《【書籍化決定!】家で無能と言われ続けた俺ですが、世界的には超有能だったようです》二十七話 悪霊の森
「ここが悪霊の森……ですか」
街を旅立って數時間。
草原を北西に歩き続けた俺たちの前に、薄暗い森が姿を現した。
暗い彩の葉に、白骨を思わせる白くごつごつとした幹。
どことなく不健康な木々は、瘴気にでも侵されているかのようだ。
加えて、どこからか響く亡者の唸りのような音が気味の悪さを倍増させている。
「悪霊なんて名前がつくだけのことはあるぜ。気味が悪い」
「聞いていたよりもひどい雰囲気ですね。魔族の影響でしょうか」
「さあな。……ジーク、すまねえが念のためサンクテェールを頼めるか?」
「はい。俺も使おうと思っていたところです」
まだ取り立てて瘴気はじないが、念のためサンクテェールを使っておく。
はっきりわからない程度の濃度の瘴気でも、長時間吸えば有害だからな。
聖なるのがを覆うと、心なしか空気が爽やかになった気がする。
「館まではそこの道を通っていけるそうです、急ぎましょう!」
木々の間を抜ける小徑を指さして、ニノさんが言う。
きちんと人が造った道のようで、下草が払われ地面も踏み固められている。
様子からして、森の奧へと向かう冒険者たちが今でもそこそこ利用しているようだ。
「敵も恐らく、その道は警戒しているだろう。急いでも注意は怠るなよ」
「ええ。罠が仕掛けられていないかどうか、気をつけましょう」
もしかしたら、落としでもあるかもしれない。
道の脇に潛んだ敵が、魔法でも撃ってくるかもしれない。
俺たち三人は、ニノさんを先頭にして急ぎながらも慎重に進む。
「あれです!」
進み始めて一時間ほどが過ぎた頃。
木々の向こうに、ちょっとした城のような建築が見えてきた。
あれが、打ち捨てられた古い館ってやつか。
風化してところどころが欠けた石壁に、蔦が幾重にも絡みついている。
なるほど、これは相當に年月が経過していそうだな。
なくとも、建てられてから數百年は経っているのではなかろうか。
「大したもんだな」
「あそこに、クルタさんがいるわけですか」
「ええ。探知魔法はしっかりとあの場所を示しています」
地図を手にしながら、答えるニノさん。
森まで來たことで、より詳細な位置が分かるようになったらしい。
「よし、しっかり準備しとけよ。あの場所には山ほど敵がいるはずだ」
「はい!」
気合をれなおすように返事をすると、俺たちは館に向かって速度を上げた。
徒歩と言うよりも、小走りに近いスピードだ。
しかし、どうしてだろうか。
しばらく進んだというのに、館との距離が全くまらない。
「妙だな……」
「ニノさん、この道であってるんですか?」
「間違いありません。館までは一本道ですし」
「うーん……もしかして、あの建は幻とか」
「試してみましょう。夢幻破眼!」
そう言うと、眼に魔力を集中させるニノさん。
瞳が紅に染まり、そこからかすかにだが衝撃波のようなものが出た。
あれは東洋の忍と言うやつだろうか?
シエル姉さんから存在は聞いていたが、実際に見るのは初めてだ。
「私たちが幻覚にかかっている……と言うわけではありませんね。周囲の風景を偽裝しているわけでもなさそうです」
「となると、単純に館までまだ距離があるってことか」
「恐らくは……」
完全に納得していないのか、ニノさんは煮え切らない態度だった。
しかし、このまま立ち止まっていてもしょうがない。
俺たちは再び走りだすのだが、やはりちっとも館に著くことができない。
「ううーーん……やっぱりおかしいですね」
「だが、幻覚とかではないんだろ?」
「ええ。魔法が使われているのなら、さっきの探知魔法で分かったはずです」
「じゃあどうして、たどり著けないんだ?」
「……もしかして、道に細工がされているとか」
そう言うと、俺は改めて周囲をよく観察した。
どんな小さなものでもいい、異変の手掛かりはないか。
目を皿のようにしていると、道の端に何かを引きずったような跡が見えた。
「ん、これは?」
轍のような跡が、道の脇に生えている木へとつながっていた。
何だか、木自がいたようにも見えるな。
いや、これはもしかすると……!
「そうか。ニノさん、ロウガさん! 今すぐ道の真ん中へ避難してください!」
「へ?」
「森の木にトレントが混じってるんですよ! そいつらが道をかして、館にたどり著けないようにしてたんです!」
俺がそうんだ途端、種明かしをするように森がいた。
おいおい、こりゃ一部どころか多數派じゃないか!
正を現してき出した木々の多さに、俺はたまらず舌打ちをした。
「なんてこったよ!」
「こうなったら、森を突っ切って館まで走りましょう!」
「ですね!」
迫りくるトレントたちを潛り抜けながら、館に向かって一目散に走る。
幸い、植系モンスターの常で敵の移速度はかなり遅かった。
枝やをばして攻撃を仕掛けてくるが、致命傷とはなり得ない。
「どらああっ!!」
最後に立ちふさがったトレントたちを、ロウガさんがシールドバッシュで吹き飛ばす。
よし、道が出來た!
木々の向こうに見えた館の庭園。
塀に囲まれたそこへ、俺たち三人は全速力で駆け込む。
そしてすぐさま、鉄の門扉を閉めた。
「ふぅ……!」
「何とかなりましたね」
鞄からワイヤーを取り出すと、それで門扉をがっちりと縛り上げていくニノさん。
これで、敵がってくることはしばらくないだろう。
どうやらトレントたちに門扉や壁を破壊するだけの力はないようだ。
「まったく、厄介な相手だぜ」
「邪魔はさせないってじが凄いですね」
「ああ、注意していかねえと……げっ!」
そう言っているうちに、庭園の地面が次々と隆起し始めた。
やがてそこから、黒くて細な大型犬が姿を現す。
のあちこちが腐り、ところどころ骨が剝き出しとなったその姿は、既に生命が失われていることを如実に示していた。
「趣味の悪い番犬ですね……!」
「ああ、これなら豚でも放しておく方がマシだな」
おぞましい外見をしたアンデッドの犬たち。
その大群に囲まれた俺たちは、たまらず顔をこわばらせるのだった。
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