《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》87 冒険者協會へ移
本命以外の事に時間を取られまくったというのがなんとも言えないところではあるけれど、宰相さんとの會談を終えてやっとのことでお城から出したボクたちは、その足で冒険者協會へと向かっていた。
ミルファ――本人からそう呼んでしいと懇願された――の冒険者登録をしに行くためと、探索目標であるお墓について何かしらの報がないかを探るためだ。
協會の建にって軽く周囲を見回してみたが馴染みの顔は一人もいなかった。どうやら依頼をけて外に出ているみたい。
まあ、ボクとそれなりに仲が良い人なんて限られてくるんだけどさ。
視線が合うだけで難癖をつけるその筋の人みたいに思われそうだから、ボクの姿が見えたからって骨に眼をそらすのは止めて頂きたいと切に願う次第でございますです。
大の大人というか、筋骨隆々な練冒険者っぽい人たちですらそれをやるんだから始末に悪いと思う。
「ふわあ……!。これが冒険者協會の中ですのね」
そんなことを考えてイラッとしていたボクの隣では、ミルファがお上りさんのごとくホールのあちこちを見回していた。
うん。とりあえずそのする乙のような眼差しと口調は止めておこうか。
超絶な外見と相まって、多數の男どもが釘付けになってしまっている。
「はいはい。ミルファ、カウンターに行くよー」
ボクの言葉に反応して、彼の背後に回ったリーヴが強引に押して歩かせ始めた。
すっかりうちの縁の下の力持ち的役回りとなっているね。見た目は綺麗な鎧兜姿なのに、なんか申し訳ない。
「あ、ちょっ!?もうしこのに浸らせてくれても!?」
「それやっていると、いくら時間があっても足りなくなるからまた今度」
主にボクのリアルでの時間がピンチになるからね。
今回のイベントクエストは下手をするとテスト明けに持ち越さなくちゃいけないかもしれないかも……。
往生際の悪いことを口走るミルファにぴしゃりと指導しながら、お晝前で並ぶ人もいなくなったカウンターへと向かう。
「こんにちは」
「あら、リュカリュカちゃん。こんにちは。今日はどんなご用件かしら?」
さすがは協會の顔役だけあって、付のお姉さま方は今日も綺麗です。
「ちょっと々あって、こっちの彼とパーティーを組むことになりまして」
「まあ!リュカリュカちゃんもついにパーティーを組む相手が見つかったのね!」
ちょっとお姉さん!その言い方だとまるでボクがボッチだったみたいじゃないですか!?
そしてホールにたむろっていた冒険者の人たち、「マジで!?」みたいなじで驚くの止めてくれません?
「え?なにこれ?上等だ、表出ろってキレる場面?」
「すんませんでした!!」
カチンときて呟くと、即座に謝罪の大合唱が巻き起こる。一寸の狂いもない斜め四十五度のお辭儀を繰り出してます。
「りゅ、リュカリュカ?あなた一何者なんですの?」
「ただの十等級冒険者。あの連中のことは気にしないように」
その様子に恐れおののいたじで尋ねてくるミルファへの返答が適當なものになってしまったのは仕方がないはず。
それにしてもこの注目を集めた狀態というのは、ミルファの素のことを考えるとよろしくない気がする。ここは先に報収集を進めた方が良さそうな気がしてきた。
「それはともかく、デュランさんはいますか?」
「支部長なら部屋にいると思うけれど、どうかしたの?」
「ちょっと相談事があるんですが、會えますかね?」
「リュカリュカちゃんから相談事って聞くとなんだか不穏なものをじてしまうのだけど……。まあ、いいわ。聞いてきてあげる」
騒なことを言い殘して席を立つお姉さま。
綺麗だし人當たりもいいのだけれど、微妙に口が軽いというかノリが軽いのが、彼たちの欠點だと思う。
そして待つこと數十秒、すぐに面會してくれるということで、お姉さまの案に従って支部長室へとれっつらごー。
その間、ミルファが「支部長とあっさり面談できるなんて……」とこれまた驚いていたけれど、突っ込んでいると時間泥棒に遭遇しそうなので放置しておきます。
自分でいうのも何だけど、段々と彼の扱いが雑になっている気がするなあ……。
「そんな訳で指名依頼をけることになったので、何か報があるなら教えてください」
「うん。ちょっと待とうか、リュカリュカ君」
部屋にって挨拶もそこそこに事を説明してからそう切り出すと、デュランさんから待ったの聲が掛かった。
「どうしたんですか?」
「それはこっちの臺詞だと思うんだがね。ともかく、そんな重大な容をさも世間話をするような態度で話さないでくれないか。ほら、そっちの彼なんて呆気に取られて固まってしまっているじゃないか」
ミルファが直しているのはボクの話のせいではなく、デュランさんと近距離エンカウントしたことによるものなんだけどね。
でも、言ったところで狀況が改善することもないので、ここはスルー一択です。
「これからボクたちとパーティーを組むことになるんだから、嫌でもそのうち慣れますよ。それよりも報です。何か心當たりはありませんか?」
「いきなり言われてもな……。いくら公主の墓とはいえ『三國戦爭』以前のものとなると、破壊し盡くされていても不思議じゃない」
當時、戦いに巻き込まれたいくつかの小規模な都市國家が崩壊してしまったほどの激しい爭いだったという。
「城の方でもごく一部に記録が殘されていただけの極扱いだったようなので、一般的な権力者の墳墓とは違って、目立たないどころか隠されている可能もありますよ。それに戦爭の際に発見されていれば、もっと知られることになったと思うんです」
一方で、だからこそ権力者の埋葬されているお墓なんて見つかったら、資金源として漁り盡くされていたと思うのだ。
「確かにその考えも一理ある、か……。しかし隠されているというのも、それはそれで面倒だな」
「そうなんですよ。だからそれらしい報告だけではなくて、何でもいいので報がないかと思って聞きに來たんです」
「微妙に便利屋か報屋扱いされているような気がするけど、そこは今のところは置いておこうか。だが、せっかくやって來てくれたところすまないが、それらしい報はない……。いや、待てよ……。そういえば砦跡で地下に続く扉のようなものがあったという話をずいぶん昔に聞いたことがあるような……」
おおっと!これはもしかして當たりかしら!?
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