「ここのお風呂、広くて気持ちいいでしょ？　掃除が大変なのが難點だけど」

「そ、そうだな……」

「もう夕食の準備は済ませてあるから、お風呂から出たらリビングに來て」

「ああ……」

「はまだ痛む？　もしよかったらアタシが洗ってあげようか？」

「なっ……結構だ！」

春香は俺のすぐ隣りで湯船に浸かり、普通に話しかけてくる。端から見れば年頃の男が一緒に浴しているわけだから、とんでもない狀況だ。しかも手をばせば簡単にれられる距離。手をばせば――っていやいや何を考えてるんだ俺は。

俺が必死にを抑え込んでいると、春香がジッと何かを見つめていることに気付いた。その視線の先にあるのは……俺の下半。

「秋人、ちょっと立って！」

「は!?　何だよ突然!?」

「秋人くらいの男の子のアソコがどうなってるのか見てみたいのよ。お湯の中だとハッキリ見えないから立って！」

穢れなき眼差しで春香が言う。純粋というものがこれほど怖ろしいとは。そもそもさっきからずっとって――あっ字が違った。

「だ、駄目に決まってるだろ!!」

「えー!?　秋人だってアタシのを見たんだからいいでしょ！」

「うっ……」

確かにそう言われると、１６歳のの子のというこれ以上にないものを見せてもらっておきながら、こちらが何もしないというのは不公平な気がする。だが……しかし……!!

「ねーいいでしょ？　早く見せなさいよ！」

「う……うおおおおおおおおおお!!」

「あっ、待ちなさいよ秋人！　まだ話は終わってないわよ！」

とうとう堪えられなくなった俺は、全速力で浴室から逃げ出したのであった。

それからし時間を置いて、俺はリビングに向かった。今日の夕飯はカレーか。春香と真冬はまだ食べずに俺を待ってくれていた。

「遅いわよ秋人。何してたの？」

「ん!?　まあ、ちょっとな……」

あんなことがあった後に男がやることなんて一つしかないが、そんなの言えるわけがない。しかし春香の知識のなさには驚いた。まあ６歳の時に死んだのならそういうことを學ぶ機會もなかっただろうし、仕方ないかもしれないが……。

「急に飛び出していったからビックリしちゃったじゃない。そんなにアタシとのお風呂が嫌だったの？」

「い、嫌とかそういう問題じゃなくてだな……」

「なら明日も一緒にっていい？」

「は!?　それは……うーん……」

あ、しまった。真冬にバッチリ聞かれてしまった。案の定真冬は唖然とした顔を浮かべていた。

「……春香、秋人とお風呂にったの？」

「うん、そうだけど」

「何も著ずに、で？」

「お風呂なんだから當然でしょ」

「…………」

ジト目で俺を睨みつける真冬。これ俺が悪いの？

「言っとくけど春香の方からってきたんだからな!?　それに変なことは何も……いや何もなかったと言えば噓になるけど……」

「……変態」

その二文字が俺の心臓を勢いよく貫いた。今回ばかりは否定できない。

「そうだ、明日からは真冬も一緒にどう？　せっかくお風呂が広いんだし、皆でった方が絶対楽しいわよ！」

いやるわけないだろ。真冬は春香と違っても心も１６歳なんだぞ。

「ぜ、絶対無理！　というか春香も秋人と一緒にるのは駄目！」

「えー？　男が一緒のお風呂にるのってそんなにいけないことなの？　赤の他人ならともかく、仲間同士なら問題ないと思うんだけど」

「問題大あり！　仲間だろうと友人だろうと普通１６歳のの子はそんな軽い気持ちで異にを見せたりしない！　春香は年頃のの子らしくもっと恥じらいを持って！」

「恥じらいかー。うーん……」

真冬もこんな風に怒ったりするんだな。當の春香はよく分かってない様子だけど。神年齢６歳のの子に恥じらいを理解しろというのは難しい話だろう。

「とりあえず、ご飯にしないか？」

「そうね。いただきます」

「……いただきます」

お風呂問題を有耶無耶にしたまま、俺達はカレーを食べ始めた。うん、やはり春香の料理は絶品だ。若干ギスギスしてしまったが、カレーを食べ終える頃にはいつもの雰囲気に戻っていた。

「春香、真冬。昨日の話の続きをしていいか？」

スプーンを皿に置いて、俺は切り出した。浴室での出來事で英気を養えたおかげか調は萬全なので、もう昨日みたいに突然の目眩で中斷してしまうことはないと言い切れる。

「……秋人の復讐の話ね？」

「ああ。俺は必ず黒田と真犯人に復讐する。だから二人には協力してほしい」

々あったが、俺の目的は蘇った時から変わらない。復讐を遂げない限り、俺が過去の呪縛から解放されることは永遠にないだろう。リビングで話すのはそぐわない気がしたので、俺達は作戦會議室に場所を移した。