《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》42 當面の目標は?
冒険者協會で槍や魔法の扱い方を教わってから數日の間は、おじいちゃんに宣言した通りクンビーラの街中だけで達することのできる「お使い」や「探し」といった依頼だけをけていた。
それらの依頼も、數十年も前に亡くなった人に宛てた手紙だとか、なくしたというのは噓で偽とすり替えようとしている、なんて一風変わったものがあるはずもなく、エッ君と二人でなら簡単に解決できるようなものばかりだった。
だけど、探しの途中に見つけた冠とティアラのセットを渡したら、依頼主の貴族の人が慌てて部屋を飛び出して行った、なんてことはあったかな。
ちゃんと目的のも見つけて執事さんに渡したことで依頼達にはなったけど、何だったんだろうか?
と、依頼の方は問題なかったのだけど……。
実は困ったことが一つ。依頼をけて町の中を移する度に、尾行されていたんです。まあ、尾行していた相手は分かっているんだけど。
おじいちゃんも騎士団の人も尾行が下手過ぎ!
レベル一のボクが〔警戒〕の技能を使うまでもなく分かるとか、どれだけ圧倒的に向いていないのか……。
余談だけど、〔気配遮斷〕技能を使ったら呆気なく撒けてしまい、おじいちゃんたちが右往左往することになった。
その様が余りにも悲慘だったので、それ以降は使っていなかったりする。練度を上げる機會が……。
その上ボクはエッ君を連れているのでとても目立つ。あ、エッ君は専用の肩掛けカバンの中か、もしくはボクの後をついて歩いているかのどちらかになった。
そういうこともあって、いつしかボクと尾行する人たちは街の新たな名となりつつあったのでした。
ちなみに、街の人たちは々と察してくれて、おじいちゃんたちの奇行は見て見ぬふりをしてくれています。
そしてさっくりと依頼を片付けた後は、観と稱した食べ歩きをして冒険者協會に戻り、完了の報告をした後、訓練場で自主トレーニングをするというのが定番の過ごし方だ。
特に練度の上がり方が鈍い〔槍技〕を中心に訓練することが多かった。
〔槍技〕と〔水屬魔法〕に〔風屬魔法〕、そして〔生活魔法〕を比べてみると、〔風屬魔法〕が最も練度の上りが早く、既に二十近くまで上がっていた。それに続くのが〔水屬魔法〕の十五、〔生活魔法〕の十一となり、〔槍技〕に至っては未だ一桁の七でしかない。
だけど、をかすこと全ての上昇率が悪いわけではなく、例えば〔軽業〕は〔槍技〕の補助として使っているだけなのに十まで長していた。
ちょっと不安になったので〔槍技〕を教わっていたサイティーさんに相談してみたところ、どうやらボクの場合、理攻撃系の技能全般のびが悪い可能があるようだ。
「人によって得意な技能や不得意な技能というものは當然あるものよ。リュカリュカは武を使うよりも、魔法を使う方が得意なようね。武類全てが苦手かどうかは分からないけれど、技能があるだけ槍は扱いやすいはずよ。まあ、後は腐らずに練習を繰り返すしかないわ」
結局はそういうところであるらしい。とはいえひたすらに訓練をするというのは苦しいものだ。
そこで、サイティーさんから一つの目標として練度を十まで挙げることを提案された。
「練度が十になると、何かあるんですか?」
「理攻撃系の技能の特徴なのだけど、練度が十になると『闘技』を覚えられるのよ」
闘技というのは、魔法系技能における個別の魔法のようなものだ。練度十で覚えられるのは、最初の闘技ということで、それぞれの基本のきを強化するものだそうだ。
「リュカリュカは槍だから【ピアス】となるわね。突きの威力を高める闘技よ。さらに使用した瞬間、が勝手にくような覚になるから理想的な攻撃を行う事ができる。そうそう、闘技の大半はそういう傾向があるから注意してね。まれにあの覚が苦手だという人もいるから」
つまりは、闘技とはいわゆる必殺技であり、使用すればアシスト効果によって自で発してくれるということのようだ。
リアルで武道を習っていたり、をかすのが得意であったりする人なら違和を覚えてしまうのかもしれない。
「それと、高度な闘技はMPを消費するものもあるから注意するように。まあ、【ピアス】は基本の闘技だからしばらくの間は気にする必要はないだろうけれど」
と、そんなことがあったので、街の外に出る依頼をけるのは〔槍技〕の闘技【ピアス】を覚えてからにしようと思っていた。
それと、初心者用槍を一番使いやすい長さへと調節してもらうことも忘れないようにしないと。
一方の魔法の方だけど、
「風、水に比べて〔生活魔法〕の上りが鈍いのは、〔生活魔法〕の中に各屬の魔法が含まれているからだぞい。そしてリュカリュカの場合は、先天的に技能として習得していた〔水屬魔法〕と〔風屬魔法〕が得意な技能ということだったのだと思うぞい」
ゾイさんいわく、「才能と素質が噛み合っている狀態」なのだとか。これはそれほど珍しい訳ではないけれど、かといってよくあることでもないらしい。
優先的に長させることをお勧めすると言われてしまった。
「うーん……」
悩みました。戦闘面ではこのまま魔法使い専門に方向転換しても良いけど、MPが切れた時に何もできないというのは怖い。
調薬でMPを回復する薬をバンバン作れるようになればまた話は変わってくるのかもしれないけれど、今の段階では理攻撃もできるに越したことはないだろう。
それになんだかんだ言って、何でもこなせる萬能タイプってやっぱりカッコイイからね。
まあ、ある程度は魔法重視の長となっていくのだろうけど。
とりあえず目標としては、一、〔槍技〕の練度を十に上げて闘技【ピアス】を使用できるようになる。二、街の外に出て採取系の依頼をこなす。ということにした。
特に二つ目の目標の方では、〔調薬〕の材料にできる分まで薬草類を確保できればと目論んでいたりする。
そんな話をなぜかいつものごとくボクたちと相席でお晝ご飯を食べていたおじいちゃんに話したのだけど、
「その方針に反対はしないが、調薬用の道は揃えたのか?」
「持ってないです……」
悲しい事実に直面することになってしまったのだった。忘れていた訳ではないのだけど、あまりの値段の高さに記憶から抹消してしまっていたみたい。
だって、基礎調薬セット一揃えで三千デナーもするんだよ!
ちなみに同じ道屋さんに置かれていたHPを三十回復する傷薬が三十デナーで、同じくHPを五十回復する回復薬が五十デナーで売られていた。
……出來上がった製品に対して必要な道の値段が高過ぎると思います。
こうしてボクの目標に三つ目の、基礎調薬セットを買う資金集め、が加わったのでした。
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