《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》信頼

自分が當たり前のように信じていたこと。

兄は決して自分を疎んじたりしていない。

父と同じように可がってくれている。

義理の関係だと思っていた義姉が、実の親だったこと。

それがすべて、偽りだったと知ってしまった今は……。

「……どうして?」

さっきから『どうして?』ばかりだ。

周は自分でもおかしくなって苦笑した。

「僕はね、自分を信じてくれる人のことは決して裏切らない」

和泉のその臺詞に、周は微かな違和を覚えた。

まるでその後に『自分は誰のことも信じないけれど』と、続くような気がして。

考え過ぎだろうか。

しばらく、二人の間に沈黙が降りた。

「ねぇ、和泉さん」

バックミラーに後部座席で丸まっているプリンの姿が映っている。

目を合わせず、周は鏡越しに三貓の方に視線を向けて言った。

「和泉さんは、信じていた誰かに裏切られたこと、ある……?」

しばらく返事はなかった。

「……ごめん、変なこと訊いて」

「あるよ」

和泉の返事はシンプルだったが、重みがあった。

驚いて周は思わず、彼の橫顔を見つめる。

「ものすごく深く、傷ついたことがあるよ」

余計なことを訊くんじゃなかった。

苦い思いがに広がる。

「ごめん、なさい……」

「謝らなくていいんだよ」

和泉はこちらを見てはくれなかったが、優しい聲でそう言ってくれた。

「今でも傷は癒えていないけど……でもね。いつでも、何も言わなくても優しく包んでくれる人がいるから……生きていける」

「それって、高岡さん……?」

すると彼はこちらを向いて、ニコっと微笑んだ。

「もちろんそうだよ。でもね、それだけじゃない」

和泉が手をばし、周の頭をそっとでてくれる。

「周君に出會えたこともそう。前にも言ったことがあるけど、僕にとっての君は太みたいなんだ。溫かくて、力強くて……眩しい」

本気で言ってる? そう問いかけようとして、やめた。

本気だと信じたい。

僕はね、と和泉の手が頬に降りてくる。ごつごつとした大きな手だ。

「周君ほどの可い子に會ったことなんて、今まで一度だってないよ」

「か、可いって言うな……」

そうだよね、と和泉は笑う。

「周君も咲さんも、出會えて良かったって心から思える、大切な人達だよ」

周は思わず腕をばして、彼に縋りついた。

今だけはきっと、しぐらい泣いたって許されるんじゃないか……。

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