《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》20話 かぐや姫ゲーム
………
……
「わー!! すごい! グレンさん!! じゃあこれ! 500円玉! これは無理でしょう!」
「ふふふ、朝日ちゃんのお願いならば、俺はやるっす! むぐおおおおお」
グレンが500円玉を人差し指と親指で挾む。探索中でも見たことないほど、必死な形相でそれを押しつぶそうとしていた。
「あははー!! がんばれ、がんばれっ。500円玉握り潰せたら、膝枕してあげるよっ!」
朝日が自分のひざをぽふぽふと叩く。著の上からでもらかそうなのが目に見えた。
可らしい顔してなかなか、グレンへの要求はえげつない。
「朝日ちゃんのひ、ざまくらぁああ!! うおおお、世界に1058人しかいない上級探索者を舐めんなよ!!!
「結構いるね!」
かぐや姫ゲームが続く。
それは言うなれば、やれ子安貝やら火鼠の皮やらを要求したお姫様の逸話をもじった一発蕓大會だった。
味山はグレンのあまりの形相に若干引いていた。
「ふふ、味山さまのご友人、グレン・ウォーカーさまも愉快な方ですね、朝日があんなに楽しそうにしているのは久しぶりです」
「え、あれ楽しそうにしてんの? 見た目の割にSくない?」
味山がつい普段の口調で言葉をらす。
「ふふ…… 味山さま。普段はそのような話し方なのですね」
「あ、いや、すみません。なんか酔っ払っちゃって失禮しました」
「いいえ、なんでしょう、味山さまのその話し方、私は聞いていてとても安心いたしますよ。……かのアレタ・アシュフィールドともそのように話すのですか?」
ぎぎぎぎいい!! 500円玉を潰そうと力を込めるグレンの唸り聲を背景に味山と雨霧が言葉をわす。
「あー…… そうですね。なるべくアイツと話す時は自然を心がけてます。……必要以上に畏ると、へそ曲げるんで」
「あら、ふふ。歴史にその名を刻み、この現代ダンジョンの時代を牽引する英雄が、そのようなーー」
「アシュフィールドは人間ですからね」
雨霧の言葉を、味山は穏やかに、しかしそれ以上を遮るかの如く言葉を上から塗りつぶした。
そのやりとりは、味山と雨霧しか認知していない。
雨霧がわずかに、その涙袋の膨らんだ瞳を見開き、らかく微笑む。
「さようでございますか」
「ええ、そうです」
雨霧が味山の答えを聞き、微笑み。何故だろう、その笑いが何か、どこか安心しているような微笑みに見えた。
「ぐっはー、ダメだあああ、ここで、ここでやんなきゃダメなのに…… 俺は、俺は、無力っす……」
「あっははー、ぶっぶー、じっかんぎれー!! グレンさん、朝日の膝枕はお預けでーす」
「あああああああああ、俺に、俺にもっと力があればあああああ」
あいつ、本気で泣いてね?
