《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》94 技能について

「そろそろ裝備を整えてはどうかしら」

「ほえ?」

ミルファがそんなことを言い出したのは、上昇した空腹度を解消させるためにがつがつと朝ご飯を食べている最中のことだった。

エッ君とリーヴ?もちろんイリュージョンな食事風景でしたとも。

ちなみに、ミルファはお家ではなくボクと同じ『猟犬のあくび亭』に宿泊していた。

いわく、「パーティーメンバーなのですから、同じ宿に泊まるのは當たり前のことですわ」ということらしい。

お友達の家にお泊り會をしに行くお子ちゃまのようで、微笑ましく思えたのはです。

「んぐ。……裝備を整えるもなにも、エッ君もリーヴもついこの間新しい武や防を買ったばかりだよ」

口の中でもきゅもきゅしていたスープのを飲み込み、ミルファに答える。使い込むと言えるほど使用していないので、耐久度の方も全く問題ないはずだ。

ちなみに當の二人、というかエッ君はご飯を食べ終えて退屈になったのか、リーヴのに上ったり彼の頭の上からテーブルにジャンプしたりして遊んでいた。

「ち・が・い・ま・す!リュカリュカ、あなたの裝備のことですわ」

「ボクの?」

「ええ。確か昨日の戦闘で四レベルになっていたでしょう?この調子で行けば五レベルに上がるのもすぐですわ。最上級のとまでは言いませんけれど、もうし良いものをに著けるべき頃合いだと思いますの」

の話によると、五レベルというのは裝備を変更する一つの目安になっているのだそうだ。

特に冒険者だとちょうど等級が一つから二つは上がって、『初心者』ではなく『駆け出し』として周囲から認識されるようになるとのこと。

けられる依頼にも、魔の討伐や薬草採取の護衛といったし難易度の高いものが含まれるようになるため、し上の裝備が必要になってくるという訳ですわ」

要するに、そろそろ初心者用裝備からは卒業しろ、ということのようだ。

「うーん、裝備かあ……。安い買いじゃないよね……」

もぐもぐとパンを咀嚼しながら思いにふける。

そんなボクにミルファは何を悩むことがあるのかと怪訝(けげん)な顔をしていた。実は今の今まで忘れていたのだけど、高価な買いということで一つ思い出したことがあったのだ。

「ねえ、ミルファ。技能屋さんってどこにあるの?」

「技能屋?もしかしてそれは『オーブ販売店』のことですの?」

「お、『オーブ販売店』?」

「リュカリュカが言っているのは、技能を取得するためのアイテムを扱っているお店、ですわよね?」

「いえす」

そう、キャラクターメイキングの時にアウラロウラさんとの話で技能を買うことができる、と言っていたことを思い出したのだ。

「それなら、やはり『オーブ販売店』のことですわね。クンビーラで有名なのは、北東地區の貴族街にある『レオン寶石店』と、南西地區に店を構える『ホウク商會』かしら」

「貴族街!?寶石店!?」

「オーブは希な上に造形がしいも多いのですわ。そのため高価で手を出せるのは貴族が大半というのが現狀ですの」

以下、ミルファの解説をまとめ。

オーブとは使用する――破壊するともいう――ことで技能を取得することができる特殊なアイテムで、見た目はヒューマン種の人男の握り拳大の球狀をしているそうだ。

水晶玉のように無き通っていることが多く、魔法技能を包している一部のみがほんのりとその屬を示すが付いている。

その肝心の採取元はというと、何とビックリ、魔のドロップなのだとか。

しかも単にその辺の魔を倒していれば良いというものではなく、クエストやイベントでボスとして登場するような特定の強力な個のみがそのに宿していることがある、というレベルなのだそうだ。

そりゃあ、希っていわれる訳だよね。

ただし、プレイヤーの間では々事が異なってくる。

これは後から調べて知ったことなのだけど、立場上クエストをこなしたりイベントに參加したりすることが多いため、必然的にオーブを所持しているような魔と戦うことが増える。

その結果、オーブを手にする機會も増えるという流れとなっているようなのだ。

はい、そこの「NPCの冒険者にも同じことが言えるのでは?」と思ったあなた!なかなか良いところを突いてきますね。

確かに同じ冒険者であれば同じ流れができてもおかしくはない。と言いたいところなのだけど、ゲームの都合なのか、NPC冒険者たちは特定の街を拠點にしていて、そこから離れることは滅多にない。

つまり、プレイヤーのように行く先々で片っ端からクエストを行うようなことはしないのだ。

また、手にれたオーブを売卻する際、プレイヤーであれば同じプレイヤーに売るという選択肢も取れる。

そして大抵の技能オーブであれば、プレイヤーへと売卻する方が儲けになるのだ。

こうした事もあって、各ワールドでは希な技能オーブも、『異次元都市メイション』であればかなりの頻度で目にすることができるのだった。

「ですがリュカリュカ、確かにオーブを使用すればあっという間に技能を取得することができますが、その分デメリットも存在するということはご存知?」

「え!?デメリットがあるの!?」

「その反応からすると知らなかったようですわね……。オーブを使用して取得した技能は、鍛錬や勉強によって習得したスキルと比較すると、明らかに練度の上昇が遅いのです。さらに練度の最大値も多くなるとされていますの」

逆に練度が多い方がメリットになる〔回復魔法〕などは、練度最大値が低く抑えられているそうだ。

「それと、上位技能や派生技能を取得する事はできないというのもオーブの特徴ですわね。まあ、これは通常の方法で技能を習得する場合にも言えることですが」

一足飛びで楽をする事はできないようになっている、ということだね。そうそう、ここまでのボクたちの會話で気が付いた人もいるかもしれないけれど、『OAW』ではオーブで取得する以外に、訓練や勉強をすることで技能を習得することができるようになっている。

どちらかと言えば、こちらの方が正規の方法という扱いかな。

ただし、本人の適というのが関わっているとか何とかで、習得できるまでの時間がバラバラだという話だ。今のところ、最長で百時間以上掛かったという報告もあるくらいだ。

この長時間に耐えられない人のために、オーブが存在するといっても過言ではないのかもしれない。

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