《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》65 久方ぶりの再會

「それで、嬢ちゃんは一何の用があってここへ?まあ、組合員なんだから立ち寄るのに問題はないんだけどよ」

「それに答える前にこちらからも質問。どうしてボッターさんがそのことを知っているの?」

その回答次第では、商業組合を見限らなくちゃいけなくなるだろう。なぜならボクが商業組合への加手続きを行った時には、彼はその場にいなかったからだ。

つまり個人報の取り扱いがざるの可能があったという訳。

「ああっと、すまねえ。訝(いぶか)しがらせてしまったな。実は俺はクンビーラの商業組合の幹部扱いなんだよ。だから將來有だと思われるやつや、向に注意が必要そうなやつが加した時には通達があるって訳だ」

ボクは間違いなく後者に該當しているんだろうね。

「何なら、付で確認してもらってもいいぞ?」

「それには及ばないかな。ここで噓を吐いてもボッターさんに利點はなさそうですし。それに、もしも組織ぐるみの場合なら、それこそどうとでも誤魔化されちゃいますからね」

「冒険者協會での顛末も聞かされてるからすれば、絶対にそれだけはないと言っておくぜ」

冒険者と同等、いやそれ以上に商人にとって信用は重要なものだからね。

加えて、先ほどボッターさんが言っていたように、大変不本意ながら街の人たちの噂の種になってしまっているのは事実だ。人の口に戸は立てられないとも言うし、ある程度の報流出は仕方がないのかもしれない。

それならどうしてわざわざ尋ねたのかと言えば、無礙に扱われないように釘を刺すという意味合いがあったからだ。

脅し?ノンノン。相手は百戦錬磨の商人さんたちですよ、このくらいでは警告が々といったところだろうね。実際目の前に座っているボッターさんも、慌てた様子は一切見けられないし。

「じゃあ、今の話はここまでということで」

「そうしてもらえるとありがたい。……しかし、本題にる前にここまで疲れさせられたのは、隨分と久しぶりだぜ」

ふう、と大きく息を吐きながら背もたれへとを預けるボッターさん。

だけど疲れたふりをするなら、目を瞑(つむ)るなりしてその鋭い眼を隠すべきだと思うな。

「さすがはブラックドラゴンを話だけでやり込めただけのことはあるな」

ほら、すぐさま切れ味鋭い反撃が飛んでくる。

それに対してボクは、さっきまでとは違って曖昧な笑みを浮かべるだけにとどめた。ブラックドラゴンの襲來というまずもってあり得ない出來事のため、クンビーラの支配者である公主様は事のあらましを可能な限り細かく、そして分かり易く町の人たちに通達していたのだ。

そのため、ボクがブラックドラゴンをやり込めた方法については広く知られていたのでした。

何より、つい先ほど終わりを宣言しちゃったので、再び長々と言い合うような事はできないという事もあった。追い詰められていると見せかけながら、こっそりとそういう狀況へと導しているんだから、全く商人という人たちは油斷も隙もあったものじゃないよ。

こういう時はさっさと話題を変更するのに限るね。

「それで、今日ボクが商業組合にやって來た理由なんですけど、ちょっと変わった調味料を探しているんですよ」

「変わった調味料だと?」

ニヤリ。ボッターさんの顔つきが変わったね。どうやら調味料などは『OAW』でも儲けの種になるようだ。

事の真偽はともかく、リアルでも胡椒が同じ重さの金と取引されていた、というのは有名な話だからね。商業組合であれば食い付いてくるだろうという予想は的中したという訳だ。

「ええ。市場に出ていないか、出ていてもとても取り扱う量がないになると思います」

完全にないと言わなかったのは、隅から隅まで歩き回った訳ではないから。加えてかなりの人で賑わっていたかので見落としがあってもおかしくはない。

むしろそういう見落としている所にあってくれれば、話は早いのだけど。

「醤油って言うんですけど、聞いたことありませんか?」

「ショーユ?……いや、殘念だが、俺は聞いたことがないな。そいつは一どんな代なんだ?」

「黒くて、ほとんど粘度のないしゃばしゃばした狀のです。味として一番強くじるのは塩辛さ、かな?匂いの方は……、ごめんなさい、適當なものが思い付かないや」

「ふむふむ。塩辛くて黒い狀なのか……。おや?どこかで聞いたことのある特徴だな」

「そうなの!?って危ない!」

ボッターさんの呟きに、思わずを乗り出してしまう。それに驚いたエッ君が飛び上がってしまい、機の上から落ちそうになってしまったけど、いち早く反応した小さな騎士様の手によってすんでのところで確保されたのだった。

「ふへー……。あ、リーヴ、ありがとね」

エッ君に代わってお禮を述べると、「問題ない」と言わんばかりに頭?の兜を軽く振るリーヴ。おおう、紳士(ジェントルマン)だ……。

あ、元になったアリシア様はだったので、リーヴの別はいまだ不明という狀態なんだよね。まあ、別不肖という點ではエッ君もどっこいどっこいなんだけど。

正式な名前は別がはっきり分かってからにしようと心に決めたボクなのでした。

そんな一連のドタバタを前にしていたのに、ボッターさんは何事もなかったかのように考え事を続けていた。この辺の微妙なきが『OAW』のNPCは「まだまだ人工知能っぽい」とか「機械臭さが抜けていない」とか言われている所以(ゆえん)だ。

まあ、プレイヤーの數だけ世界があるってことになるから、どうしても対応が遅れてしまうところはあるのだろうと思う。

「嬢ちゃんの言うその調味料、もしかするとソースの一種かもしれねえ」

そして待つこと一分、衝撃の事実が語られた。

「ソース!?ソースってあのソースですか!?」

「お、落ち著け、嬢ちゃん!何言っているのか訳が分からなくなってるぞ!?」

再び機の上へとを乗り出すボクを、ボッターさんが慌てて抑える。さっきとは違って隨分と人間臭い対応の仕方だ。

まさか、この短い間で學習した?でもそれを反映するにはアップデートが必要なはずだから、これらのきは既に組み込まれていたものなのかもしれない。

ちなみに、ここでボクが口にしているソースとは狹義のもので、リアルニポンでの洋風調味料なアレのことです。

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