《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》86 初パーティーメンバー
『OAW』におけるクエストとイベントの違いというのはいくつかあるけれど、一番分かり易いのが『冒険者協會』でけた依頼かどうか、という點だね。
これは報酬を貰うタイミングにも関係していて、クエストの場合は目的を終わらせた後で冒険者協會へと報告してからになるのに対し、イベントの場合は目的が達されたその瞬間に渡されることになる。
まあ、容の査があるので、多時間が掛かるのが常のようだけど。
さて、それでは今回のようなイベントとして発生したけれど、正式には冒険者協會を通した依頼となる形になる場合はどうなるのか?
答えは簡単、イベントクエストという扱いになる。
いわゆる指名依頼というやつだね。
イベントクエストのちょっと面倒な點は、報酬を貰うまでの手順に一手間が追加されることにある。
まず、目的達の報告は依頼者へと行わなくちゃいけない。そしてそこで認可を貰えたことで初めて冒険者協會でイベントクエスト完了の手続きを行うことができるようになる、という流れとなっているのだ。
そんな面倒がある分、イベントクエストにはちゃんとそれなりのメリットが存在している。
それがこちら、冒険者協會を通した依頼なので冒険者としての活実績として扱われるという點だ。
実は通常のイベントの場合それがどんなに大変でも、あくまで個人でやったことという扱いにされてしまう。
イベント時に得た評判が巡り巡って影響するということはあるけどね。
それでも、等級を上げるための実績としては一切考慮されなかったりしているのだ。
例えばボクの場合、イベントでブラックドラゴンが暴れるのを防いだり、怪しいおじさんにられていた大量のブレードラビットをやっつけたりした訳だけど、未だに冒険者としては最低ランクの十等級のままだ。
イベントクエストになるとそんなことはなく、その活容はしっかりと冒険者としての評価に繋がるようになっているという訳。
分かり易くまとめてしまうと、クエストが冒険者としてのお仕事であるのに対して、イベントは個人で引きけたお仕事だと考えてもらえればいいと思います。
それでもって、そろそろ新しい種類の依頼もけてみたいと思っていたボクにとっては、今回のイベントクエストはなかなかにありがたいものだった。
余計なお荷を押し付けられなければ……。
「まさか本當に冒険者となれる日が來るなんて!激ですわ!」
押し付けられたお荷ことミルファシアさんが、何度目かになる喜びの言葉をんでいる。本人としては心の中で呟いているつもりのようなのだけど、思いっきりダダもれになってますよ……。
エッ君と一緒にうきうきした足取りで前を歩く彼を見ながら、ボクはこうなった経緯(いきさつ)を思い返していた。
「しかし、いくら果を上げているとはいっても、そなたたち三人だけというのはいささか不安が殘るな」
宰相さんがそんなことを言い出したのは、そろそろお暇(いとま)しようかとしていた時の事だった。
というか、ボクがそのことを言い出そうとしていたタイミングを明らかに狙っていたが満載。そして話の容としても、先日ブレードラビットの群れに襲われた際に、じり貧になってしまった我がとしては否定し辛いものだった。
「ですが閣下、依頼の容的に誰でも良いというわけにはまいりませんぞ」
コムステア侯爵が合いの手をれているけど、なんだかわざとらしさがプンプン漂っている気がする。
「そうよな……。おお!ちょうど良い者がいたではないか!」
そう言って振り向いた先にいたのは!エッ君と熾烈な攻防を繰り広げている真っ最中だったミルファシアさんだった。
あ、バルバロイさんは完全に気絶してしまっていたのか、時々エッ君が衝突した時にだけビクンとを震わせていました。
「あのー……、いくらボクたちが頼りないからと言っても、のお荷を押し付けようとするのはどうかと思うんですが」
「いやいや、ちょっと待て!私が親という立場だから信用できないかもしれないが、アレでもあの子は騎士団の若者たちとも渡り合えるだけの技量を持っているのだ。それにクンビーラ公主家のも濃い。祖先の墳墓を探す上で必ず役に立つはずだ!」
必死なじで説得しようとしてくる宰相さんに、思わず「えー?」と言って疑いの目を向けてしまったボクは悪くないはず。
だってエッ君じゃれつかれているミルファシアさんの姿は、とてもじゃないけれどそんなに強そうには見えなかったからだ。
「リュカリュカ殿、今のお姿はアレだがミルファシア様の力量は本だぞ」
「まあ、長時間の正座で足が完全に痺れているはずなのに、あそこまでエッ君のきに対応できているのは凄いと思いますけどね」
とはいえ、勢が勢だから真後ろに回り込まれてしまってはどうにもならない。
走り回るエッ君が痺れた足に當たったのだろう、ミルファシアさんは聲にならない聲を上げて直していた。きっと聲を出しても良い狀態であれば、「ぴぎゃー!」という可らしい悲鳴が聞こえてきたことだろうね。
それにしてもエッ君、構ってくれるのが楽しかったのか、痺れた足にるという當初の目的については完全に忘れ去っていたもよう。
まあ、その結果ミルファシアさんを再起不能に追い詰めるような羽目にならなかったのだから良かったんだけどさ。
「一応聞きますけど、拒否権ってありますか?」
「ないとは言わないが、出來れば使用しないでいてくれると助かる」
「……むような教育ができるとは限りませんよ?」
「それは理解している。だが、なくとも今のままよりはあの子のためになるだろう」
宰相さんとしては、今日のように突発的に何かをやらかす悪癖を直すことさえできればと考えているみたいだ。
まあ、し話してみたところからするとそんなに悪い子というじはしなかったし、自分が行した結果がどうなるのかを考えられるようにさえなれば、十分押さえることができるようになると思う。
「分かりました。でも、この件は貸しにしておきますので」
いくらでも言う事を聞くと思われても困るので、ここは強めに釘を刺しておきます。
「……小國とはいえ仮にも一國の宰相を相手に、堂々と貸しだと宣言する者がいるとは。世の中とは広いものだ」
「無し草でどこにでも行くことのできる冒険者ならでは、とも言えそうですな」
「例え冒険者であっても、その評判は付いて回るものだ。やはり本人の気質というものであろうよ」
そういう人評は本人のいない所でやってください。
それから部屋の隅に待機していた侍さん――いたんだ!?――にミルファシアさんが準備のためという名目で運ばれて行ったり、バルバロイさんがコムステア侯爵に「一から鍛え直してやる」とどこかへドナドナされて行ったりすることになる。
そして會談終了から三十分後、金髪縦巻ロールのが追加されたボクたち一行は、ようやくお城から出ることができたのでした。
- 連載中33 章
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