《【書籍化&】冤罪で死刑にされた男は【略奪】のスキルを得て蘇り復讐を謳歌する【コミカライズ決定】》與えられしスキル
「…………」
気が付くと、俺は見知らぬ空間に立っていた。他に人の気配はない。明るいのか暗いのか、寒いのか暑いのかも分からない。確か俺は死刑を執行されて死んだはず。まさかここがあの世ってやつなのだろうか。
自分のを見てみると、何故かしだけんでいることに気付いた。いや、これはんでいるというより、若返っていると言った方がいいのか? 多分15、6歳くらいの頃に戻っているように見える。
それから一どれくらいの時間が経ったか――不意に目の前の空間が大きく揺らめいた。俺が構えていると、その揺らめきの中から一人のの子が現れた。仮面を付けているので素顔は見えない。おそらく十歳前後だろう。
「初めまして、月坂秋人さん」
俺の名を知っている? いやそんなこと今はどうでもいい。
「ここは一どこなんだ?」
「んー、そうですね。この世とあの世の狹間、といったところでしょうか」
「この世とあの世の狹間……?」
「月坂秋人、年26歳。2010年に三人の人間を殺害したという無実の罪を著せられ死刑判決を下される。そして2015年、死刑執行により死亡。災難な人生でしたね」
まるで全てを見てきたかのようにの子は言った。
「君は何者なんだ? まさか神様ってやつか?」
「そんな高尚な存在ではありませんよ。私は第八次転生杯の〝支配人〟です」
「第八次……なんて?」
「第八次転生杯です。三十年周期で行われる、百名による生き殘りを賭けた闘い。貴方はその參加者に選ばれました。おめでとうございます」
の子はそう言って、俺に拍手を贈った。全く狀況が呑み込めない。
「転生杯について簡単に説明します。まずはご自分の右腕をご覧ください」
言われた通り右腕に目をやると、そこには不気味なで〝88〟という痣が刻まれていた。
「それが參加者の証です。貴方は88番目の參加者、ということになりますね。そして既に転生杯は始まっています」
「……第八次転生杯、だっけ? 悪いけどそんなものに興味はないし、參加するつもりはない。さっさとあの世に送ってくれ」
「まあまあ、落ち著いて最後まで聞いてください。転生杯で生き殘れるのは四名のみ。その四名には〝転生権〟が與えられ、人生を一からやり直す権利を手にすることができるのです」
「何……!?」
人生を一からやり直す。その言葉は俺の心に強く響いた。
「きっと貴方も多くの未練を殘して死んでいったことでしょう。やり直せるものならやり直したいと思っているはずです」
「……當たり前だ」
無意識に拳が震える。あんな死に様で、未練が全くないなど言えるはずがない。
「今の貴方のは私が貸し出した〝仮転生〟であり、使用期限を過ぎると消滅するようになっています。それは他の參加者も同様です。真っ當ながしければ、転生杯で勝ち殘って転生権を手にれるしかないですね」
「……死んだ時から10年ほど若返ってるのは何故なんだ?」
「參加者は子供から老人まで様々ですからね。公平を期すために、全ての參加者は16歳時點でのに補正してあります」
なるほど。そうしないと20代の大人が圧倒的に有利になるから、か。
「転生杯の舞臺は現世。參加者は全員日本人に限定しているので、必然的に舞臺の中心は日本ということになるでしょうね」
「……それはつまり、もう一度現世に戻れるってことか?」
「そうなりますね。しかし先程も言ったように、そのは使用期限を過ぎると消滅するので、それまでの間ということになります」
もう一度、現世に戻れる。ならばあの憎き黒田に復讐することも――
「転生杯には原則的にルールは存在しません。ただ最後の四名になるまで生き殘ればいいだけ。參加している間は何をしようが自由です。無論、貴方の復讐を遂げてもらっても一向に構いません」
まるで俺の心を読んだかのように、の子は言った。
「さて、どうします? これでも尚、あの世に送ってくれと言いますか?」
意地の悪い聞き方だ。だが話を聞いた限りでは、俺にとっても悪い話ではない。ここは口車に乗ってやるとしよう。
「わかった。その転生杯とやらに參加する」
「フフッ。では貴方を第八次転生杯の參加者として、正式に承認します」
の子が恭しく頭を下げる。転生権を手にできるのは百人中たったの四人。厳しい闘いになることは間違いないだろう。
