《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》17 ブラックドラゴンをやり込めよう
「偉大なドラゴンなんだから、勝負の容や條件なんかもこちらに合わせてくれるよね?」
「良かろう」
はい、言質貰いました。
そして勝ちも貰いましたー。
ブラックドラゴン、チョロ過ぎ。
ほら、こちらの勘の鋭い人たちは、彼が詰んでしまっていることに気が付いたのか「うわぁ……」というじの何とも言えない顔をしている。
そんな人たちに向けて、緒にしてねという意味合いを込めて、に人差し指を一本當てて「しー」と言っておく。
大丈夫だとは思うけど、念には念をれておくべきだ。すると皆、明後日の方を向いたり視線を足元へ落としたりしていたので、こちらの要は理解してくれていたと思う。
「それで、どんな勝負をするのだ?まあ、何をやったところで我が勝つのは分かり切っているがな」
道化も度が過ぎると面白くないどころか、可哀想になってきてしまうんだなあ……。
「そうだね……。それじゃあ、これからボクが出す問題に答えられるかどうかにしようか。間違えた時や答えられない時はボクの勝ち(・・・・・)ということで。後、負けた方は勝った方の言うことを一つきくこと」
さも今考え付いたかのような言い方をしたけど、全部先に考えてました。
「パーティーや打ち上げとかの余興に使えるネタは、あらかじめ考えておくと便利よ」
とは、我が麗しの従姉妹、里っちゃんのありがたいお言葉です。
でも、余興用だから簡単かというとそうじゃない。こういうものは基本的に當たっても外れても場を盛り上げられるように、ひねくれていているからだ。
ついでに言うと、先ほどの條件が通れば負けることが絶対になくなる。
ボクの狙いを理解した何人かが危うく吹き出しそうになっていたから、念押しをしておいて正解だったね。
で、チョロいやつ代表クロオオトカゲさんはというと……、
「ふん!そんなこと造作もないことだ」
これまた読み通り乗ってきてくれたのでした。
「では、さっそく問題!……の前に、ブラックドラゴンさんはお金のことをどれくらい知っているの?」
「金、人間種を中心にの換の際に使われるあれのことか。単位はデナー。一デナー鉄貨、十デナー銅貨、百デナー銀貨、千デナー大銀貨、一萬デナー金貨があるな」
おおう!意外なことにちゃんと知っていた。てっきり「矮小な人間の行いなど知ったことか!」とか言ってくるかと思っていたのだ。
補足しておくと、金貨の上位にはさらに百萬大金貨というのもあるのだけど、そちらは基本的に國単位での渉事などでしか使用されていないらしい。
ちなみにリアルのお金と比較すると、一デナー當たり十円くらいだそうだ。
クンビーラのみでしかも一カ月という期限付きではあったけど、一時滯在証という仮の分証明が五千円で手にるというのは、ゲームならではの破格だと思う。
後は価だけど、生活必需品は安く抑えられている反面、嗜好品の類はお高くなっているそうですわよ、奧様。
あらまあ、大変。ワタクシとしては武や防、それにアイテム類のお値段が気にかかりますわ。
……などと思わず脳で寸劇をしてしまうほどの価格差があるとのこと。なので、冒険で使用する品に関しては他のプレイヤーと流できる専用の街に行けるようになれば、そこで購するのが定番ということになっているそうだ。
閑話休題。
ともかく、そこまで詳しく知っているのなら、お金が出てくる問題もアリだね。
「了解。それじゃあ、問題を出すよ。『お小遣いを百デナー貰ったジョニー君は、一個十デナーのリンゴを二つと、三個で十三デナーの飴を買おうとしています。おつりはいくらでしょうか?』質問があればけ付けるけど?」
「……ふん。金についての質問をしてきたから、どんな小細工をするかと思えばこの程度だったとはな!」
「託はいいから、早く答えて。それとも何か質問があるの?」
「ふん!愚かな盜人に尋ねなければいけないことなど何もない!答えは、六十七デナーだ!」
自信満々に答えたドラゴンに対してボクは、
「ぶっぶー!はーずれー!!」
イラッ☆とする口調でそう言ってやった。
「うわ!?可いのに何だか腹が立つな!?」
「橫で聞いているだけでムカついてくるとか、どんだけだよ……」
騎士さんや衛兵さんたちにも好評?なようで。
「な!?どういうことだ!百デナーからリンゴ二個と飴の金額である三十三デナーを引けば、殘るは六十七デナーではないか!」
まあ、小學校一年生の算數の問題ならそうなるかもね。
「正解は銅貨四枚(四十デナー)で支払って、鉄貨七枚(七デナー)のお釣りをもらう、だよ。いくら孫大好きなお爺ちゃんでも、三歳のジョニー君に百デナー銀貨を渡すようなことはしないよ」
「なんだそれは!ただの屁理屈ではないか!」
「ふぅ……。あのねえ、ボクは問題を出した時に「質問があればけ付ける」とちゃんと言ったはずだよ。それを無視しておいて、後から文句を言うなんて。まったく……これだから愚かなドラゴンは」
「ぐぬぬぬぬ……!!」
まあ、質問されたところで正解になんてさせない(・・・・)んだけどね。二個のリンゴのの一個が蟲食いだったので一個しか買えなかったとか、飴を二個にしてもらう代わりに一個當たりを十デナーにまけてもらったとか、まだ買おうとしている段階なのでお金を支払っていない等々、どうとでも言えてしまうのだ。
「ボクの勝ち、だね」
「ぬぬぬぬぬうううう……!!なんと卑怯な盜人だ!!」
ふふん!今さら何を言っても負け犬の遠吠えにしか聞こえませーん。
「おいおい、ドラゴン相手に渉を持ちかけただけでなく、手玉に取ってしまったぞ……」
「いや、渉のように見せかけていただけで、あの時點で彼は絶対に勝てるように先手を打っていた」
「そして、勝負の容を提案した時にそれを確実なものとした。気付いていなかった者もいるようだが、お嬢さんはあの時、自分の勝利條件しか口にしていないぞ」
「な、なんだと!?」
騎士さんたちによる種明かしに、ブラックドラゴンは目を見開いて驚いていた。
後、騎士さんや衛兵さんたちの半分くらいも同じように驚いていたのは、問題なんじゃないだろうか。口八丁で誤魔化したり丸め込んだりしようとする悪いやつだっているだろうに。
「相手を見下して確認を怠ったあの時點であなたの負けは決まっていたという訳。どんなに強大な力を持っていても、どんなに膨大な知識を蓄えていても、適切に使いこなすことができなければ、無知で無力なことと変わりはないんだよ」
まあ、全部里っちゃんのけ売りだけどね。
次回投稿は明日の朝6:00の予定です。
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