《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》40 魔法訓練その1 屬魔法編
「それじゃあ、魔法の訓練を始めるぞい」
「お願いします、先生」
支部長に代わってボクの指導役を務めてくれることになったのは、年六十七歳にして未だ現役の冒険者でもあるピグミーの魔法使い、ゾイさんだった。
ディランおじいちゃんが六十歳でデュラン支部長が六十三歳だから、なんと彼らよりもさらに年上で、クンビーラの冒険者の中では最年長なのだとか。
等級は三。本人曰く、「これ以上は昇級試験が面倒なのでけなかったぞい」ということらしい。
どうしてこんな大所に教わることになったかというと、もちろん原因はあの支部長ですよ。彼を追い返したのはいいけれど、支部長と比較されるのを嫌がったのか誰もボクの指導役に手を上げなかったのだ。
そこにたまたま日課の散歩でやってきたゾイさんが名乗り出てくれたのだった。
「その件といい、最近の若い者はけないぞい。格上の相手にすぐに委してしまい過ぎだぞい。気概が足りんぞい」
昨日の騒ぎについては、後から冒険者協會に顔を出した時に話を聞かされて隨分と驚いたのだとか。
ちなみにサイティー教は、騒ぎに気が付かず訓練場でずっと鍛錬をしていたそうだ。
「あはははは……」
だけどまあ、當事者としては適當に笑って場を濁すしかなかったりして。
「それではまず、各屬魔法から解説していくぞい。〔回復魔法〕と〔強化魔法〕に〔生活魔法〕はし違う部分があるから後で説明するぞい」
「はい」
「うむ。いい返事だぞい。若者はこうでないといけないぞい」
うむうむ、と頷いているゾイさんだったけど、ピグミーのちっちゃな格と相まって、子どもが大人ぶっているように見えて仕方がない。
一生懸命笑いをこらえていたのはです。
「おっほん。えー、各屬魔法じゃが、初めに習得できるもの、いつの間にか使えるようになっていることが多いから、才能とも言われているあれのことぞいな。初級魔法技能とも呼ばれることもあるんじゃが、これで三つの攻撃魔法を覚えることができるぞい」
「三つの攻撃魔法!?」
「練度が零からでも使えるボール、練度が三十になると使えるようになるニードル、同じく八十になると使えるようになるドリルだぞい。これは各屬共に同じで、例えば〔火屬魔法〕なら【ファイヤーボール】、【ファイヤーニードル】、【ファイヤードリル】となるぞい。こんなじじゃぞい」
くるりとゾイさんが手首を捻ると、空中に魔法陣が展開され、そこからソフトボール代の火球、人差し指ほどの長さの無數の火の針、そして五十センチくらいの螺旋に渦巻く炎が生み出された。
というか魔法の同時展開とかすごくない!?
「ボール系の魔法の特徴は著弾と同時に散らばることぞい。ほれ」
軽い掛け聲とは裏腹に、高速で飛び立っていった【ファイヤーボール】は、目標の的に命中すると破裂するように広がった。
「次にニードル系じゃが、これは広範囲への攻撃に適したものだぞい。そりゃ」
今度はいくつもの火の針が的へと飛んでいき、その周辺へと突き立っていった。それは先ほどの【ファイヤーボール】の破裂した範囲とは比べにならないくらい広い。
「最後のドリル系じゃが、これは反対に単への攻撃に特化したものぞい。ちょい」
そして渦巻く螺旋の炎が飛んでいくと、ドガン!と的を々に破壊してしまった。
「ちょっと強過ぎたぞい?ついでに言っておくと、攻撃力はニードル、ボール、ドリルの順に強くなっていくぞい。まあ、ニードル全てを一カ所に命中させるなんていう蕓當ができるのなら、話は変わってくるぞい」
ふむふむ。つまりボールが基本とするならば、ニードルは威力が低いけれど広範囲に攻撃できて、逆にドリルは威力が高いけれど一か所にしか攻撃できないということだね。ボールの場合は破裂した余波で周囲へも多は攻撃できる、という程度かな。
「そして、実はこれが重要なんじゃが、この三つは互いに三すくみの関係にあるぞい」
「三すくみ?」
「うむ。ボールはニードルに強くドリルに弱い。ニードルはドリルに強くボールに弱い。そしてドリルはボールに強くニードルに弱い、という特徴があるのじゃぞい」
これを上手く使えば、強力な相手の魔法でも撃ち消す事ができるのだとか。
「さらに屬同士の相を加えてやれれば、より効果的になるぞい」
現在判明している魔法の屬は全部で七種類。自然四屬といわれる火・水・風・土の四つと、上位三屬といわれる・闇・雷の三つだ。
「基本四屬の相は火が水に弱く、水が土に弱い。その土は風に弱く、風は火に弱い。火は水によって消されてしまうし、水は土に堰き止められてしまう。どんなにい土石も風によって風化するが、その風も火によって流れをされてしまう。まさに自然そのままの相なのだぞい」
一方の上位三屬だけど、こちらは自然四屬の時とは関係が異なっている。
「と闇は互いが互いの弱點となる関係にあるぞい。そして雷はどんな屬ともかかわりを持たないぞい。だからどんな相手にも安定した攻撃力を誇る反面、極端に強い威力とはなり難いんだぞい」
どうやら『OAW』の雷屬は、他のゲームでよくある『無屬魔法』の扱いに近いようだ。
「もしもリュカリュカが魔法を主力にしようと考えているなら、早めに『雷屬魔法』を習得することをお勧めするぞい。まあ、これはそれぞれの考えもあるから絶対とは言わないぞい」
「理想としては、七屬を全て習得することですか?」
「やはり、理想としてならそうなるぞい。しかし、七屬全ての練度を上げて上級技能まで育て上げるのは至難の業(わざ)だぞい」
し遠い目をするゾイさん。もしかして、彼もまだ道半ばなのだろうか?
「これ聞いちゃっても大丈夫なのかな?……先生は、どこまで進んでいるんですか?」
「わしぞいか?ようやく先日五つ目の屬を上級に長させることができたぞい」
「先生でもやっと五つですか……」
予想していたとはいえ、険しい道のりのようだ。
「ああ、それと、気が付いてはいたようじゃが、これは個人の極事項に関わることだから無闇に聞いちゃいかんぞい」
「はい。気を付けます」
「さて、講義はこれくらいにして、実技訓練にるとするぞい。目標は狙った的にボールを當てられるようになることぞい!」
意外にもゾイさんはスパルタな先生でした……。
〇各屬の関係
火 → 風
↑ ↓ ←→ 闇 雷(ボッチww)
水 ← 土
〇ボール・ニードル・ドリルの関係
ニードル
⇗ ⇘
ボール ⇐ ドリル
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