《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》出生の

帰宅しても、兄の姿はなかった。

しだけホッとする。

そう言えば、炊飯のスイッチれて出かけたっけ?

貓達が餌を催促してくる。

周が急いで臺所に向かおうとした時、何の前れもなく、咲が後ろから言った。

「周君、私ね。賢司さんと別れようと思っているの」

突然、何を言い出すんだ?

「……なんで?」

驚いて振り返った周の目に、俯いた姿の咲の姿が映る。

「私があの人に嫁いだ理由は、前にも話したでしょう? 旅館を存続させることが目的で、借金の返済のためだったのよ。でも……もうおしまいだから」

「な、何言って……」

「ありがとうね、周君。周君の気持ちは本當に嬉しい。でもね……」

思わず大きな聲を出しかけた周を押しとどめたのは、咲の思いがけない行だった。

らかいものが腕の中に飛び込んでくる。

「ね、義姉さん……?」

「お願い、周君! 私と一緒にここから出て!!」

何を言われたのか、一瞬理解できなかった。

「なに……? それ、どういう意味……」

「もう、嫌なの! 今までいろんなこと我慢してきたけど、もう……もう嫌!!」

こんなふうに取りす彼の姿を見るのは初めてだ。

「ちょ、ちょっと待って! 落ち著いて……」

しかし義姉は離れようとはしなかった。

どうも、今日の義姉は緒不安定だ。気持ちはわからなくもない。

きっかけになったのはおそらく、先ほど見たポスターのせいだろう。

周が知る限り、彼は自分の仕事をしていた。

力はいるし、気は遣うし、決して楽な仕事ではないけれど、それでも楽しんでやっていたように思う。

その『仕事』がなくなってしまうことが、彼にとってどれほどの打撃なのか。

ましてその原因を作ったのが自分の親だと言われ、まわりから責められたりすれば。

それからしばらくして、咲はごめんね、と周からし離れた。

うっすらと目に涙が浮かんでいた。

「周君、高校を卒業したら進學するんでしょう?」

「……まだ、何も決めてない」

それは事実だ。

悩んでいて、決斷がつきかねている。

「もし周君がこの家に、賢司さんと一緒に暮らしたいなら……話は別だけど、もし獨立するつもりなら……私と一緒にこの家を出ましょう」

咲は周の表を見て苦笑する。

「何を言ってるのかわからないって顔ね? 今だから、本當のことを言うわ……」

こちらこそ、頭が混し始めている。

自分はこれから話されることをちゃんと理解できるのだろうか? 自信はなかった。

「周君、あなたのお母さんは私の母親でもあるの。寒河江咲子が、藤江悠司さんとの間に産んだ子供が周君……つまり、私とあなたは父親の違う姉弟なのよ。義理なんかじゃなくて、本當にがつながっているの」

「……」

い頃、父親から聞いたことがある。

お前には半分のつながった姉さんがいるんだぞ。

周はしかし、その話を本気にしたことはなかった。

「今までずっと言えなかったのは、あなたが自分は人の子だということで、辛い思いをしてきたって聞いたから。自分の出生を聞いたらきっと母親を恨むだろうし、私にも気を遣うんじゃないかと思って。でも、もう時だわ……」

し前、周は咲に彼の両親の話を聞かせてしいと頼んだことがある。

その時はまさか自分がそこまで関わっているとは思っていなかった。

義姉が言いにくそうにしていた理由もそれほど深く考えはしなかった。

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