《愚者のフライングダンジョン》11-3 俺、辿るロープ

のぼり坂を駆け上がり、ホタルのと現世の闇の境界で止まる。怖いぜ。この先を通れなかったときが怖いぜ。

足を引きずって進む彼。その先に怪が立ち塞がった。俺だ。

「へっへっへ、置いてかないでくれよお。一生一緒に暮らそうぜえ」

「どいてください」

「行きたいなあ? 行かせねえよお。どかせてみ…」

「チェストおおおおお!!!」

「痛ったああああ!」

言い終わる前から振りかぶってやんの。

「あれ。通れる。やったあああああああ!」

「マジですか。本當に人間なの?

でも、それでもモンスターと変わらない……」

いやー。これで帰れるぜ。いやー、長かった。いったいどれだけ時間が経ったのか。

「これまでの報をまとめたところ、元々人間だというあなたの訴えを認めることにしました。

私が所持する報と重なる部分がありますし、モンスターにしては想像力がかですしね」

「ほんとあざっした。よかったら名前教えてください。俺は…」

「ケーちゃん、ですよね。知ってます。私はウヅキと申します」

「あ、はい。ウヅキさん。いい名前っすね」

「ありがとうございます。一発毆らせてもらいますね」

「えっ、なん、ぐふぅ!」

毆ったね。暴力ヒロインはオタクけしないのに!

「ここにはサツキさんとヤヨイ先輩の3人で來ました。無謀にダンジョンアタックしたあなたを捜索するために。その2人は2日前にダンジョンで行方不明になりました。

怪我をした私を逃すために囮になって! 私のせいで2人が! いいえ、あなたのせいです。あなたが全ての元兇です」

彌生に卯月に皐月って和風月名よな。なんだ偽名かい。やっぱり信用されてないな。こりゃもう脈なしや。俺を見る目に恨みがこもってら。

しかし、俺のためにかあ。そうかそうか。

「うっわ。どうしよう。迷うなあ。中に戻るか家に帰るか。あの分かれ道ではぐれたの?」

「そうですよ。責任をじてるんですか?」

「責任かー。俺の一番嫌いな言葉やな。でもほっとけないしなあ。俺のせい、か」

「私はあなたの救助に反対していました。ここのモンスターのはとても食べられるような分ではありませんし、深くまで進むのは危険だから捜索を打ち切ろうって。どうせあなたは骨まで食べられてるって。でも2人は止まりませんでした」

「その2人ってどちらもっすか?」

「はい? そうですが」

よし。あっちのほうが脈がありそうだ。

「もし、あなたの実力が本ならどうか2人の救助に協力してください。食料の備蓄がもうすぐ盡きるはずです。急がないと死んでしまう!」

「うす。助けにいってきます」

「私には重くて持っていけませんでしたが、分厚いシリコンのような皮が落ちてるところで別れました。できればそれも持ち帰ってきてください。一枚しかありませんが、あれさえあれば大型モンスターが寄り付かないんです」

「うす」

行きは一本道だし、ビニール紐を辿る必要がないから全速力で行けるな。ビニール紐が破けても俺の糸は切れないし。よかった、ずっと糸を出し続けてよかったぁ。

重を増やして手足の指と手をばす。大手を細くして壁にれたら準備おっけー。

「3、2、1、ゴー!」

! 踵とから破壊線! 急発進!

