《愚者のフライングダンジョン》4-2 ニート、ヒルミミズ
追い詰められたら本気を出す。ニートは4つのルートのり口を見て回ることにした。
注視したのは地面。要するに自分の足跡だ。
次に調べたのは風の通り道。ダンジョンのり口はひとつしかないのだから風の通り道はひとつしかないはず。
彼の判斷は正しい。足跡を見つければ自分が來た道がわかるし、風上がわかればり口の方向がわかる。二つの要素を合わせればより正確になる。
ただ、ニートはこのダンジョンを舐めすぎている。ここはファンタジーなのだ。
最後のルートを調べ終わった彼は頭を抱えた。
「わからん。どれが正解かわからん……」
どのルートにも足跡が殘っていない。そして、どのルートにも風が吹いている。
いったいどういう構造なのか。ニートは頭の中の教科書が全て信用できなくなった。
変化したニートは以前より覚が鋭くなっている。全から発するを浴びせれば小さな違いまで知覚する。その能力を発揮しても足跡が見つからないのはおかしい。
彼自、新たな覚の全てを理解したわけではないが便利であるのは間違いない。センサーは見たいものだけ目より見て、聞きたいものだけ耳より聞ける。今では他の五よりも発をずっと信用していた。
「まあいいや、総當たりで行こう。1時間くらい歩いたっけ。往復2時間かかるとして、全部外しても約7時間か……ちょっと走ろうかね」
変化後の彼の速力は前回に比べて大きな上昇が見られない。チーターよりし速いくらいの速力で走った。
「前よりスピードが落ちたなあ」
スピードは前より上がっている。適合後初めての速力測定で新幹線レベルのスピードと勘違いしていたからだろう。覚が鋭くなったことで真実を知ってスピードが落ちたようにじたらしい。
適合前と比べたら格段に速くて持久力もあるためニートに不満はない。それに天然のセンサーの働きで空間を把握できるため、ペースを落とさず走れる。地面を這う蟲たちにつまずくこともない。
「こりゃ往復1時間もかからんな。っと!」
ところが走り始めて數分でブレーキをかけた。
「はあ……?」
見たことのない3つの分かれ道が目の前に立ちはだかったのだ。
「ハズレやな。ラッキー!」
きびすを返して全速力でゲジの部屋へ戻る。
ゲジの部屋に帰ってきたら、念のためハズレのルートに目印として蛍の首をひとつ置いた。
ニートは別のルートを直で決めて全速力で走っていく。
走り始めて數分。また同じくらいの距離を走ったら3つの分かれ道が立ちはだかった。
「ハズレやな。あと2回! こりゃ7時間もかからんな。1時間で帰れるぜ」
彼のひとり言が増えてきた。なにか言い知れない不安を抱いたときに無意識で作用する防衛機制だ。
きびすを返してゲジの部屋に走り帰った。
「せっかくだから個數を変えよう」
蛍の首は山ほどあるから贅沢に使える。2番目に調べたルートには2つの首を置いた。
「よーし、これで2択だ! 次で當てるぜ!」
3つ目のルートを全速力で走る。すると、また同じくらいの距離を走ったところで分かれ道が立ちはだかる、かと思いきや。
ついに一本道のルートに出會えた。
「アタリ引いたな!」
嬉しさに呼応して全が強く発した。
あとは道なりを行くだけ。全速力で走っていくと上り坂になった。
「やっと帰れるぜえ」
上り坂を走り始めてからし経ったあとのことだ。
ニートは立ち止まる。背中のセンサーがおかしな空気をじていた。信じがたい報が神経を通じて脳にってくる。
「センサーを信用してないわけやない。信用しとるけど……」
二度見するようにおそるおそる振り返る。見たくない現実がそこにあった。
彼が目にしたのは3つの分かれ道。もしも今のルートが地上への帰り道なら、今ここに3つの分かれ道があるのは絶対にあり得ないことだ。
なぜならゲジのテリトリーへ行く途中に分かれ道を選んだ記憶が一度もないからだ。つまり、これはハズレのルート。
そしておそらくダンジョン攻略の正規ルート。
「なんかおかしいぞ。來た時は分かれ道なんてなかった。ここはハズレのルート。それは間違いない。でも仮に、今までも背後に分かれ道があったとしたら……」
背筋が凍る。でも鳥が立つことはない。ヒトじゃないから。
「頼む。最後のルートが正解であってくれよ」
3択の分かれ道といえど、ついさっき自分が來た道くらいは覚えている。
ゲジの部屋に戻ろうとした瞬間だった。壁からミミズがぬるりと顔を出した。
當然、普通の大きさのミミズではない。トラックをまるごと飲み込めるほど大きなミミズだ。全像は大きすぎて摑めない。最低でも通路を遮斷するくらいの長さがある。
そんな巨大ミミズが襲いかかってきた。
きが単調で躱しやすい攻撃だ。ステップを踏んで大きめに退けば余裕を持って観察できる。
さっきまでニートが居た場所を分厚いゴムタイヤのような筋が叩きつけて跳ね返った。
「土を食ってりゃ生きてける奴が襲いかかって來るっちゅーことは。こいつ食かい。だったらミミズやなくてヒルなんか。でもヒルが土を掘り進めるのはおかしいし」
吸盤のような口をニートに近づいてくる。開いた口にチラリと見える鋭い歯。ミミズとヒルのハイブリッド説が浮上してきた。
「ヒルミミズってことにしとくか。やべーな。こんだけでかいのを倒したら、ちんちんが破裂するぞ」
個名稱はヒルミミズとなった。
無駄に知識がある反面、ニートは迷信を歪曲して覚えてしまっている。ミミズを潰したら部が腫れると本気で信じ込んでいた。
だがそんな呑気なことは言っていられない。用に尾で摑んでいた備中鍬を両手に構え直す。
備中鍬ならヒルミミズの分厚いを貫いてくれると信じて飛びかかった。
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