畳に四つん這いになり、崩れ落ちているグレンを眺める。
「かっかっかっ、グレエエン、殘念だったなあ。あー、居心地いいわぁ、朝霧さんの膝」
「もう、あんまりそういうこと言わないの、鮫島さん」
そんなグレンを目に、早々に朝霧の膝枕を勝ち取り、ゴロンとそのらかそうな膝にを預けた鮫島が笑う。
「う、うるせえええ!! タツキ、なんでお前のかぐや姫ゲームのお題はあんなに簡単だったんすか?! 朝霧さんの好きな所5個いうって! 簡単すぎでしょ?!」
「ああ? 負け犬の遠吠えは気持ちーなー、おい。グレン、これはかぐや姫ゲームなんだぜえ。の子側からのお題の難易度はよお、そのまま男への好度に決まってるだろうがよお」
「ふふ、なあに、鮫島さん。その言い方じゃあ私が貴方のこと、かなり好きってことじゃないの?」
「違うのか?」
「ううん、正解」
膝枕された狀態で仰向けになり、朝霧と鮫島がいちゃついている。
グレンがその褐の端正な顔を歪ませ、今にもの涙を流しそうな形相で鮫島を睨んでいた。
「もー、グレンさん。音もなく泣かないの! 500玉は無理だったけど。林檎は握り潰せたんだから! はい、あーんしたげる!」
「え! まじ?! やったあああ!」
朝霧がりんごのかけらに爪楊枝を刺してグレンに差し出す。
満面の笑みでそれにグレンが引き寄せられる。本人が満足しているならいいだろう。
「味しい?」
「味しいっす!」
なんか、あれだ。
朝日のようない顔立ちのに、グレンのようや丈夫の男が甘えている所を見ると、犯罪の匂いがしてくる。
味山はこの景をソフィ・M・クラークには見せられないなとぼんやり考えた。
「良かったねえ、グレンさん。それじゃあ最後はーー」
「味山ぁ、お前の番だぜえ」
朝霧と鮫島が、味山を指名した。
鮫島、こいつ。人に膝枕されながら人を指差すとは調子に乗ってやがる。
味山は鮫島の態度にいらつきながら、雨霧の方を見つめる。
どうなる……? 鮫島が言ったようにかぐや姫ゲームの難易度はの子からの好度に依るものならば……
「あ、味山さま…… そんなに熱い瞳で見つめられると、私……」
いける、いや、いけそうだ。
「雨霧さん、かぐや姫ゲームのお題をお願いします」
手心を加えてなどとは言わない。ただ、味山は雨霧を見つめるだけ。頰をりんごのように赤く染めながら、雨霧がおずおずと顔を上げた。
「私は……」
潤んだ瞳、くだもの、それも仙人が食べるような甘い桃に似た匂いがする。
いける!!
雨霧さんは探索者に対する好度が高い。そしてなんか知らんが俺のこともよく知っていた!
味山が探索時と同じくらい頭を回転させ、その沙汰を待った。
「私…… 探索者の方に憧れておりますの。おそろしきかいぶつに立ち向かうその雄々しき方たちに」
おずおずと雨霧が俯きながら、話す。
よし、いける。勝った。この好度の高さならそんな無茶なお題は來ない。
味山が自らの探索の勝利を確信して、笑っーー
「ですので、味山さまにはこの水のった桶に顔を差しれて、15分ほど息止めをして頂きたいのです」
「ゑ」
「えっ」
「えっ」
味山、グレン、鮫島。
男3人が思わず息を揃えて呟いた。
どういう理屈でそうなる? なんで桶?
そんな味山の疑問は誰も答えてくれない。
満面の笑みで、どこからともなく雨霧が島塗の桶を取り出し、長機の上に置いた。
なにそれ、どこから出したの。
味山が目を白黒させながら、桶を眺めていると。
「あー…… 雨ちゃん、今回は味山さんの事気にってそうだから、それはしないと思ったのになー」
「そうねえ、雨霧が男の人にれることなんてないから、大丈夫と思ったけどねえ」
他の人が、またかといわんばかりにため息をつく。
なにが起きているんだ。味山が、その高そうな桶を眺めた。
「朝日、朝霧、私は男の方の好悪によってお題を左右したりはしておりません。味山さまは、素晴らしい男です」
ぴしゃりと雨霧が、友人たちのぼやきに反論した。
「先程も、味山さまは一瞬、私にれそうになった瞬間にも自制を働かせてくださいました。そのような男はなかなかおりません」
あ、どうも。バレてたんすね。味山がぺこりと頭を下げた。
「あはー、まあ確かにー。雨ちゃんをろうとして出になった人多いもんねー。もう2度と來ない人多いし」
朝日がけらけらと笑う。金のツインテールが揺れた。
「ああ、そういうことです。味山さまのような素晴らしい方ならば、あのお星様に選ばれたお方ならば、きっと私のお題など簡単にし遂げて頂けるはずです」
