「ルビーと會えて、本當に嬉しい！」

「私もです。お嬢様がお元気そうで何より」

「ありがとう、話したいことも沢山あるんだよ」

「はい。楽しみです」

リネの家に遊びに行くまで、一週間を切った今日。お泊り用のを買いに、わたしはルビーと共に王都の街中に來ている。ちなみにエルもったけれど、面倒だと斷られた。

伯爵家に寄り付いていなかったわたしは、こうしてルビーに會うのは數ヶ月ぶりだ。彼は休みを使って買いに付き合ってくれていて、本當に嬉しい。

必要なを買い揃え、カフェでゆっくりお茶でもしようかと話しながら歩いていると、不意に通りがかったアンティークショップの中に並ぶ、古い本が目にった。

魔法に関する本ならば、毎日わたし以上にだらけているエルに、いいお土産になるかもしれない。そう思ったわたしはルビーにしだけ見たいとお願いして、店へとる。

そうして、気になった本に手をばした時だった。

「あっ」

「あ」

ちょうど反対側からも同時に手がびてきていて、ぶつかってしまう。すみません、と謝り顔を上げればそこには、若葉の髪をした格好いいお兄さんがいた。わたしよりも１０以上は歳上に見える。

それにしても最近は男ばかり見るなあ、なんて思いつつ、ばした手を引っ込めたのだけれど。

「お前、こんなところで何をしている」

「えっ？」

「今日はエルヴィス様は一緒じゃないのか？」

「……ええと、エルのお知り合いですか？」

「あ」

何故か突然、馴れ馴れしく話しかけられて。

戸ったわたしがそう尋ねると、お兄さんはハッとしたように口元を手で覆った。その上彼は何故か、ひどく焦ったような表を浮かべている。

「っ何でもない、誰だお前は！　間違えたんだ！」

「…………？」

「し、失禮する！」

そうして、あっという間にお兄さんは店を飛び出していった。間違いなくエルヴィスと言っていたし、やはりエルの知り合いだろうか。彼の周りは、男率が高すぎる。

そもそも、どうしてわたしを知っているのだろう。綺麗な顔をしていたけれど変な人だったなあと思いながら、再び本へと手をばしたのだった。

◇◇◇

そして、數日後。わたしは天使達に囲まれていた。

「じぜるお姉ちゃん、だいすき！」

「ぼくも！」

栗の髪をした可らしい子供達に、前からも後ろからもぎゅうっと抱きつかれ、その上「お姉ちゃん」と呼ばれ、大好きだなんて言われているのだ。幸せすぎる。

「ここは……天國か何か……？」

「ふふ、ジゼルは子供にも好かれるんですね」

そう、昨夜リネの家に無事到著してからというもの、彼の雙子の弟達が、わたしにとても懐いてくれているのだ。今日も朝からずっとべったりだ。

まだ４歳の彼らはとても小さくて、らかくて。本當に可らしい。大きさはし違うけれど、なんとなく出會った頃のエルを思い出してしまう。態度も全然違うけれど。

「ねえ、エルも一緒に遊ぼうよ」

「バカ言うな」

もちろん一緒に來ていたエルにそう聲をかけても、全くつれない。どうやら小さな子供が苦手らしい。し離れた場所に偉そうな態度で座り、リネが用意してくれたお菓子を食べながら、こちらを見ている。

ちなみに予定では一週間ほど、お邪魔する予定だ。彼のご両親も優しくて素敵な方々だった。わたしにもエルにも、とても良くしてくれている。

「そう言えば、ジゼルには妹さんがいるんでしたっけ？」

「う、うん。いるよ」

「きっと素敵な方なんでしょうね……！」

「うううん……？」

サマンサはきっと、リネの想像とはかなりかけ離れている気がする。そんな彼も來年、魔法學園に學してくると思うと、ひどく気が重い。

今までのようにわたしの悪評を流し、孤立させようとする未來しか見えない。本當にやめてしい。

なんだか暗い気分になってしまい、サマンサのことを頭から振り払うように、わたしはむぎゅうと雙子ちゃんを抱きしめる。するとすりすりと頬りしてくれて、憂鬱な気分が一瞬で吹き飛んでいく気がした。

「すき！」

「か、かわいい……！　わたしも好き！」

そうして、サラサラの髪をでていた時だった。

「ジゼル」

不意にエルに名前を呼ばれ、視線を向ける。彼がわたしの名前を呼ぶ時は大、何かを頼む時だ。

「どうしたの？」

「クッキー、なくなった」

「そこに新しいのあるよ」

「開いてない」

エルの手の屆くすぐ先に、小袋にったクッキーがある。

自分で開けた方が早いのではと思いながらも、やっぱりわたしは雙子達から離れ、エルの元へ行き袋を開けてしまう。

「はい、どうぞ」

「ん」

そしてお禮だとでも言わんばかりに、エルはクッキーをニ枚くれた。そもそも、リネが用意してくれたものだけれど。

そんなわたし達を雙子達は、大きなくりくりの瞳で、不思議そうな表を浮かべたまま見つめている。

「じぜるお姉ちゃんは、このお兄ちゃんのこいびと？」

「ううん、違うよ」

「じゃあぼくとけっこんできる？　しよう！」

「ええっ」

まさかのプロポーズをされてしまい、あまりの可らしさに笑みが溢れる。リネも「まあ、いつの間にそんなことを覚えたの」と言って笑っていた、けれど。

「無理」

ほのぼのとした雰囲気の中、エルはそう言い切った。

「どうして？」

お兄ちゃんであるリオンくんが、悲しげにそう尋ねる。

わたしもどうしてだろうと他人事のように思いながら、手渡されたクッキーを一枚齧り、エルを見つめた。

「もしかしてお姉ちゃん、すきなひといるの？」

「ああ」

彼はそんな問いに、なんの躊躇いもなく頷いて。

「こいつは俺が好きなんだよ」

そしてわたしはクッキーを思い切り、に詰まらせた。