《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》九話 二人の冒険者
翌日。
依頼の待ち合わせ場所に行くと、そこにはシスターさんと二人の冒険者がいた。
どうやら、俺の他にも護衛として冒険者を雇っていたようである。
危険な地下水路に行くのだから、パーティを組むのも當然と言えば當然か。
「おはようございます!」
俺が挨拶をすると、すぐさまシスターさんと男冒険者が笑みを浮かべた。
彼らはこちらを向くと、すぐに會釈をする。
しかし、冒険者の方は何やらひどく不機嫌そうだった。
俺に対しても、値踏みするような視線を投げかけてくる。
「紹介します。こちらはニノさんとロウガさん。依頼でいつもお世話になっている冒険者さんで、お二人ともBランクなんですよ」
「俺がロウガだ、よろしく頼むぜ」
「ジークです、よろしくお願いします」
さっそくロウガさんと固い握手をわす。
昔ながらの古強者と言った雰囲気の人で、なかなかじがいいな。
は筋骨隆々としてかなり大きいが、威圧はさほどではない。
頼りになりそうなおじさん、といったところだろうか。
「ニノです。よろしくお願いします」
ひどくぶっきらぼうな仕草で手を差し出してくるニノさん。
お、俺……この子に何か嫌われるようなことでもしたか?
容赦のなさすぎる眼差しに、たまらずたじろいでしまう。
まさか、この歳で加齢臭でもするのか……?
俺が戸っていると、ロウガさんが笑いながら言う。
「ははは! ニノはお前に嫉妬してるだけさ」
「へ?」
低ランク冒険者ならまだしも、Bランクで?
まだ俺、そこまでの実績は出してないはずだけどな。
「こいつは昔から、クルタちゃんのファンでな。今まで何回もパーティを組みたいって申し出てたんだが、のらりくらりとかわされてた。そこへお前が現れて、クルタちゃんの方からいをけたって言うだろ? だから気にらないってわけさ」
「なるほど……でもそれ、完全な八つ當たりじゃないですか?」
「ま、その通りだな。ニノ、気持ちはわからんでもないが大人になれ」
「……気にらないものは気にらないです。ですが、私もプロの冒険者ですから。きちんと仕事はしますので安心してください」
突き放すような口調で告げるニノさん。
仕事はすると言ってくれているけど、仲良くするのはかなり難しそうだなぁ。
俺に嫉妬している冒険者がいるとは聞いていたが、まさかこんなところで出會うとは。
思いがけず、厄介なことになってしまったものだ。
「気にしなくていいぜ。こいつがガキなだけだ、アンタは悪くない」
「ガキとは失禮ですね。ロウガだって、前に狙っていた付嬢に彼氏が出來た時は不機嫌になっていたではありませんか」
「……昔の話を持ち出すんじゃねえよ」
「ほんの三か月前のことでしょう?」
その後もしばらくヤイヤイとやり合う二人。
まだ十代後半に見えるニノさんと、四十半ばほどに見えるロウガさん。
親子ほどの年の差があるペアであるが、意外と仲は良いようである。
喧嘩をしていても、微笑ましいというか何というか。
「それぐらいにして、そろそろ行きますよ。ついて來てください」
パンパンと手を叩き、二人の話を打ち切るシスターさん。
彼はそのまま俺たちを先導すると、街の防壁に向かって歩を進めていく。
こうして歩くこと十五分ほど。
俺たちは路地の突き當りにある地下水路へのり口にたどり著く。
「ずいぶんと々しい扉だな」
「前に、犯罪組織がこの地下水路を城にしたことがあったそうでして。以來、そういうことが起きないように警備が厳重になったんです」
り口の分厚い鉄扉。
それをシスターさんが開け放つと、たちまちぬるい風が吹き上がってきた。
にまとわりつくようなそれに、皆の顔が険しくなる。
ごくごくわずかにだが、風に瘴気が含まれているようであった。
「こりゃひでえな。こんなとこまで汚染が広がってきてらぁ」
「いったい、何が原因で……?」
「ジークさん、さっそくですがサンクテェールをお願いできますか?」
「わかりました」
すぐさま手のひらをかざし、呪文を詠唱する。
このじからすると、水路の奧に何が待ち構えているのか分かったものじゃない。
念のため、魔力を多めに込めて強力な聖域を構築しておくとしよう。
たちまち白いが生じて、ベールのように俺たち四人を覆いつくす。
「おおお、聖域が目に見えるほどに……! これほど度が高い聖域は、高位の聖職者でもなかなか難しいですよ!」
「ほう、そいつは頼もしいな」
「…………ただの凡骨ではないようですね」
心するシスターさんとロウガさん。
一方、ニノさんはひどく悔しげな顔をしていた。
彼はそのまま俺の方を見ると、対抗心を剝き出しにしたような目をする。
別に、こっちは彼を刺激するような意図があったわけではないんだけどな……。
思ったより、ニノさんと仲良くするのは難しいかもしれない。
「さあ、準備もできましたし行きましょう!」
ランプに火を燈し、通路に足を踏みれるシスターさん。
俺たち三人は、そのに導かれるようにして後に続く。
この不気味な闇の先で、いったい何が起きているというのか。
異変の正に思いを馳せつつ、俺は地下への階段を降りるのだった。
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