《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》71 獄中まず飯とカツうどん(雑談回)
プレイヤーたちが集う唯一の街『異次元都市メイション』。
その質上、喧騒が絶えない街でもある。特に憩いと流の場である酒場や飲食店などは客たちの話聲や朗らかな笑い聲、そしてたまに喧嘩の怒聲や悲鳴が響いているのが常であった。
が、この日この時に限っては、酒場『休肝日』は靜けさに包まれていたのだった。
それというのも、居合わせたプレイヤー全員が手元へと視線を落として何やら熱心に読みふけっていたからである。
かくいう給仕のフローラに扮しているフローレンス・T・オトロもまたその一人であった。
「……確かに前回の報告で、嫌がらせをするとは言っていた。言っていたが……。こうきたか!」
「騎士団に引き渡されてから貧相な飯しか食えていなかったはずだから、これは効いただろうな……」
「いや、それ以前に返り討ちにされた相手が面會しに來たってだけで、相當なダメージだったんじゃないか」
「だよなあ。……しかも背後関係を引き出すとか恨み言を言うためじゃなくて、嫌がらせのためだからな。きっとその犯人、顔を見た瞬間からプレッシャーをじていたはずだ」
「いっそのこと殺してしいと考えるくらいには、屈辱だったんじゃないだろうか」
「まあ、それもカツうどんを出されるまでのことだろう」
「ああ。あれを出されてからは、意識が完全にそちらに固定されてしまったな。また夕暮れ前っていう時間帯がきついぜ。牢や留置所では朝晩の一日二食だから、あの時間なら空きっ腹を抱えていたことだろう」
「しかもメニューは、拳骨みたいに堅いパンが一個と野菜くずがほんのしだけった薄味のスープが一杯だけだし」
「え?……どうしてお前たちはそんなに留置所の食事報に詳しいのよ?」
「だって俺、テイマーちゃんと同じ『風卿』エリアの別の街で騎士やってるし。留置所にれられた連中に食事を持っていく任務があるんだよ」
「俺は……、あれだ。若気の至りだ……」
「何やったんだよ……?」
「ドロップ品を持ち込んだ店が異様に安く買い叩こうとしやがってな……。口論になっていたら衛兵がやって來てしょっ引かれた」
「何やってんだよ……」
「だが、それがきっかけでイベントが発生したんだ」
「イベント?もしかして『悪徳商人をやっつけろ!』ってやつか?」
「そうそう。よく知ってたな」
「どうも最近追加実裝されたイベントらしい。全エリア共通で発生可能なイベントみたいだ」
「へえ。ということもお前がドロップ品を売りに行った商人が?」
「ああ。悪徳商人だったという訳だ。ついでに俺をしょっ引いた衛兵もグルだったらしい」
「うん?らしい?」
「あー、ちょっと進め方をミスったんだよ。で、その衛兵は俺の知らないところでNPCに捕まってた」
「あらら。ま、まあ、全容解明はされたんだろ?」
「一応は、な。ただ、減點分クリアボーナスのアイテムがしょぼくなった。それと続編が実裝された時にペナルティ有りでスタートになるかもしれない」
「それ、掲示板でよくある拠もない噂話じゃないのか?」
「それならいいんだけどよ。『OAW』の続きのイベントはクリア時の狀況を細かいところまで反映してくるから……」
「納得がいかないなら、リセットしたらいいんじゃないか?MMOのオンラインゲームとは違って、やり直せるのがウリのゲームなんだし」
「俺もそうは思うんだけどな。だが、もう一度あの腹の立つやり取りをしなくちゃいけないかとなると、気が乗らねえんだわ」
「あー……、なるほど」
「リセットだけしてイベントは発生させないようにするっていう選択もあるぞ。続編が実裝されるまでとか、もうし報が出そろうまで放置しておくのもアリじゃないか」
「そういう手もあるな……」
「解決策が見つかったところで、暗い話は終わりだ。飲もうぜ。フローラちゃん!注文お願い!」
「あ、はーい!」
慌てて走り寄るフローレンス。こっそりと視線だけかしてみると、読み終わった者たちが會話をし始めたり、想を言い合ったりしているのが見える。
こうして店は、徐々にいつもの騒がしさを取り戻していくのだった。
「飲みはエールを四つお願い。食べは……、どうする?」
「うーん……。せっかくゲームの世界なんだし、何か変わったが食べてみたいかも。フローラちゃん、何かお勧めはないかな?」
「変わり種ということなら、この『獄中まず飯セット』でしょうか。でも、本気で不味いのでお勧めはできませんけど」
「えーと……、一応セットの容を教えてもらえる?」
「石のようにカッチカチに押し固めたパンと、ほんのしだけ塩味のするスープのセットです。野菜くずを煮込んであるので、舌が敏な人ならその味もするってシェフが言ってました」
「あー……、完全なネタ料理みたいね」
「というか罰ゲーム用?大人數で飲んでいる時なら面白いかも」
「いやいや。大人數でも酔っぱらっていないとキツイって!」
「確かに素面(しらふ)だと、ただのいじめになっちゃいそうね」
「ロシアンたこ焼きですら喧嘩になったって話があるくらいだから……」
「止めておいた方が無難だね。だけど、どの料理を頼もうか?」
「そうだ!テイマーちゃんのカツうどんって作ってもらえないのかな?」
「そういえばレシピっぽいものが掲載されてたね!フローラちゃん、できる?」
「ちょ、ちょっと待ってください。シェフに確認してきますから!」
「できると思うか?」
「『OAW』本編とは違って、この町なら材料は簡単に揃えられるだろうけど……。この店はお品書きにフライ系も多いし、うどんさえ準備できれば問題ないと思う」
「後は……、シェフの気分次第じゃないかな」
「結局はそこか……。しかしそう考えると、テイマーちゃんはタイミングよくソイソースが見つかったものだよな」
「うどんを広めていたから條件を達していたのね」
「條件?」
「ソイソースを発見できる條件のことよ」
「ソイソースはね、和食に該當する料理や食材を広めると発見できるようになっているのよ」
「え?まじで!?」
「まじまじ。ちなみにウスターソースと中濃ソースは、それに合う食材を広めるのが條件になっているみたいよ。テイマーちゃんの場合、これもうどんね」
「はあ?うどんにソース!?」
「焼きそばならぬ焼うどんだな。昔ながらの食堂とかならメニューにある店は多いぞ」
「ふーん。そうなのか……」
「お待たせしました!カツうどん、できるそうです」
「よっしゃ!じゃあ、それを四つお願い」
その注文を皮切りに、次々とカツうどんがオーダーされることになるのだった。
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