《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》41 魔法訓練その2 生活魔法・回復魔法・強化魔法編
実技訓練が始まって一時間。MPの自然回復が追いつかず、ついにボクはMP切れでへたり込んでしまった。
『OAW』はMPがなくなっても死亡することはないけれど、MP枯渇という狀態異常になってしまうのだ。その癥狀はが重く、視界が定まらないというものだった。
「ふひゅう……。もう、無理ぃ……」
「ふむふむ。才能たる技能を持っていたとしても、これまで使用したことがなかったならそんなものぞい。命中率も初めてなら及第點だぞい」
それでも合格最低ラインは超えていると分かってホッとする。
「それでは、MPが回復するまでの間、〔生活魔法〕や〔回復魔法〕、〔強化魔法〕の話をしてやるぞい」
「お願いしまーす」
ヘロヘロになりながらも辛うじて返事をしたボクに、ゾイさんはニッコリと笑みを浮かべた。
「これらの魔法と各屬魔法の一番の違いを言うならば、上位の技能がないということになるぞい。〔火屬魔法〕で例えると、練度が最大になるにつれて〔中級火屬魔法〕そして〔上級火屬魔法〕となっていくんじゃが、〔生活魔法〕などにはそれがないんだぞい」
それは予想外。特に〔回復魔法〕なんて普通に上位がありそうな気がしていた。
「その代わりと言って良いのかは迷うところじゃが、練度が最大となっても、使い続けていくことで魔法の効果が高くなっていくという質があるぞい。これは各魔法ごとに対応しているから、注意が必要なのだぞい」
つまり、狀態異常を回復する【キュア】をどんなに使い続けても、HPを回復する【ヒール】の回復量は上がらないということらしい。
「それと〔生活魔法〕じゃが、便利魔法と呼ばれるだけあって普段から重寶するものが多いぞい。できるだけ頻繁に使って練度を上げておくことじゃぞい」
「でも、先生。ボクはまだ【種火】しか使えないですよ?」
「〔生活魔法〕は全ての魔法を覚えられるまでは特に練度の上りが早くなっているぞい。採取などの依頼で街の外に行った時に意図的に使っていれば、すぐに他の魔法も覚えることができるぞい」
それはちょっと街の外に出る日が楽しみになってきたかも!
「そろそろMPが回復したかぞい?」
「えーと……、半分くらいは回復しました」
「ふむ。それくらいなら失敗しても大怪我をするまでにはならないぞい」
「うえっ!?な、なにするんですか……?」
ゾイさんの騒な呟きに、頬が引きつるのをじる。
「昨日の一件に対するわしながらの詫びじゃぞい」
「いやいや、先生は昨日あの場にいなかったじゃないですか。そんな人からお詫びを貰うことなんてできません」
「ほっほ。真面目じゃのう。冒険者なら貰えるものは何でも貰うくらいの図太さがなければ、これから先やっていくことなんてできんよ」
いつの間にか語尾の「ぞい」が消えていた。
それだけ本音で語ってくれているということなのかな?
「その時はボクに冒険者は向いていなかったっていうだけの話です。そうなったらまた別の生き方でも探しますから」
「ほっほっほ。良い啖呵(たんか)じゃ。それなら、これは気にった新米冒険者への手向けということにでもしておいてくれ」
「まあ、そういうことなら、け取ることは吝かではないです」
「ほっほっほっほ。それじゃあ見せてやろうかのう。MPを過剰積み込み(オーバーロード)した魔法というやつを!」
ゾイさんが勢いよく右手を振ると、先ほどと同じく魔法陣が生み出された。
「まだまだじゃ!」
それを二回、三回と繰り返していくごとに何重にも魔法順が重なっていく。
「いくぞ、【ファイヤーボール】!!」
カッと宙に描かれた魔法陣がを放ったかと思うと、そこからとんでもない大きさの火の玉が飛び出していく!
ドッガーン!!
轟音を立てて著弾した巨大火球は……、的どころか周囲一帯の地面を抉り取ってしまっていた。
その跡はまるで遠鏡で見た月面のクレーターのようだった。
「な、なな、ななななな何が起こった!?」
「て、敵襲か!?」
「いや、お前は一どこと戦っているんだよ!?クンビーラはここ數十年、どことも事を構えていないぞ!?」
「まさかブラックドラゴンが!?」
「なにー!?誰だ、余計なことをしでかしたのは!?」
と阿鼻喚の真っ只中となっている人たちを無視して、ゾイさんは大きく息を吐いた後に、ボクへと向き直った。
「今のがMPを余計に注ぎ込んだ魔法だぞい。基本の【ファイヤーボール】ですらあれだけの威力を出すことができるから、使いどころを間違わなければ大きな力になるぞい」
どうしてMPの回復狀況を聞いたのかがよく分かった。レベル一のボクでも全MPを注ぎ込めば同じくらいの威力を出すことができてしまうからだ。
初回からそんな暴走を起こさせるのは危険だから、MPが減っている狀態で練習させようとしているのだろう。
とはいえ、簡単に真似ができるようなものじゃないはずだ。
ゾイさんの場合、魔法陣がいくつも重なっていった、つまりいくつもの【ファイヤーボール】を同時展開するような形で発させて、放つその瞬間に一つに統合していっているのだろう。
さて、ボクはというと、當然のようにそんな用な真似はできない。これはつい先ほど何度も挑戦した結果なのでけれる他はない。
まあ、今後に期待というところだね。複數の魔法を同時に展開するなんてロマンあふれることを、そう簡単に諦められますか!
ただ、今の段階ではできないことも確定している。
それではどうするか?
ゾイさんの言葉にあった通り、魔法を発する時にMPを余分に注ぎ込んでみました。
「うにゅううう……!【ウィンドボール】!!」
ぼわっふん!!
「うわっひゃあああああ!!!?」
結果はこれだけで察してもらえると思う。
ええ、ものの見事に失敗しましたとも!
発した瞬間、風の塊がその場で弾けてしまい、巻き込まれたボクは複雑な気流の中をあっちこっちへと振り回されてしまったのだった。
ジェットコースターを生で験するとこんなじなのかもしれない。うっぷ……。
「ひ、酷い目に合った……」
「ほっほ。だが、方向は悪くなかったぞい。後は制能力を鍛えれば上手くいけそうだぞい。練習あるのみだぞい」
「ガ、ガンバリマス……」
聲が上ってしまったのは仕方がない事だと思います。
追、その一。ゾイさんの見本は明らかにやり過ぎということで、ボクと二人で支部長からお説教されることになりました。
……絶対チェンジした意趣返しだと思う。
追、その二。ボクが飛び回ったのを見ていたエッ君が遊びと勘違いしてしまい、それからしばらくの間、ログアウト前には風の玉の中を飛び回る卵の姿を見るようになった。
魔法の名前とかを考えていると、封印したはずの中二な心が蘇ってきて々危険です。
ゾイさんの臺詞とかその影響をけちゃってまして、読み返すのが微妙につらい(苦笑)……。
〇〔回復魔法〕等の補足
・練度最大まではどの個別の魔法を使っていても、全ての魔法の効果その他が上昇する。
例、〔回復魔法〕の場合、【キュア】ばかり使用していても、【ヒール】の回復量なども上がっていく。
・最大値に達して以降は使用した魔法のみ、効果その他が上がる
例、【キュア】をいくら使用しても、【ヒール】の回復量などは上がらない。
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