《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》良い子、悪い子、普通の子。
なんだかいつもと様子が違う。
先ほどから何か言いたげな顔で見られている……ような気がする。
「ねぇ、葵ちゃん」
和泉は隣の席にいる駿河に聲をかけた。ぴくっ、と反応がある。
「もしかして、僕に何か言いたいことある?」
初めは気のせいだと思った。
彼はとにかく真面目で仕事中は一切無駄口を叩かない。
そんな彼が業務上で特に必要がないのに、朝から何度か自分の方を見ているなんて。
まさかな、と思った。
「……あの、実は……」
言いにくそうに口ごもるのもめずらしい。
「お晝、一緒に行こうか?」
聡介ならそう提案するだろう。
和泉は父の真似をしてそう言ってみた。すると、
「はい」
おお、いつになく元気な返事だ。
それから午前中は幸い何事もなく、晝休憩の時間を迎えた。
「どこに行こうか? 聡さんなら迷わず社員食堂なんだけど……」
「そこがいいです」
あっさり決まり、二人は社員食堂に向かった。
刑事達はとにかく食事のスピードが速い。
あっという間に食べ終えて、お茶を飲みながら和泉は駿河に訊ねた。
「……で、なぁに?」
「昨日はどちらへお出かけでしたか? どなたとお會いになりましたか」
淡々としたいつもの口調で駿河が答える……というか、質問し返す。
和泉は思わずきを止めた。
「僕、何かの事件の容疑者な訳?」
「いいえ、いたって個人的な関心です」
駿河は真面目な表で答える。
裏に何かあるな、と思ったがとりあえず黙っておく。
「昨日は聡さんと一緒に、尾道へ行ってたんだ。聡さんの初孫を見にね」
「……もしかして班長の……お孫さんの母親が、和泉さんの『初の人』だったのですか?」
「やだな、聞こえてたの?」
確かに金曜日の夕方、聡介と日曜日の予定を話していて、ちらりとそんなことを口走った記憶がある。
「そうだよ。で、聞きたいことはそれだけ?」
駿河はし間を置いてから、
「……奧さんはどのようなでしたか?」
「それって、別れた奧さんのこと? ……どうもこうも、普通のだよ」
一般的に普通の定義は何かと聞かれたら、蕓能人だとか、大企業の重役だとか、茶道や華道の家元ではなく、ごく平凡などこにでもいる社會人という意味だろう。
もっとも彼の場合は、父親が県警本部長だったという特殊な背景はあるのだが。
「普通というと、うさこのようなという意味ですか?」
和泉は思わず笑ってしまった。
「うさこちゃんは良い子だよ。そうじゃなくて、ごく普通」
何が言いたいのかわからない。
顔には出ていないが、駿河ののが手に取るようにわかる。
『うさこ』こと、稲葉結(いなばゆい)巡査は仕事熱心で、時々変な方向に突っ走るが、正義の強さや被害者に寄り添う優しさ、仲間に対する気遣いの深さなど良い面がたくさんある。
だから彼は和泉の中で『良い子』に分類される。
そうだなぁ、と和泉は窓から外を見つめつつ話し始める。
「ブランドと立派な肩書が大好きで、目立つこと大好き、自分大好き。嫌いなものは、自分の思い通りに他人がいてくれないこと、旦那が他のと話してること。おっと、そういえば聡さんのことも、良く言ったことがなかったな」
「……つまり、自己中心的で嫉妬深いということですか?」
「それを言ったらも蓋もないけどそうなるね。葵ちゃんの考える『普通の』と、僕の考える『普通の』は基準が違うみたいだ」
「ではなぜ、その普通のと結婚なさったのですか?」
もしかして、それが一番訊きたかったのではないだろうか。
「お茶、もう一杯しいなぁ……」
駿河はすかさず立ち上がって、給湯のところへお茶を汲みに行った。
「ありがと。ま、一言で片づけるなら気にられたから、かな?」
「……気にられた?」
「県警本部長の娘に気にられるなんて、ノンキャリアで獨の男なら願ってもないチャンスじゃない? 斷る理由なんてないでしょ」
「……」
「もっとも、わりとすぐ上手くいかなくなって現在に至る訳だけど」
向こうもきっと失敗したと後悔しているに違いない。
和泉は苦笑した。
「で、誰がそんなこと僕に聞いてくれって頼んできたの?」
つと、駿河の額に浮かんだ汗が流れた。
「誰にも頼まれてはいません……」
「ふーん、まぁいいけど」
どうせ警か事務員の誰かだろう。
その時は和泉にはそれしか思い浮かばなかった。
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