《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》貓ニャー

火遊びなんかじゃなかった。

父は毎年、墓參りを欠かさなかった。

命日になると必ず、いつも同じ花束を買って、周を連れて母の墓參りに向かった。

雨の日であっても、晴れの日であっても、必ず長い時間、そこで無言の祈りを捧げた。

父は周に背を向け、肩を小さく震わせていた。

そして最後に必ず一言、

『咲子。君と一緒になりたかったよ……』

実際、今、周の頭の中は相當混している。

冷靜な時ならそんなふうに、穿った考え方をしたりしない。

でも今は、何もかもが底から覆され、足元からさらさらと崩れていく、そんな覚に襲われている。

それからふと、周の脳裏に円城寺の顔が浮かんだ。

彼は自分の相談に真剣に耳を傾けてくれて、一緒になって努力してくれた。

何とかして咲にとって有利になるようにそれだけを考えて。それなのに。

周にとって咲の今の言葉はまるで、今まで彼の為に払った努力をすべて否定されたような気分にさせられた。

周は咲に背を向けた。

「……周君……?」

「……悪いけど、いきなりそんな話を聞かされて……すぐ返事なんて、できないから」

それから自分の部屋に戻る。

久しぶりに、鍵をかけた。

にゃー、と足元で貓の聲がする。プリンがこちらを見上げている。

貓を腕に抱き、周は貓の頭に自分の頬をりつけた。

「もう……何がなんだか、訳がわかんねぇよ……」

それからしばらく、周は自分の部屋に閉じこもっていた。

午後8時過ぎ。

しばらくは集中して明日の予習をしていたが、段々と集中力が途切れてきた。

何も食べていないから空腹でもある。

ふと周はベッドの方を見る。三貓が布団の真ん中で丸くなっていた。

コンコン、とノックの音。

「……周君、お風呂沸いてるわよ。それとも先にご飯食べる?」

咲の聲が聞こえた途端、プリンが目を覚ます。

ベッドから飛び降りて、ドアへ走っていき、開けろと催促する。

周がドアを開けると、強張った表の姉が立っている。

周はし考えてから口を開いた。

「さっきの話だけど……」

まだ、やや頭が混している。

咲は何を言われるのかと構えているようだ。

「俺の父さん……藤江悠司を、恨んだことある?」

「……」

短いが、確実に存在した『間』が、それを肯定しているように思えた。

「本音を言えば」

咲は俯き、スカートの布を悪戯に摑んで、そうして答えてくれた。「藤江のおじさんよりも他に、お父さんになってしい人がいたわ」

そういうことか。

にとっておそらく父は、平たく言えば『招かれざる客』だったに違いない。

もし父が彼の母親に會わなければ。

會ったとしても、一介の客と仲居で終わっていたなら。

そうして。

あれこれと々考えた末に、周の口から出たのは、

「……じゃあ、俺は生まれてこなければ良かった?」

咲は顔を上げ、目を大きく見開き、やがて怒ったような顔になった。

「そんな訳ないでしょう?! どうしてそんなこと言うの?! あ、周君がいなかったら……私は……!!」

ぽろぽろ、と姉の瞳から涙がこぼれ出す。

おそらく間違いなく、彼は本音を話している。

だけど。周は混していることもあり、素直にけ止めることができずにいた。

それもすべて賢司のせいだ。

優しい顔と穏やかな口調で、本當は何を考えているのか本人以外にはわからない。

「……ごめん、俺やっぱり、頭が混してて……」

「周君?」

周は機の上から攜帯電話を取ると、そのまま玄関に向かった。

「どこに行くの?! 周君……!!」

「ちょっとだけ、頭冷やしてくる」

外は寒い。

きっと、しは気持ちも落ち著くだろう。

そう期待して、周は外に出た。

サブタイトル……!!(汗)

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