《家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら》足りないものを、埋めていく 2
エルが伯爵家に來てから二週間が経った、ある日。
「わたしは來年、絶対に魔法學園に學します」
「へえ」
そんなわたしの宣言を、ソファに寢転がっているエルは興味なさげに右から左に聞き流し、クッキーを齧っている。
「これ、もっとないのか」
「もうないよ。それ、高いし」
この國では15歳になると魔法が使える者は皆、無償で魔法學園に通うことができるのだ。そして三年間魔法を學び卒業さえすれば、將來仕事に困ることはないと言われている。
だからこそわたしは、必ずや魔法學園を卒業しなければならない。そうすればこの家から逃げ出した後も仕事を見つけられるだろうし、なんとか暮らしていけるだろう。
とは言え、今はまだ7月。來年の4月まで、まだまだ時間はある。學試験は年明けだ。試験とは言っても、魔法が使えるかどうかの簡単なチェックらしいけれど。
「エルも、魔法使いになれたらいいね」
「はっ」
エルはそんなわたしの発言を鼻で笑い飛ばすと、やがて最後のひとつを口にれ、わたしを見た。
「あんな所に行かなくたって、最低限の魔法は使えるだろ」
「えっ、そうなの……? わたしは全然使えないどころか、そもそも自分が何の屬かも知らないんだけど」
たまに手のひらからポワワンと謎のが出るくらいで、いまいち使い方も何も分かっていないのだ。
だからこそ、魔法學園で一生懸命勉強し、立派な魔法使いを目指すつもりでいたのだけれど。
「火と」
「えっ?」
「お前は火と魔法使いだ」
エルは大きな欠をしながら、そう呟いた。
「な、なんでわかるの?」
「見ればわかる」
そう言えばエルは以前、自の眼は特別だと言っていた。だからと言って、本當に見ただけでわかるものなのだろうか。
そもそも、屬を二つ持っているなんてかなり珍しいと聞く。エルのことを疑うわけではないけれど、信じられない。
「そういやお前、その腕どうした?」
「あ、これは多分サマンサに突き飛ばされた時かな」
指差したわたしの腕には、割と大きなあざがある。エルはじっとわたしの腕を見つめた後、口を開いた。
「……魔法の使い方、教えてやろうか」
「えっ? だってエルの歳じゃ、」
「あのな、俺は誰よりも───だぞ。あー、……とにかく、魔法は使えないけど、お前ごときに教えるくらいはできる」
突然そんなことを言い出したエルに、わたしは驚きを隠せない。そしてやっぱり、謎のもやがかかる部分も気になる。
けれど一番は、自の得にならないことなど何一つしないと思っていたエルが、そんな提案をしてきたことが何よりも驚きだった。まさかもう変化が、とし期待したのだけれど。
「そのかわり、このクッキーを沢山用意しろ。明日中」
「わ、わかった」
「渉立だな」
どうやら、ただクッキーを食べたかっただけらしい。
エルはそう言うと立ち上がり、何故かわたしの機の引き出しから、小さなナイフを取り出してきた。何故そこにあるのを知っているのかはさておき、何に使うのだろうか。
そもそも12歳にもなっていないエルが、魔法の使い方を教えてくれるとは一、どういうことなんだろう。
不思議に思いながら見ていると、エルは突然、ナイフで自の細く白い腕をざっくりと切りつけた。結構な勢いでが流れていき、わたしは慌ててエルに駆け寄る。
「っエル、なにして……!」
「聲でかい、うるさい。ほら、始めるぞ」
エルはそう言うと、揺するわたしの右手を摑み、が流れている彼の腕にかざす形にさせた。
「ほら、治癒魔法を使え」
「そ、そんなこと言ったって……」
こんなめちゃくちゃな指導の仕方があるだろうか。
「心臓から流れてくる魔力をじながら、俺の腕が元どおりになるイメージをしろ」
「…………っ」
「魔力で傷口を包んで、編むような覚で」
そんなことを言われたって、數分前に屬を知ったばかりのわたしに、いきなり出來るはずなんてない。習うより慣れろとはよく言うけれど、これは流石に無茶苦茶だ。
その上、たらたらと流れていくを見ているだけで、余計に集中できなくなる。
エルはそんなわたしをじっと見つめると、言った。
「お前なら出來る。この俺が保証する」
エルのその言葉は何故か、妙な説得力があって。
き通るような青い瞳を見つめているうちに、不思議としずつ、落ち著いていくのがわかる。
「……も、元通りになる、イメージ」
「そ」
小さく深呼吸したわたしは、先程エルに言われたことを思い出し、言われた通りにイメージしていく。
そうしているうちに、エルの腕はらかなに包まれていき、あっという間に傷は綺麗に塞がっていた。それを確認したわたしは、その場にへたり込む。
