《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》年會議

「ふわっくしょん!!」

「……風邪か?」

周は友人から差し出されたティッシュをけ取り、鼻をかんだ。

円城寺と智哉の三人で一緒に晝の休憩時間、教室で晝食をとっていたら、急になぜかくしゃみが出た。

「誰か、俺の噂してんじゃねぇか?」

「和泉さんだったりしてね。周君、今頃お晝ご飯食べてるのかな~、とか」

智哉が笑いながら言う。

「ありうるな、それは」

円城寺も同意する。かもな、と周も思った。

「ところで周、一つ聞きたいんだが」

分厚い眼鏡の向こうから、切れ長の目がこちらを真っ直ぐに見つめてくる。

周は思わず箸を銜えた狀態できを止めた。

「あの、和泉さんと言う刑事とはどういう関係なのだ?」

「ど、どうって……単純に隣に住んでいる、変な中年……」

周の中で妙な焦りが生まれた。

気まずさをごまかすため、慌てて緑茶のペットボトルに口をつける。

単なる隣人? あるいは、友達の一人と言っていいのだろうか?

「本當にそれだけか?」

「……なんだよ、それ。刑事みたいな訊き方しやがって」

すると円城寺はすまない、と眼鏡のつるを持ち直した。

「どうも君の口から出る名前で一番多いのが、その『和泉さん』だから、何か特別な関係なのかと思っていた」

特別な関係?!

周は思わずお茶を吹き出しそうになるのを、辛うじて堪えた。

「あ、やっぱり信行もそう思う? 僕もそう思ってたんだ」

智哉が追い打ちをかける。

ごっくん。どうにか口の中のものを飲み込む。

「特別ってなんだよ? 俺は別に、あの人のことどうこう思ったことなんてねぇよ。変な人だし、基本的に何を考えてるかわからないし……」

急に兄のことを思い出した。

あの二人はよく似ている。

醸し出す雰囲気、そして優しいところ。

でも兄の賢司は優しいフリをしているだけだった。

またしても暗い気分になりかけて、周は軽く首を橫に振った。

「僕の見たところ、あの人はかなり屈折した格の持ち主だな」と、円城寺。

何を今さら……。

「無理もなかろう。刑事と言うのは職業柄、常に人の悪意、マイナスに曬されているものだからな。神的な疲労を覚えることだろう。だからきっと、周のように真っ直ぐな格の人間といると癒されるのだろうな……」

「うん、僕もそう思う。和泉さんは周から元気をもらいたいんだよ、きっと」

「……」

「しかしまぁ、いずれにしろ奇怪な人であることに変わりはない」

午後の授業が始まる5分前を告げる、予鈴が鳴った。

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