《家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら》プロローグ
「約束通り、迎えに來てやったぞ。お姫様」
わたしの大好きな絵本のセリフに似た言葉を、ひどく意地悪な笑みを浮かべ、彼は言ってのけた。
──くだらないだとか、子供くさいだとか言ってバカにしながらも、結局しっかり読んでいたらしい。
そしてそれを今、この狀況で言うなんて反則だ。嬉しさとしさでじわりと涙が滲み、視界がぼやけていく。
「……おそい、よ」
「そこはお待ちしてました、だろ」
今やわたしよりも頭ひとつぶん背の高い彼は、再び絵本の中のセリフを口にすると、子供のような笑みを浮かべた。
き通った蒼い瞳をらかく細める姿は、泣きたいくらいに綺麗だった。腰まである絹のような銀髪が時折風に揺れ、人間離れした彼のしさを引き立てていて。
まるで神様みたいだとすら、思ってしまう。
ぽろぽろと涙が溢れ出したわたしに、「本當、まだまだガキだな」なんて言った彼は、ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、長い指で涙をひどく優しい手つきで拭ってくれた。
「遅くなって、悪かった」
初めて會った頃には想像もつかなかった、その優しい表と聲に、わたしは余計に涙が止まらない。
謝ることだって、何よりも苦手で嫌いだったくせに。
「っエル、無事で、よかった。會いたかった」
「知ってる」
素直な気持ちを告げれば、いつの間にかきつくきつく抱きしめられていて。懐かしい溫と匂いに、また涙が出る。
「……俺もずっと、會いたかった」
やがて、ひどく優しい聲でそう呟いた彼さえ傍に居てくれれば、わたしにはもう、怖いものなんてない気がした。
【洞窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~
【本作書籍版1~2巻、MFブックス様より発売中】 【コミックウォーカーで、出店宇生先生によるコミカライズ連載中】 【コミック1巻~2巻、MFC様より発売中】 サンファレス王國の王子ヒールは、【洞窟王】という不遇な紋章を得て生まれた。 その紋章のせいで、ついには父である王によって孤島の領主に左遷させられる。 そこは當然領民もいない、草木も生えない、小さな洞窟が一つの孤島であった。 だが、ヒールが洞窟の中でピッケルを握った瞬間、【洞窟王】の紋章が発動する。 その効果は、採掘に特化し、様々な鉱石を効率よく取れるものだった。 島で取れる鉱石の中には、魔力を増やす石や、壽命を延ばすような石もあって…… ヒールはすっかり採掘に熱中し、いつのまにか最強の國家をつくりあげてしまうのであった。 (舊題:追放されたので洞窟掘りまくってたら、いつのまにか最強賢者になってて、最強國家ができてました)
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