《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》88 目星がついた?
「そこのところ詳しくお願いします!」
手掛かりに繋がりそうな有力報に、思わずを乗り出してしまう。
「落ち著きなさい。で、だ。詳しい話をする以前に、君たちは砦跡についてどのくらいのことを知っているのかね?」
「全くもってさっぱり全然知りません!」
「そこは自慢げにいうところではありませんわ!?」
どーんとを張って言うと、いつの間にか復活していたミルファから突っ込みがった。
「それじゃあ、ミルファ。代わりに説明をお願い」
「え?え?」
「ほらほら。憧れの冒険者協會のデュラン支部長の前で有能アピールするチャンスだよ」
「それ、本人の前で言っちゃいけないやつですわよね!?」
おやおや。ボケ質なのかと思っていたら、意外にも突っ込みもいけるタイプだった?
打てば響くような好反応に、ボクは心で彼に対する評価を上昇させていた。
「リュカリュカ君……。相手が公主様の従姉妹であろうとも遠慮なしなのだね」
「これからパーティーを組む仲間ですからね。早ければこの一件が終わった時點で解散だけど」
「そんな寂しいことは言わないでくださいまし!?」
ひしっとエッ君と抱き合うミルファ。お城での攻防の結果、仲良くなっていたらしい。
強敵、またはライバルと書いて友と読む、というやつだね。
「まあ、冗談はさておき、変に遠慮していていざという時に連攜が上手くいかなかった、なんてことになったら大事ですから。本人からもミルファシア様じゃなくて、ただのミルファとして接してしいと言われているので、パーティーメンバーとして、または同年代の友達として対応している訳ですよ」
「ううむ……。至極真っ當なことを言っているはずなのに、やけに建前っぽく聞こえてしまうのは何故なのだろうか……」
納得がいかないという顔で悩んでしまうデュランさん。
失敬だな。思った以上に反応が良かったため、いぢり過ぎた部分はあるけど、今の言葉自は本心ですよ?
そういえばついスルーしてしまったけれど、デュランさんはミルファの事を知っていたんだね。
「公主の継承権を持つお人だからね。失禮があってはいけないから、顔と名前くらいは一致するようにしているよ」
お偉いさん方との付き合いもあるようだし、冒険者協會の支部長というのもなかなか大変なものであるらしい。
「お世継ぎとなるハインリッヒ様も七つになっておりますし、わたくし自も既にロイとの婚約を発表しておりますから、出來ればさっさと取り下げてしいのですけれど……」
そしてミルファはミルファで公主の継承権を面倒なものとして考えている節があるみたい。
「それはそれとして報の事です。さっき話に出た砦跡って何ですか?」
「北門から出て街道沿いに歩いて一時間くらいの場所にある建造跡のことだ。『三國戦爭』は最終的に、クンビーラとその周辺を三つの國の軍勢が取り囲んで三つの泥沼の爭いを繰り広げた訳なんだが、地理的な関係からまず北部のアキューエリオスからの侵攻に曬されることになったんだよ。それに対応するために造られた砦だったということだ」
「それ、滅茶苦茶な突貫工事だったんじゃないですか?」
街から歩いて一時間なんて目と鼻の先の場所に砦を築くなんて奇妙過ぎる。
アキューエリオスからの進軍にギリギリまで気が付かなかったとか、何かしらの理由がなければ考えられない話だよ。
そしてそうなると、必然的に工事期間もほとんどないという事態になったはずだ。
「その辺りの詳しい資料がないから何とも言えないが、向こうの軍に一當てされた時點でほとんど使いにならなくなったそうだ」
「逆に攻略拠點として使用されそうだったため、撤退時に破壊して回る羽目になったらしいですわ。そのため『三國戦爭』時において、クンビーラとしては最も多くの死傷者を出す戦いとなってしまったと記されていますの」
デュランさんに続いて、ミルファが砦についての詳しい解説を行ってくれる。
「ミルファ、知っていたんだ?」
