《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》二十話 魔法と剣技の融合
「グオオオッ!」
亀らしからぬ唸りを上げ、突進してくるロックタイタスの群れ。
そのきは、これまた亀らしからぬ程に速かった。
立ち込める霧の向こうから、小山のような巨と金の眼が迫ってくる。
「くっ! なかなか重いな!」
パーティの前面に立ったロウガさんが、敵の噛みつき攻撃をいなしていく。
さすがはBランク冒険者。
手にした巨大な盾で、上手く突撃してくるタイタスたちの頭をそらしている。
しかし、集まる敵の數が増えるにしたがってそれも苦しくなってくる。
「こちらです! はぁっ!」
ロウガさんをサポートすべく、手裏剣を投げるニノさん。
特殊な投擲技でも使っているのだろうか。
黒い刃は、さながら紐でられているかのように縦橫無盡の軌道を描く。
――カンカンカンッ!
タイタスの甲羅に攻撃が當たり、金屬音を響かせる。
どうやらこいつら、図は大きいが頭は悪いらしい。
手裏剣の軌道が曲がっていたことを理解できず、見當違いの場所へき出す。
「うおおおっ! せいっ!」
ロウガさんとニノさんが作ってくれた隙をついて、タイタスに斬撃を食らわせる。
閃く黒い刃。
タイタスたちの首が飛び、の華が咲く。
鍛え上げられた隕鉄の剣は、タイタスたちの強靭な外皮を紙のごとく切り裂いた。
「グオオオオッ!」
「ん?」
どこからか、地鳴りにも似たびが聞こえた。
こいつは一……。
タイタスたちは急にきを止めると、すぐさま後退を始めた。
「なんだ……? 大人しくなったな」
「ちょっと嫌な予がしますね」
「あれを見てください! 何かが……くる!」
ニノさんが指さした先には、周囲より一回りほど大きいタイタスがいた。
その甲羅は赤く燃えていて、そこかしこに空いたから蒸気がれだしている。
まるで溶巖の塊でも背負っているかのようだ。
ロックタイタスではないな……。
俺がとっさにロウガさんの方を見やると、彼は苦々しい顔をして舌打ちする。
「ありゃマグマタイタスだな、ロックタイタスの亜種だよ」
「強いのですか?」
「単純な強さなら、ロックタイタスと大して変わらねえが……來るぞ!」
ロウガさんがぶと同時に、マグマタイタスの口から蒸気が噴出した。
あつっ!!!!
直撃は避けたものの、猛烈な熱気が伝わってくる。
落ちていた枯れ枝が燃えた。
見た眼こそ蒸気だけれど、ほとんど火炎放みたいな威力だな……!
「やつの蒸気が直撃したら、人間はひとたまりもねえ! しかも全から熱を発してるから、近づくだけでも火傷しちまう!」
「それ、ロックタイタスより明らかに強いのでは?」
「甲羅がい上に、ロックタイタスにあった魔法耐が全くないんだよ。きも遅いから、魔導師さえいれば楽に倒せる。だが、剣士にとっちゃロックタイタスよりもさらに相が悪いな」
なるほど、ロックタイタス以上に近接職殺しとして特化してるタイプか。
でもそれならば、対処のしようはある。
俺の黒剣は魔法の発としても優れた特を持つ。
斬撃に魔力を乗せて打つなんてことも、できなくはないはずだ。
俺が使える魔法は補助中心だから、攻撃力はそこまででもないのだけど……。
魔法剣ならば、あの巨大なマグマタイタスを倒せるかもしれない。
いや、倒せるはずだ。
「俺が魔法剣を放ちます!」
「魔法剣……? 何ですかそれは?」
「斬撃に魔力を乗せて、飛ばすんです! これなら奴を斬れます!」
「おいおいおい! そんなことできるのか!?」
戸いを隠しきれないロウガさんとニノさん。
無理もない。
この黒剣を購したとき、そのうち魔法と剣技を組み合わせた使い方が出來るかもとはいったけど……。
まさか、昨日の今日でこんなことになるとは思ってなかったからな。
「功するかどうかはわかりません。でも、こうしないとあいつを倒すのは難しいですよ」
「……ジークは斬撃を飛ばせると聞きました。それでどうにかなりませんか?」
「あれは基本的に対人用で、威力はそんなにないんですよ」
ロックタイタスと比べればらかいとはいえ、巖の塊のような甲羅を背負っている。
その防力はかなりのものであろう。
どうしても威力の劣る飛撃では、たぶん倒しきれない。
まあ、姉さんぐらいの腕があればあんなのでも真っ二つにできるんだろうけど……。
まだまだ未な俺では、さすがにちょっと無理がある。
首を狙う手もあるが、マグマタイタスはロックタイタスと違ってそこも短い。
「何とか、しの間だけやつを足止めできませんか? 魔法剣を打つのに、時間がかかりそうで」
「わかった、いいだろう。だが俺の盾だと……距離が近すぎるな」
「……私がやりましょう。いい案があります」
何やら自信ありげなニノさん。
ここは、素直に任せてしまうのがいいだろうか。
俺とロウガさんは互いに顔を見合わせ、うなずく。
「では……」
マグマタイタスの前へと走るニノさん。
彼は手裏剣を取り出すと、わざと軌道を曲げずにまっすぐ投げた。
ちょうど目の辺りに直撃した手裏剣は、たちまち敵の注意をニノさんの方へと引き付ける。
「こちらです! ついてきなさい!」
手裏剣を投げる位置を調整しながら、ニノさんはマグマタイタスの移をコントロールしていく。
――ドシン、ドシン!
火山を思わせる巨が、しずつスピードに乗って加速し始めた。
「そいっ!」
ニノさんの手から、ひも付きのクナイが放たれた。
――バスッ!
クナイは近くに生えていた枯れ木に深々と突き刺さる。
そのままニノさんは後方へ思い切りジャンプすると、クナイからびた紐を使って、ブランコのように移した。
あそこは……そうか!
周囲と比べての濃い地面を見て、俺はポンと手を叩いた。
ニノさんは大きな底なし沼に、奴をおびき寄せたのだ。
「グオオオオン!!」
マグマタイタスの巨の前半分ほどが、ずぶりと沈み込んだ。
さすがにこのまま底なし沼に落ちていくことはなさそうだが……これで十分!
奴が出するまでの間に、魔力を高めて――。
「どりゃあああっ!!」
黒剣を満たした氷の魔力。
斬撃とともに解き放たれたそれは、氷の刃となって飛んだ。
冷気が白い軌跡を描き、青い刃が宙を駆け抜ける。
火山を思わせる甲羅が一瞬のうちに凍り付いた。
そして――。
「ギギャアアアッ!!」
壯絶な斷末魔とともに、マグマタイタスのが割れた。
いよっしゃあ、大功!!
俺はガッツポーズをすると、喜びを発させたのだった――。
【読者の皆様へ】
記念すべき二十話目を迎えました。
これも読者の皆様のおかげです、ありがとうございます!
次回からまた本格的に話がき出しますので、よろしくお願いします。
ここまでお読みになって、しでも
「面白い・続きが気になる・早く更新してしい!」
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