尾でバランスを取りながら下り坂を速で落ちていく。

ボトボトと後ろでホタルが剝がれてるようだ。すまんな。

よし到著。さっきの分かれ道まで數分たらずで到達したぜ。

「問題はこっからやな。あっためてきた新技を使うときがきたか」

団子を食うたびに俺の姿は変化してきたけど、髪のをもらって以來それがなくなった。その代わりに技が増えてる。今、その技を使うときが來た。

「のびろ手! そしてを與えたまえ!」

からばした手はる。俺のが當たるところにはセンサーが反応する。

からのように生やした手をどんどんばしていく。

どこまでばせるかの検証も兼ねて探知範囲を広げていく。

「すげえびるな。限界が來ねぇよ」

手のを強めてセンサーの範囲を広げる。効率よく探索できてるのになかなか人の痕跡が見つからない。

いや、手がかりが1つ見つかった。分厚い皮だ。

「ってこれ俺の抜け殻じゃん。ここではぐれたのか」

抜け殻側のルート付近を集中して調べる。他のルートも継続して手をばす。まだまだ手は出せる。手から枝分かれさせて新しい手をばす。

「こんだけ広い範囲探れるならレスキュー隊に使ってもらえるやん。帰ったらサーチ能力を売りに行こう」

お、見つけた。2人いる。片方はプロレスラー並みのマッチョやな。もう片方はボクサー並みか。

一応、他の手を下げよう。つーか、全然スタミナが切れないな。どうなってんだ俺の

「いった! 叩かれた! 痛いな! 痛い! なんなん! ちょっと一旦この手も下げよう! 代わりに糸を殘せばいいよな! いってえ!」

抜け殻は持ち帰らなくていいや。つーか俺って蟲除け効果あるんか。チェリーはよく側(そば)に居てくれたな。

すっごい速さで手を戻したからバチンバチンと顔やらやらに當たる當たる。頭からばさなきゃよかった。

ひときわ太い糸を殘しながら最後の手が戻ってきた。

手に手榴弾が括り付けてある。でもピンがついたままだ。あ、今外れた。

カチッ……

ドカーン!

「ごほっ…ごほっ…ウヅキさんといい、あの2人といい。持ってるなんて何者じゃい」

こりゃあ〖スーパー黃人〗のままで行った方が良さそうやな。この狀態なら痛みをじにくい。

太い糸を辿って軽く走る。本気で走ったら急には止まれない。進路上にられたら何をしても人を撥(は)ねる自信がある。助けに來てくれた2人を轢(ひ)き殺す事態は絶対に避けたい。

糸を辿っていくと、先の方から微かに金屬がれ合う音が聞こえた。こっちへ近づいている。

「ほらな、本気で走らなくて良かったぜ」

糸を辿っているようだし、ここで待っていれば向こうから來るだろう。

そう思ってたんだけど全然來ない。微かに話し聲が聞こえるから離れてはいないんだが。

カランカランと缶が投げ込まれた。なんだこりゃ。スプレー缶だ。

ラベルには殺蟲剤の文字。ペダルで永続スイッチをれる霧タイプの殺蟲剤だ。部屋中の蟲をまるごと駆除できる優れもの。

これ、すごく人に悪いやつ。こんなものは黒紫食いだ。

「おえっ! まず! おえっ! おえええ」

味覚を切りたい。なにこれクソまずい。いままで味しいものばかり食べてきたんやな。殺蟲剤がここまで不味いとは思わんかった。ヒルミミズのうんこのほうがマシだ。すごく健康に悪い。

まさかの黒紫食いにデメリット発見。口の中なら鼻をつまんで味覚を抑えられるけど、黒紫食いだとダイレクトに味わってしまうから抑えようがない。早急に味覚調整機能を足さないと外に出てから後悔しそうだ。

もう一度手を全方向にばしてスルーしていたモンスターたちを黒紫食いしていく。小型モンスターはホタルが味い。大型モンスターはボスが味い。に殘った殺蟲剤の味を薄めつつ団子を回収していく。

もちろん人間がいるルートにはばさない。間違って3人の誰かがれてしまうと危険だ。〖黒紫のオーラ〗に食べものを選ぶ機能は無い。あらかじめ覆う場所を決めないとれた部分を即座に食っちまう。ミスって足場を食べちまうくらい危ない力だ。

つーか人間って味しいのかな。

よーし、帰ったら試食しよ。なんてね。

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