《愚者のフライングダンジョン》10-2 俺、酸っぱい思い出

チェリーはあれから何度もボス部屋にチャレンジした。たぶん婆ちゃん家への帰り道からズレてると思うけど、闘技場からどんどん離れてるのは間違いない。

そういえば正規ルートとは別のルートを最後まで進んだことがなかった。俺ってRPGでは寄り道を全部埋めるタイプだから今の狀況が結構楽しい。

それにチェリーというパートナーがそばにいる。ベロチューの仲だよ。一緒にいて嬉しくないわけがない。

そしてまた新しいボス部屋へと辿り著く。

今度のボスは手出ししなくても良さそうだ。なにせ相手は巨大カマキリ。見た目通りなら毒がない。これまでのボスはサイズ違いなだけで俺が出會ってきた毒持ちモンスターばかりだった。

毒持ちでも小さいサイズならチェリーだけで余裕で倒せる、と思いきや一戦一戦なにかしら負傷している。

毒を食らったらマズいと思って敵が噛みつきの仕草を見せた瞬間に參戦するけど、そのたびにチェリーから怒られるようになった。

でもご飯を食べたら仲直り。俺は料理だけして食事を我慢する。

食わずに待っていれば向こうからベロチューをしてくれる。そんな行パターンを見つけた。

酸っぱいゲロと引き換えにベロチューが手にる。チェリーの前では二度と強い溶解でうがいはしない。

ここ數回の食事は団子とチェリーのゲロだけだがとても満足している。そもそもほとんどの時間を団子だけで生き抜いてきたから今は栄養過多なくらいだ。

最初はゲロとしか思えなかったけど、慣れるとオレンジジュースみたいにじてくるぜ。たっぷりだから尚更おいしいのさ。

今回のボス戦もまずは調理の準備からる。

カマキリとチェリーの戦いはどちらも斬撃を主な攻撃手段として使っていた。

カマキリの得意技といえば鎌による摑み技だと思う。しかし一度も摑み技を使う様子はみせない。まっすぐにばした鎌を叩きつけて引き、鋭利なトゲで地面を切り裂いている。現実のカマキリとは一風変わった攻撃方法。

鎌と薙刀がつば競り合う。切れ味は薙刀の方が上だけど、薙刀の刃が鎌のトゲに引っかかって食い込みもしない。

正面から打ち合うのをやめたのか、チェリーはカマキリを中心に円を描くように橫移する。

カマキリはカマキリで防が薄い橫っ腹を守るために回転し、チェリーの正面に立つような位置取りをする。

グルグルグルグル両者回り続ける直狀態。

「どっちも三半規管が強いねえ。あんなに回ったらまっすぐ走れないよ」

カマキリのきがれた。その隙をチェリーは見逃さない。リーチを活かした薙刀が後ろ腳を一本斬り落とす。

巨大カマキリは攻撃特化で防力が紙だから、生命線の腳を一本失うだけで崩れる。

そっからはもう武と云うより舞。薙刀をやたらめったら振り回して解ショーが始まった。

「勝者! はみ出し者のチェリー! 賞品は蟷螂の蒸し焼きと鎌の赤外線焼きでーす」

「チュリイイイイイイイ!」

「初めて無傷で倒したやん! やったなチェリー!」

チェリーがノコギリを取り出してギコギコ。ギコギコ。

おお、チェリーが自分で解しよるわ。よっぽど嬉しかったんやな。

「チュッ!」

兜を外してドヤ顔を見せた。めっちゃ可いとこあるやん。

「大やったな。すごいぞチェリー。ただ解がちょっといわ。俺が、あいたっ!」

「シャッ!」

叩かれた。しかも薙刀で。

「ごめんごめん。じゃあ任せるわ。切ったら持っておいで」

薙刀で叩かなくたっていいじゃんね。下手すりゃ死ぬよ。まあ今のは俺が悪いけど。

ひゅっ!