「でも、どうして俺が転生杯とやらの參加者に選ばれたんだ?」
「選出の基準は、憎しみ・怒り・悲しみといった負のを強く抱いて死んでいった者。貴方はその基準に十分達していると判斷しました」
確かに俺は、尋常ではない憎しみを抱きながら死んだ。黒田と真犯人を絶対に呪ってやると。そこで俺に白羽の矢が立ったというわけか。
「要は、最後の四人になるまで他の參加者と殺し合いをしろってことだな?」
「そういうことです。しかしただ殺し合うだけでは味気ないので、參加者全員にそれぞれ一つの〝スキル〟を授けています」
「スキル……?」
の子が右手を広げると、その掌から蛍ののようなものが出現した。
「それは?」
「これから貴方に授けるスキルです。どのような能力か、それは付與する瞬間まで私にも分かりません。ではどうぞ」
そのはの子の手を離れ、俺のの中へと溶け込む。直後、俺の脳裏に〝略奪〟という二文字が浮かんだ。
「略、奪……?」
「ほう、【略奪】ですか。なかなか良い能力を手にれましたね。ちなみにスキルの強さは死んだ時の負のの強さに比例しますから、貴方の死因を考えれば妥當な能力でしょうね」
「……この【略奪】って、どういう能力なんだ?」
「そこまでは教えられません。ま、実際に使ってみたら分かると思いますよ」
そこでふと、俺に一つの推測が浮かび上がってきた。
「まさか俺に罪を著せた真犯人は、參加者の中にいるのか……!?」
誰にも目撃されることなく鍵の掛かった他人の部屋に三人の人間を連れ込んで殺害するなんて所業は、普通の人間にはまず不可能だ。だからこそ俺が犯人だと誰も疑いはしなかった。
そう、普通の人間には。この子から與えられた何らかの能力を使って、俺を陥れたのだとしたら……!? 更に決定的なのは、あの時で壁に描かれていた〝42〟という數字。あれが參加者の痣を示していたのだとしたら……!!
「さあ、知りませんね。たとえ知っていたとしても、私からは何も言えません。ご自分で真相を突き止めるのが一番かと」
「…………」
思わず俺はの子を睨みつけた。
「おっと、私を恨むのは筋違いですよ。確かに私の役目は參加者に能力を授けることですが、それをどのように使うのかはその人次第です。例えば貴方が何者かに包丁で刺されたとして、その包丁を作った人を恨むことはないはずです。違いますか?」
「……分かってるよ。別に恨んじゃいない」
しかしこの言い方だと、真犯人は參加者の中にいると認めてるようなものだな。これで転生杯に參加する理由が一つ増えた。必ず真犯人を見つけ出してやる……!!
「ではこれより貴方を現世に送ります。その時點で貴方の転生杯の始まりです」
「なっ、ちょっと待て! まだ聞きたいことが――」
の子が指を鳴らす。直後に視界が暗転し、俺の意識は途絶えた。
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【TOブックス様より第4巻発売中】【コミカライズ2巻9月発売】 【本編全260話――完結しました】【番外編連載】 ――これは乙女ゲームというシナリオを歪ませる物語です―― 孤児の少女アーリシアは、自分の身體を奪って“ヒロイン”に成り代わろうとする女に襲われ、その時に得た斷片的な知識から、この世界が『剣と魔法の世界』の『乙女ゲーム』の舞臺であることを知る。 得られた知識で真実を知った幼いアーリシアは、乙女ゲームを『くだらない』と切り捨て、“ヒロイン”の運命から逃れるために孤児院を逃げ出した。 自分の命を狙う悪役令嬢。現れる偽のヒロイン。アーリシアは生き抜くために得られた斷片的な知識を基に自己を鍛え上げ、盜賊ギルドや暗殺者ギルドからも恐れられる『最強の暗殺者』へと成長していく。 ※Q:チートはありますか? ※A:主人公にチートはありません。ある意味知識チートとも言えますが、一般的な戦闘能力を駆使して戦います。戦闘に手段は問いません。 ※Q:戀愛要素はありますか? ※A:多少の戀愛要素はございます。攻略対象と関わることもありますが、相手は彼らとは限りません。 ※Q:サバイバルでほのぼの要素はありますか? ※A:人跡未踏の地を開拓して生活向上のようなものではなく、生き殘りの意味でのサバイバルです。かなり殺伐としています。 ※注:主人公の倫理観はかなり薄めです。
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