に答える。
「俺が魔力を吸収することで能力が上昇する特異質だと言ったよな? あれは実は魔法となって放たれているものでもいいんだ」
両手で水がったコップを持ち、こくこくと頷きながらそれを飲む。
「魔法は魔力を自然界の現象に変えて放つだろ? 火や水や風なんかの魔法なら、放たれた直後はまだ魔力のままだからな。余裕で吸収できる。氷や土なんかは放たれる前に理現象になってるから無理だな」
『ですが、あなたは剣でけ止めてそのまま火をってましたよね?』
さらに追加で文字を書く。
「け止めた狀態でならその屬のままることもできるな。長時間は無理だが、疑似魔法剣みたいなことも可能だ」
指先から火を出して見る。
これは先程の盜賊が放った魔法の魔力を利用しているのだが、結構時間が経っているのでこの程度の火しか再現できない。
『なるほど……そういうことでしたか』
納得した様子を見せるテレサ。ふと彼と目が合うと続いて書き始めた。
『あなたは……私に質問はないのですか?』
唐突な質問に、俺は彼がどのような意図を持っているのか目を見る。
『これまで、多くの人が私に問い掛けてきました『どうして喋らないのか?』と。ですが、これだけ一緒にいてもガリオンは一度も聞いてきません。どうしてでしょうか?』
質問をして良いのはこちらのはずなのだが、結局これもテレサの質問となっていた。
「気にならないわけじゃないけどな、こういう質問は相手の傷を抉っちまう場合がある。俺なりに配慮したつもりなんだぜ?」
『意外です、ガリオンがそのような神経を持ち合わせていたなんて』
「隨分と好き放題言うようになったな?」
これまで、毎回おたついていたテレサだが、酒を呑むとじなくなるのか、口元を隠しクスクスと笑って見せる。
酔っているとはいえ、このような笑顔を向けられたことがなかった俺は、その綺麗な顔をまじまじと観察した。
「それで、その質問には答える気があるのか?」
これまではテレサも俺も一線を引いていたが、この質問をして答えるということはお互いの面に一歩踏み込むことを意味する。
『ええ、構いません』
そう書くと、彼は自分が言葉を発さない理由について長文を書き始めた。
「……なるほど、い日にけた呪いのせいで言葉を出せなくなった、と?」
テレサは真剣な表で頷く。隨分と長く説明をされたのだが要約するとそういうことらしい。
『私は冒険者を続けながら、自分の呪いを解く方法を探しています。ですが、いまだにその方法に手が屆いていないのです』
テレサは自分が冒険者になった理由を俺に教えてくれた。
「そんな方法があるのか? 呪いを掛けたやつをぶっ殺すとかなら手っ取り早いかもしれないが」
彼は首を橫に振ると、
『既に殺しました。だけど、呪いは単獨起の魔法らしく、殺したところで解けなかったのです』
「なるほどね……」
俺が読み終えた順に文字を消していると右手を彼の両手が包み込んだ。
『ガリオン、私とこれからもパーティーを組んでいただけないでしょうか?』
熱に浮かれた様子で瞳を潤ませて俺を見ている。この表に俺は覚えがある。
酒場で知り合ったが一夜の関係を迫ってくるときに良くするもの。どうやらテレサは俺の強さに參ってしまったらしい。
「それは、俺と正式なパートナーになりたいって意味か?」
俺が聞き返すと、彼はきょとんとした顔をする。
『いえ、そっちに関しては冗談ではありません。斷りさせてください』
パッと手を放すと、両手を振って拒絶してくる。
『私の呪いを解くのに多くの資金が必要かもしれませんし、呪いを解く道を得るためには今回みたいな荒事に首を突っ込まなければいけないかもしれません。普通の人間であれば、巻き込むのに良心の呵責を覚えますが、ガリオンならいいかなと思ったもので……』
「ず、隨分と俺のことをかってくれているようだな?」
ようは暴力要員として囲っておきたいだけではなかろうか?
「その口説き方で、俺がうんと頷くと思っているのか?」
『あなたは頷きますよ』
テレサはクスリと笑って見せると、
『それが、ガリオンという人らしい行ですからね』
打ち解けた様子の彼を見て「良くわかってるじゃないか」と答えた。
【電子書籍化へ動き中】辺境の魔城に嫁いだ虐げられ令嬢が、冷徹と噂の暗黒騎士に溺愛されて幸せになるまで。
代々聖女を生み出してきた公爵家の次女に生まれたアリエスはほとんどの魔法を使えず、その才能の無さから姉ヴェイラからは馬鹿にされ、両親に冷たい仕打ちを受けていた。 ある日、姉ヴェイラが聖女として第一王子に嫁いだことで権力を握った。ヴェイラは邪魔になったアリエスを辺境にある「魔城」と呼ばれる場所へと嫁がせるように仕向ける。アリエスは冷徹と噂の暗黒騎士と呼ばれるイウヴァルトと婚約することとなる。 イウヴァルトは最初アリエスに興味を持たなかったが、アリエスは唯一使えた回復魔法や実家で培っていた料理の腕前で兵士たちを労り、使用人がいない中家事などもこなしていった。彼女の獻身的な姿にイウヴァルトは心を許し、荒んでいた精神を癒さしていく。 さらにはアリエスの力が解放され、イウヴァルトにかかっていた呪いを解くことに成功する。彼はすっかりアリエスを溺愛するようになった。「呪いを受けた俺を受け入れてくれたのは、アリエス、お前だけだ。お前をずっと守っていこう」 一方聖女となったヴェイラだったが、彼女の我儘な態度などにだんだんと第一王子からの寵愛を失っていくこととなり……。 これは、世界に嫌われた美形騎士と虐げられた令嬢が幸せをつかんでいく話。 ※アルファポリス様でも投稿しております。 ※2022年9月8日 完結 ※日間ランキング42位ありがとうございます! 皆様のおかげです! ※電子書籍化へ動き出しました!