おわっ。なんか飛んできた。うん。カマキリの頭だ。チェリーにこれは食えないな。

チェリーは食でボスの大部分を殘す。腳ばかりを食べてるし、意図的にらかい可食部を殘してるじがする。

俺が食おうとしたら怒られるからもう食わない。

もしかしたら仲間のために置いているのかもしれない。

今回もらかい部分は殘してる。ゲロチューの後にはカマキリの腹の卵が殘されていた。チェリーはこれに手をつけずに離れて寢り始めた。

パートナーとなってから初めての夜だ。実際の時間は知らないけど。チェリーの時計は夜と言っている。

「よーし。貞の底力ってやつを見せてやるぜ」

まずは我慢さ。今日のチェリーはたくさんの戦いで疲れただろうから無理矢理には抱かない。絶対そのあと嫌われるからね。

酔い潰してから強するみたいなの始め方は絶対にごめんなんだよ。

贈りから始める王道が一番。

「俺は回復タイプじゃねえからな。サポートに回るならこれくらいしないとな」

とりあえず添い寢だ。鎧の関節部分を手でみつつ、八重歯で調整した神経毒を舌で塗り付ける。

でチェリーをじながら、俺とチェリーのを重ねて大きさ測っていく。

は大きく出てないけど太ももが大きくてエッチだ。のマリア、のチェリーだ。どっちもカチカチ。

チェリーも後から長するかもしれないけど、今の型で抜け殻スーツを著せてやろう。

「くびれも再現できてるな。よし。俺の皮もエッチだ。これならみ応えもありそうだぞ」

マリアと違ってき回るから各関節部分は出させておく。きにくいという理由で怒られたらたまらない。

兜を外してチェリーの口から神経毒を流し込む。抜け殻スーツを著せてる途中で起きられたらズレ防止の接著が変なところにつくかも知れないし。

「そういや、兜は外せても鎧は同化してんだな。要所要所の厚みを増やしておいて正解だったぜ。これならめる」

抜け殻スーツを著せたら隙間から手をり込ませる。ズレなくなるように溶解で傷だらけの鎧に新しいを彫りながら接著を流し込む。抜け殻スーツを変形させて隙間がなくなるイメージで蟻の鎧と合させていく。

これはもう二度とげない。起きたら別人だぜチェリーちゃん。

鎧にピッタリ張り付いた抜け殻スーツの出來上がり。クッション抜群の無力パワードスーツだ。邪魔な手はの厚みを足すために使った。前のよりが大きいよ。

抱き枕としても寢心地は抜群。抱きつけば弾力が跳ね返ってくる。

「これでを守れるやろ。存分に戦うがよろしい」

「ぐがー…ぐがー…」

ガーガー、イビキを立てている。俺を信頼してる証拠やん。こんなに気を許してくれる相手はウチの貓たちとチェリーだけだよ。うそうそ神経毒が効いているだけ。

尾をってると徐々にびてきた。睡眠中に長するんか。結構食べたもんな。自分の重よりも食べてるやろ。ように収めたな。

ああそうか、ゲロしてるもんな。ゲロした後はそんなに食ってないし。つーか、胃酸の殘量大丈夫かよ。ちゃんと消化できてんのかな。

チェリーの尾を見てるとムラムラする。いつから尾で興するようになったんだろう。素質があったのかな。

「はぁ、はぁ、ちょっとだけ。ちょっとだけやから」

うん。この子、髪を洗った方がいいかもしれん。すっごい香ばしい匂いがする。そういうところは人間を再現しなくていいのに。

「はふ、はふ、くちゃい。くっさあ。くっさあ。あ、くっさあ。はふ、はふ、くっさあ。はあ、はあ、くっさあ。ふぅ」

よし。目的は達できなかった。よく頑張った俺の理。よくぞを抑えた。

産まれてから一度も水浴びしてないんやろうな。だってこのなか、なかなか水場が見つからなかったし。ん?

カサカサ。カサカサ。

「なんか音がするな。侵者か?」

なんか黒いのがカマキリの死骸に群がってるな。全然気づかなかった。

「おい。チェリー起きろ。なんかおるぞ」

全然起きやしない。神経毒のせいだ。

仕方ない。俺ひとりでやるしかねえ。念のためチェリーには兜を被せておいて、と。

「やいやいやい。やいやいやーい。そのに手を出すなー。うちのお姫様の所有だぜ」

黒くて巨大な生。これには見覚えがあった。こいつらは……蟻だ。

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