《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》子會は楽しい

「……遅い!!」

顔を合わせるなり、平林郁は厳しい目でこちらを睨んできた。

今日は仕事が終わったら飲みに行こう、と結は彼と約束していた。

しかし、夕方になって思いがけず結が提出した書類の不備が見つかり、修正に時間がかかってしまい、約束していた時間に間に合わなくなってしまった。

優しい上司は、何か約束があるのなら、他のことは明日に回して良いからと言ってくれて、ようやく結は退庁できた。

急いで郁と約束していた店に急行する。

鑑識課に所屬する、同期のである彼と結は暇を見つけては一緒に食事をしたり、飲みに行ったりする仲である。

先に來ていた郁はチューハイのグラスを片手に、既に一杯やっていた。

ごめんごめん、と平謝りで席につき、結は店員が持って來てくれたおしぼりを溫かいおしぼりをけ取る。それから生ビールを注文した。

はぁ……と一つ息をつく。

「忙しそうね、刑事さんは」

「鑑識だってそうでしょ? 今日はよく上がれたわね」

非番だったの、との答えになんだ、と言って結はメニューを広げた。

生ビールが運ばれて來た。

乾杯をわして一口に流し込む。

しばらくは他のない雑談を繰り広げていたのだが、アルコールがほどよく回ってきた郁は、やや據わった目で突然言い出した。

「で……? こないだは、お手柄のご褒に高岡警部とデートだったんですって?」

「で、デートっていうほどじゃ……」

お待たせしましたー、こちら鶏の唐揚げになりまーす。

揚げたての唐揚げが運ばれてきてし話は中斷した。

先日、宮島口で発見された男の他殺

元がすぐに判明し、スピード解決に至ったのは、結の記憶力が要因の一つでもあった。

その日の夕方、班長がケーキを食べに連れて行ってくれたのは事実である。

「いいわねぇ~羨ましいこと! こっちにだって、しは幸せをわけてもらいたいもんだわ」

唐揚げにレモンを絞りかけ、郁は大きな塊を一気に頬張る。

えっと……と、結は誤魔化す為におしぼりで頬を拭いた。

実をいうと以前から散々、郁に頼まれていたことがある。

どうにか和泉と一緒に食事なり、飲み會なりの機會をセッティングできないだろうか。

そう、彼は和泉に片想いしているのである。

どういうきっかけで知り合い、どこがいいのかはさっぱりわからない。

が捜査1課高岡班に異することになった時、郁の開口一番が『和泉さんの連絡先を教えて!!』だったことを覚えている。

もちろん結だって忘れたことはない。

が……。

実を言うと結は、けっこう本気で和泉のことが苦手なのである。

悪い人ではないことだけはわかる。でもなんていうのか、プライベートな用件で聲をかけるのが、ものすごくためらわれるのだ。

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