8 86【書籍化作品】離婚屆を出す朝に…
書籍化作品です。 加筆修正した書籍のほうは、書店での購入は難しいですがネットではまだ購入できると思いますので、興味を持たれた方はそちらも手に取って頂ければ嬉しいです。 こちらのWEB版は、誤字脫字や伏線未回収の部分もあり(完成版があるので、こちらでの修正は行いません。すみません)しばらく非公開にしていましたが、少しの間だけ公開することにしました。 一か月ほどで非公開に戻すか、続編を投稿することになれば、続編連載の間は公開します。 まだ未定です。すみません。 あらすじ 離婚屆を出す朝、事故に遭った。高卒後すぐに結婚した紫奈は、8才年上のセレブな青年実業家、那人さんと勝ち組結婚を果たしたはずだった。しかし幼な妻の特権に甘え、わがまま放題だったせいで7年で破局を迎えた。しかも彼は離婚後、紫奈の親友の優華と再婚し息子の由人と共に暮らすようだ。 思えば幼い頃から、優華に何一つ勝った事がなかった。 生まれ変わったら優華のような完璧な女性になって、また那人さんと出會いたいと望む紫奈だったが……。 脳死して行き著いた霊界裁判で地獄行きを命じられる。 リベンジシステムの治験者となって地獄行きを逃れるべく、現世に戻ってリベンジしようとする紫奈だが、改めて自分の數々の自分勝手な振る舞いを思い出し……。 果たして紫奈は無事リベンジシステムを終え、地獄行きを逃れる事が出來るのか……。
8 186婚約破棄された崖っぷち令嬢は、帝國の皇弟殿下と結ばれる【書籍化&コミカライズ】
【第3部連載開始】 ★オーバーラップノベルズf様から、第2巻8月25日発売予定です★ ★コミカライズ企畫進行中★ ミネルバ・バートネット公爵令嬢は、異世界人セリカを虐め抜いたという罪で、アシュラン王國の王太子フィルバートから婚約破棄された。 愛してくれる両親と3人の兄たちの盡力で、なんとか次の婚約者を探そうとするが、近寄ってくるのは一見まともでも內面がろくでもない男達ばかり。 いっそ修道院に入ろうかと思った矢先、冷酷と噂される宗主國グレイリングの皇弟ルーファスに出會い、ミネルバの人生は一変する。 ルーファスの誠実な愛情に包まれ、アシュラン王國を揺るがす陰謀に立ち向かう中、ミネルバにも特殊能力があることが判明し……。 人間不信気味の誇り高い公爵令嬢が、新たな幸せを摑むお話です。 (カクヨム様にも投稿しています)
8 185血染めの館
私たちの通う學校の裏の館では昔、殺人事件があったそう。館の中は血だらけだったけど、遺體はいまだに見つかっていない。その館は「血染めの館」と呼ばれ、人々に恐れられていた。 ある年の夏、私たちの學校の生徒が次々に消える失蹤事件が起きた。と同時に、奇妙な噂が流れ始めた。 「血染めの館で殺された館の主人の霊が現れる」と。 そんなわけないじゃいかと、私たちオカルト研究部が調査に入った。まだそこでなにが起こるかも知らずに…
8 109同志スターリンは美少女です!?
歴史にその悪名を知らしめるスターリンは美少女になりました。その中身は日本の元社會人ですが、何の因果か女の子スターリンの中身になりました。 なので、第二の祖國、ソビエト社會主義共和國連邦。通稱USSRを戦禍から守っていこうと思います。 やることの多いソ連ですが、まずは國內のゴミ掃除から始めましょう。 いや、割とマジで國內の腐敗がヤバイのです。本當に、頭を抱えるくらいに真剣に。 あと、スターリンの著しいイメージ崩壊があります。 *意味不明な謎技術も登場します(戦力には関係ありませんが、ある意味チートかも)
8 165転生しているヒマはねぇ!
異世界で転生する予定になり、チキュウからマタイラという世界の転生界へと移動させられた『カワマタダイチ』。 ところが、控え室で待たされている間に、彼が転生するはずだった肉體に別の魂が入れられ、彼は転生先を失ってしまう。 この大問題を、誤魔化し、なおかつそうなった原因を探るべく、マタイラ転生界の最高責任者マーシャが彼に提示したのは、冥界に來た魂を転生させるこの転生界の転生役所で働くことだった。 ニホンでやる気を持てずに活力なく生きていたダイチは、好みの女性陣や気の合う友人に勵まされながら、少しずつ活力を取り戻し、それでも死んだままという矛盾に抗いながら、魂すり替え事件やマタイラの冥界と現界を取り巻く大問題と、わりと真面目に向き合っていく。
8 76