ホワホワした雨霧の雰囲気が、一瞬変わる。
その眼、味山を見つめるその眼の中に、ある種の、あるいは匂いが燈り、香る。
その眼を味山は知っていた。
だけども、それはすぐに鳴りを潛め、消えた。
「さあ、味山さま。私は信じております。貴方こそ、真の探索者。私のちっぽけなお題など簡単に切り抜ける、現代の英傑である、と」
雨霧が立ち上がり、深く頭を下げた。しい黒と金の刺繍、著がなびき、その長い濡れた髪がひらめいた。
「どうぞ、そのお力を、味山さまの探索(試練)をこの淺ましい手弱にお見せくださいまし」
ああ、その眼。
その眼を知っている。
「タ、タダ? これはさすがに…… 15分って。確か世界記録が20分とかそこらじゃなかったすか?」
「なるほどなあ、これが噂の"雨霧姫の無理難題"かあ。そりゃ逆指名される客はいねえわな」
友人達のなだめる聲も、味山にはあまりってこない。
視界にるのはそののしき、濡れた瞳。その奧にある見慣れた。
僅かな期待、失、諦め、嘲り、そして一抹の寂しさが渾然一となったまなざし。
その瞳を凡人は知っている。
「はっ、上等じゃねーか。あんた、なかなかイイ格してんな、雨霧」
「ふふ、そうでしょうか? 私をそう評する方は多くはありません」
味山が普段の口調に、アレタ・アシュフィールドへ向けるのと同じ口調を、雨霧へと向けた。
その眼、雨霧の眼は、よく似ていた。
自分を試し、救い、救われ、そして共に在るあの星と同じ目つきだ。
「雨霧、アンタに1つ聞いておきたいことがある」
「どうぞ、なんでも」
「探索者に力を見せろと言うんだ。報酬がしい。探索には報酬が必要だ」
「もちろんにございます。わたくしのお題、こちらを完遂された暁には、なんでもでございます」
「なんでも?」
「はい、私の出來ることであればなんでもさせて頂きます。もちろん、それが私のに関わることでも」
雨霧が和服の上からでもわかるその扇的なを強調するように、自分の手を這わせる。
グレンと鮫島がそれをガン見して、それぞれの侍るの子に叩かれていた。
「上等だ。吐いた唾は飲ませねーぞ」
「ふふ、雄々しい目。ああ、楽しみです。味山さま」
それだけ言うと雨霧は口を噤む。これ以上の會話は不要とばかりに、ただ、水桶を見つめた。
「グレン、時間計っといてくれ。15分超えたら頭叩いて教えてくれ」
「ま、マジでやるんすか? 15分っすよ」
「こんなもん、大鷲をおびき寄せる餌にされたり、水晶グンタイ蟻の巣に殺蟲剤置きに行かされた時と比べれば余裕だろ」
「……い、言われてみれば。アレ、俺らもしかしてかなり雑に扱われてる?」
「お前ら、苦労してんなあ」
鮫島のつぶやき。
「じゃあ、始めるわ」
味山が桶に顔を近づける。ふわふわと揺れる水が燈りを反した。
「見てろよ、雨霧。その退屈そうな眼をしっかり開いてろ」
「はて…… なんのことやら」
雨霧が笑う。濡れた目が妖しく歪んだのが、味山だけは見えた。
「タダ、マジで無理すんなよ? 酒もってるんすからね。勝ち目がないと思ったらーー」
「安心しろ、グレン。勝ち目はある。河カレーの力を信じろ」
「は?」
グレンの怪訝な顔をほったらかして、ちゃぷり。
味山は冷たい水に顔をつけた。
TIPS€ 水は冷たく、心地よい。お前は一族のために海を渡り、その島國にたどり著いた
TIPS€ キュウセンボウをそのに宿すお前は経験點5を消費することにより"キュウセンボウの大海渡り"を再現することが出來る。使用するか
ほらな、勝ち目は、ある。
「びべすば(YESだ)」
星屑は、水の中で誰にもわからないように笑った。
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2166年。世界初のタイムマシン《TLJ-4300SH》の開発された。 だが、テロ組織“薔薇乃棘(エスピナス・デ・ロサス)”がこれを悪用し、対抗するICPOは“Time Trouble Shooters(通稱T.T.S.)”の立ち上げを宣言した。 T.T.S.內のチーム“ストレートフラッシュ”のNo.2い(かなはじめ)源とNo.3正岡絵美は、薔薇乃棘(エスピナス・デ・ロサス)の手引きで時間跳躍した違法時間跳躍者(クロックスミス)確保の為に時空を超えて奔走する。
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