──本當に、魔法が使えてしまった。けれどそれよりも、無事にエルの傷を治せたことに、ひたすら安堵した。
「ほら、できたじゃん。おつかれ」
「…………」
「約束通り、クッキー用意しとけよ」
そう言って、再びソファに向かうエルの腕を摑む。
「……何だよ、なんか文句あんのか」
「ねえ、エル。お願いだからもう、自分を傷付けるようなことは絶対にしないで」
「は? 治ったんだからいいだろ」
「それでも、やめて。お願い」
そう言ってエルのガラス玉のような碧眼を見つめる。エルは本當に訳がわからないといった表で、わたしを見ていた。
「俺が怪我したところで、お前には関係ないだろ」
「あるよ。だってエルはもう、わたしの家族だもの。だからそんなことはしてしくない」
「……家族?」
「うん」
「そんなもの、俺にはいないし、いらない」
エルはそう言うとわたしの手を振り払い、そのまま部屋を出て行ってしまったのだった。
HoodMaker:幼馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>
受験戦爭を乗り越え、再會した幼馴染五人は學生起業を始め、なんとその勢いのまま事務所まで手に入れてしまう。売り上げは一體どこまで伸びるのか。そして彼らが始めた起業とは――。 ――そんな中。仲間やバイト先の先輩から、アニメや漫畫、ギャルゲに影響を受けた禮夢は段々と「創作」に魅かれていく。 人は何故創造するのだろうか。何故それを求めるのだろうか。 そんな人に話す程でもなく、でも胸の中に殘り続ける疑問に答える人間が現れる。 名を「雪代雨(ゆきしろ あめ)」 彼女は問う。 —もし一つ願いが葉うのなら何が欲しい— これは自分の中の価値観と向き合う少年少女の物語。
8 191白雪姫の継母に転生してしまいましたが、これって悪役令嬢ものですか?
主人公のソシエは森で気を失っているたところを若き王に助けられる。王はソシエを見初めて結婚を申し込むが、ソシエには記憶がなかった。 一方、ミラーと名乗る魔法使いがソシエに耳打ちする。「あなたは私の魔術の師匠です。すべては王に取り入るための策略だったのに、覚えていないのですか? まあいい、これでこの國は私たちのものです」 王がソシエを気に入ったのも、魔法の効果らしいが……。 王には前妻の殘した一人娘がいた。その名はスノーホワイト。どうもここは白雪姫の世界らしい。
8 103裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚
親友に裏切られて死んだと思った主人公が目を覚ますとそこは異世界だった。 生きるために冒険者となり、裏切られることを恐れてソロでの活動を始めるが、すぐにソロでの限界を感じる。 そんなとき、奴隷商に裏切れない奴隷を勧められ、とりあえず見てみることにして、ついて行った先で出會ったのは傷だらけの幼女。 そこから主人公と奴隷たちの冒険が始まった。 主人公の性格がぶっ飛んでいると感じる方がいるようなので、閲覧注意! プロローグは長いので流し読み推奨。 ※ロリハー期待してる方はたぶん望んでいるものとは違うので注意 この作品は『小説家になろう』で上げている作品です。あとマグネットとカクヨムにも投稿始めました。 略稱は『裏魔奴(うらまぬ)』でよろしくお願いします!
8 188アサシン
俺の名は加藤真司、表向きはどこにでもいる普通のサラリーマンだが裏の顔は腕利きの殺し屋だった。
8 168僕は彼女に脅迫されて……る?
僕は彼女の秘密を知ってしまい。何故か脅迫されることになった。 「私はあなたに秘密を握られて脅迫されるのね?」 「僕はそんなことしないって」 「あんなことやこんなことを要求する気でしょ?この変態!」 「だからしないって!」 「ここにカメラがあるの。意味が分かる?」 「分かんないけど」 「あなたが私の秘密をしった時の映像よ。これを流出されたくなかったら……」 「え、もしかして僕脅迫されてる?」 「この映像見かたを変えたり、私が編集したら……」 「ごめんなさい!やめてください!」 こうして僕は脅迫されることになった。あれ? 不定期更新です。內容は健全のつもりです。
8 68余命宣告された俺は、召喚された異世界で美少女達と共に世界を救います
電車にひかれそうになっていた女性を助けた高校二年生、寺尾翔太。 しかし、女性を助けたは良いものの、自分は電車にひかれてしまう……。 かと思いきや? 突如異世界に召喚され、余命宣告された翔太。殘された命で、美少女達と共に世界を救えるのか……!? アホな仲間たちに振り回されながらも、今日も翔太は世界を救う!
8 59