ニートのターン。周りをうろついてラスボスの狀態を観察した。

ラスボスは肩で息をしている。ニートと違って呼吸が必要らしい。以前焼いた下半の大はまだ完治していない。手の切斷面は焼け溶けて止されている。

現狀分析終了。ニートの判定が下された。

「なんかゲームっぽくないなあ」

ラスボスが想定未満の強さで失したようだ。せっかく用意した網を使えなくて殘念がっている。

するとひらめいたかのように持て余した網の封を解いた。

グルグル巻きに収納された網を解(ほど)いて周囲を走り回り、ラスボスの下半に網を引っ掛けていく。

ラスボスの下半は豪華客船と見間違うほど長くて大きいが網はそれ以上に大きい。重しとなった昆蟲たちの頭部が網を引っ掛ける作業を効率化させてくれる。

「みんなの力があったから完した。これはみんなで摑んだ勝利だ…」

非正規ルートのボスカマキリの生首に話しかけて頭をでる。このカマキリはニートのスパーリングに付き合ってくれたパートナーだ。

制作期間にして２週間かけた網がラスボスの下半をがんじがらめにした。

網の上から粘著を被せることで更に獲のきを阻害できる。

事前に用意した道がちゃんと機能したことが嬉しくてするニート。まだ勝負は終わってないというのに油斷しまくりである。

ただ、そんな油斷が許されるほどに網というのは強力な道だ。網に捕獲されたら逃げられない。

ラスボスのターン。

全が固められていく様子をなすもなく眺めるしかない無力。

垂れ下がった手を持ち上げたくても微だにしない。

唯一く脳で打開策を思いつかなければ殺される。なぜかトドメを刺されないが至近距離で線を撃たれるのも時間の問題だ。

いまかせるのは脳神経だけ。視覚聴覚の代わりを務める発だけが信頼できる唯一の。

まるで自分が殺される瞬間を見屆けるためだけに殘されたようだ。じわじわと弱るのを待つる怪の殘に心から怯える。

ねばねばした網で下半は全て固められ、る怪は網を抱えて上半に上がってきた。

鎌の手の元に何かを巻きつけるような仕草をすると、ストンと手が切れて落下した。

８本あるうちの手が殘り６本になる。る怪はペースを落とさずに登って、手をひとつひとつ切り落としていった。

ついに最後の手が切り落とされ、首に手がかかる。

「さすがにミミズっぽいもんは食えんかなあ。イカと思えばいけるか？」

センサーがそんな言葉を脳に伝えた。その言葉を聞いて安心した。

る怪は食べるために殺すのだ。

魔石の有害質で構されたを食べれば一部例外のモンスターを除いて死ぬ。

（私のは猛毒だ）

このる怪は記憶にある例外モンスターの突然変異とは思えない。

つまり、私のを食えば先のエリアへは進めないということだ。

「キャハハハハハハハハハハハハ！！」

「うわ！　こっわ！　なんやねんこいつ」

笑うしかない。笑えたことを嬉しく思う。

笑って死ねて幸せだ。る怪も一緒に行こう。

「鎌みたいに味いといいけどなあ。ちょっと怖くなってきたぜ」

「キャハハハハ……ハァ？」

え？　なにこいつ、私の食べたの？

「じゃあな！」

ブチンと切れる音がして頭部が落下していく。

（こいつは、こいつは今殺さないとダメだ！）

チャンスは一度きり、る怪が頭部を拾いにきた瞬間しかない。

（できるかはわからないが、どこかこいつは私のに似ている。ならば私にもあのの熱を出せる可能がある！）

唯一、かせる発。この一點にだけ集中して最大出力で放出すれば願いが葉うかもしれない。

ニートのターン。落下するラスボスの頭を粘著糸でキャッチする。

「おっと、あっぶね。らかいなら落としちゃダメじゃん」

ラスボスの頭部はニートの長の５倍ある。両手では抱えきれない。それを糸で繋げてラスボスの首に吊るした。

宙ぶらりんに揺れる頭部がまだを失っていない。

「もしかして、首落としてもまだ生きてんのか」

足場がなく腹部のトゲにぶら下がるニート。背中の大手をばし、ブラブラと揺れるラスボスの頭部を大手で止めた。

「まあ、団子を取れば死ぬか」

頭部の斷面に大手を潛り込ませた次の瞬間！

ミミズのような頭が強いを放った。が一つのミミズに集束していく。が焼ける音と共に照された熱線がニートのに命中した。

「どの辺かなあ。あったあった。はい、これでスイッチオフ」

熱線が徐々にを失っていく。が消えたミミズ頭は隅(すみ)から隅まで焼け焦げていた。

「あちゃー！　食えるかなこれは……」

【戦闘終了】

ダンジョンクリア！

おめでとうニート！　君が最初の踏破者だ！