《家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら》近づいて、ぶつかって 2
「それと、僕の大切な友人を悪く言わないでくれないか」
いつも通りの笑顔だけれど、かなりの圧をじるクライド様の言葉に、彼達は「すみませんでした……!」と言い、走り去っていった。
そしてクライド様は何故か、メガネくんに先に戻るよう告げると、わたしに向き直った。
「僕のせいで嫌な思いをさせてしまい、すみません」
「いえ、わたしも出過ぎたことを言ってしまって……」
「そんなことはありません。嬉しかったです」
ああ、でも。と彼は続ける。
「他人、と言われたのはし寂しかったです。よく知りもしないとも言っていたので、これから知ってしいなと」
「す、すみません……」
そういや先程彼は、わたしのことを「大切な友人」と言ってくれていた。なんだか照れてしまう。
それからしばらく、クライド様は何故か無言でじっとわたしを見つめた。エルとはまた違った、綺麗な顔だなあなんて思いながら見つめ返していると、彼は小さく笑って。
「やっぱり、君は素敵ですね」
「そうですか?」
「はい。ジゼルを見ていると、好きに生きてみたくなる」
そんなクライド様の言葉の意味は、わたしには分からなかったけれど。きっと彼は、想像もつかないような苦労や我慢を沢山しているのだろう。
その後は食堂に行くと伝えれば、送ると言ってくれた。そうして並んで歩きながら、今日の授業ではあの部分がわからなかった、なんて話をしていたら。
「僕で良ければ今日の放課後にでも、教えましょうか」
「えっ? いいんですか」
「はい。僕自、復習にもなりますし」
せっかくなので、お言葉に甘えることにした。リネもわからないと言っていたし、彼もっていいかと尋ねれば、もちろんだと微笑んでくれた。
クラレンスもいますね、と言われ誰だろうと思えば、メガネくんのことだった。とても素敵な名前だ。
「エルにも一瞬、勉強を教えて貰ったことがあるんですが、こうなるからこうだろ、というじでよくわからなくて」
「彼は本當に天才なんでしょうね。きっと僕達とは考え方も理解の仕方も違う」
「クライド様だって何でも出來る、天才じゃないですか」
「いえ。僕は、努力型ですよ」
そう言い切った彼は一、どれほどの努力をしているのだろうか。やっぱりクライド様はすごい人だと思いながら、放課後の勉強會にを弾ませたのだった。
◇◇◇
「…………エル?」
それから3日が経った。クライド様はびっくりするほど教え上手で、結局他の教科を含め3日連続、勉強を教えて貰ってしまっていた。リネも喜んでいて、本當に良かった。
一応エルにも聲を掛けたけれど「俺にわからないことなんてない」と言い、斷られてしまって。
だからこそこの3日間はあまりエルと過ごせなかったな、と思いながら自室へと戻ってきたのだけれど。
なんとわたしのベッドには、彼の姿があった。
「寢てる……?」
そうっと近づけば、彼はすやすやと寢息を立てて眠っているようだった。何もかもが可くて、抱きつきたくなるのを堪え、わたしは靜かにベッドに腰掛けた。
……もしかしてエルも、わたしに會いたいと思ってくれていたのだろうか。
わたしと全く同じ気持ちとはとても思えないけれど。それでもしくらい、寂しく思ってくれていたのかもしれない。
「ふふ」
じっと、天使のようなその寢顔を見つめる。いつの間にか彼のことを、もう弟だとは思えなくなっていた。雙子くらいの気持ちだ。エルがお兄ちゃんは流石にない。
そんなことを一人思いながら、らかな銀髪の先にれてみる。そういや彼はそろそろ切りたいなんて言っていた。わたしはいつも、勿無いと止めているけれど。
燈りをつけないでいたせいか、だんだんと眠たくなってくる。しだけ寢ようと思い、わたしはエルからし離れた所で橫になると、あっという間に夢の中へと落ちていった。
「ん、……んえっ、」
目を覚まし、ゆっくりと目を開けた途端。わたしは驚きすぎたあまり、変な聲が出てしまった。
「……寢すぎだろ、お前」
鼻と鼻がくっつきそうな距離に、エルの整いすぎた顔があって。彼は呆れたような表で、そう呟いた。
そしてわたしは、がっちりと彼の腕に抱きついたまま眠ってしまっていたことに気が付く。
「ご、ごめん……!」
飛び起きた後、ベッドにおでこをくっつける勢いで頭を下げた。エルは大きな溜め息をつくと、ゆっくりとを起こし、し寢癖のついた髪を直している。
窓の外はもう真っ暗で、窓ガラス越しにってくる街燈ので、ぼんやりと部屋の中が見えるくらいだ。どうやら、わたしはかなりの時間眠ってしまっていたらしい。
……そしてふと、ひとつの疑問が浮かぶ。エルは一、いつから起きていたのだろう。
寢すぎだろ、と言うくらいだ。ついさっきとかではないはずだ。そして目が覚めた後も、わたしが起きないようにずっと、同じ勢のままでいてくれたのだとしたら。
心臓が破裂してしまうのではないかというくらい、ぎゅっと締め付けられて。しいと嬉しいで、泣きそうになる。
「……エル、大好き」
「あっそ」
「本當に本當に、大好き。それとごめん」
「しつこい」
何度言っても足りないくらい、好きが溢れてくる。出會った頃よりも、エルはずっとずっと優しくなった。
わたしのたった一人の、大切な家族。そんな彼に抱きつこうとすれば、普通に避けられてしまったけれど。
そして何故ここにいたのかは、聞かないでおく。勝手に勘違いをしたまま、幸せな気分でいさせて貰おうと思う。
「ねえ、明日は一緒にカフェにいこう」
「気が向いたら」
「あ、街中のケーキ屋さんにも行くのもいいな。リネから、とっても味しいタルトがあるお店を聞いたの」
「明日な」
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