「たった今思い出した、と言う方が適切ですわね。けれど、これで先ほどの話に信憑が出てまいりましたわ」
「どういうこと?」
「街の外にあるということは、すなわち魔の襲撃に曬され続けているということですわ。ですが、仮にも公主の墓。例え隠されていたとしても、その対策はされていたはず」
ミルファの言わんとすることが段々と分かって來た。
つまり『三國戦爭』初期の頃には、お墓があるとは知られていなくとも、魔が寄り付かない場所があるということは知られていたのだろう。
そしてその地に急造ながら砦を建てたということなのではないか、と彼は予想したのだ、
「なかなかに信憑のある意見だ」
「そうですね。他に目ぼしい手掛かりもないし、まずはここから探索してみることにします」
「個人的には砦跡が當たりだと思うけれど、一応報は集めておくよ。『風卿の証』という騒な噂の出所も気に掛かるから」
噂があるというだけで無駄に行力を発揮する困ったちゃんというのは、どこの世界にもいるらしい。こうした連中は、基本的に事の真偽を一切無視しているから始末に悪い。
そこまで頭が回っていない場合と、理解した上で意図的に無視している場合とに分けられはするけれど、対処の面倒くささから見ると大して違いはなかったりします。
國家を巡る謀劇なんて、一介の冒険者であるボクには手に負えない話だ。ここは素直にデュランさんや宰相さんたちに丸投げすることにしましょう、そうしましょう。
「それじゃあ、後はミルファの冒険者登録をするだけだね」
「おや?まだ終わっていなかったのかね?」
「ちょっと注目を集めてしまいまして。素がバレると騒ぎになりそうだから、一旦時間を開けるという意味もあって、デュランさんとの話を先に終わらせることにしたんですよ」
「ああ、うん。その景が目に浮かぶよ……」
そう言って苦笑するデュランさん。
その後、ホールに戻ったところでまた余計な騒になってしまうだろうということで、結局この場でミルファの冒険者登録を行うことになったのだった。
「これが私の冒険者カード……!」
した面持ちで、ミルファが若葉マークの合いに染められたカードを飽きもせずに見つめ続けている。
「各種數値等は『ステータスカード』から引き継いでいるから大丈夫だとは思うが、大きく違っている部分はなかったかい?」
悩んだ末にミルファとして扱うことに決めたらしいデュランさんから気安い口調で尋ねられると、彼は問題ないとばかりに首を激しく上下させていた。
「新米冒険者なのに既にレベルが十もあるとか、々おかしいと思う……」
そしてボクはというと、ミルファの予想以上な高能さに部屋の隅で落ち込んでいたのだった。
〇ミルファシアのステータス
名 前 : ミルファシア・ハーレイ・クンビーラ
種 族 : ヒューマン
職 業 : ファイター
レベル : 10
HP 60
MP 40
〈筋力〉 8
〈力〉 6
〈敏捷〉 10
〈知〉 7
〈魔力〉 8
〈運〉 5
理攻撃力 14 理防力 18
魔法攻撃力 10 魔法防力 10
〇技能
〔剣技〕〔細剣技〕〔防用短剣技〕〔格闘〕〔二刀流〕〔屬魔法〕
〔雷屬魔法〕〔高等禮儀作法〕〔高等教養〕〔目利き〕
〇裝備 手
・鋼の細剣(耐久値200) : 理攻撃力+4
・鋼の護剣(耐久値250) : 理攻撃力+2 、 理防力+1
〇裝備 防
・金屬補強付き獣皮の軽鎧(耐久値300) : 理防力+4
・丈夫な服 下 (耐久値200) : 理防力+2
・金屬補強付き獣皮の靴 (耐久値300) : 理防力+3
・銀の髪留め (耐久値200) : 理防力+1 、 魔法力+1
・銀のブローチ (耐久値200) : 理防力+1 、 魔法力+1
〇所持金
・2000 デナー
リュカリュカから見えているのは、名前、種族、職業、レベルのみ。
『ステータスカード』というのは各種能力値と所持技能が記載された冒険者カードの劣化版のようなだと思って下さい。
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