《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》不良と呼ばれて?

販売機のすぐ傍には、休憩用のパイプ椅子がいくらか並べられている。

和泉はそのの一つに腰を下ろし、缶コーヒーのプルタブを開けながら、

「葵ちゃんて、反抗期とかあったの?」

突然何を言い出すのだろう?

不思議に思ったが、過去を振り返ってみる。

反抗期も何も、駿河は父親に逆らった記憶がない。子供の頃からずっとだ。

父親が恐ろしかった。

母親代わりに彼の面倒を見てくれた家政婦さんも、旦那様の言うことはよく聞かなければなりませんよ、といつも言い聞かせていた。

進路だって父親が決めたレールの上を走って來ただけだった。

期待に沿わなければならない。

そうしなければ、この人の息子ではいられない。

警察になったのもそういう理由だ。

彼はい頃から夢を見ることを許されなかった。

警察庁に庁したエリートの兄の後を追えとまでは言われなかったが、お前も警察になって、兄さんの助けになれ。

だから、それが自分の生まれながらに背負った宿命のようにじていた。

「なかったと……思います」

「そんなじだよね」和泉は笑う。

「和泉さんはどうだったんですか?」

「僕のことなんてどうでもいいんだよ。それよりも僕が言いたいのは、葵ちゃんも、もうし反抗したらってこと」

「親にですか?」

「……まわりの狀況にってこと」

どういう意味だ?

この人の言うことは時々、本當に訳がわからない。

「この世の中は多數意見が正しいってことになってるけど、本當にそうなのかな? 自分だけ人と意見が違うと、何か間違ってるのかなって不安になるのは無理もないけどね」

和泉はプルタブを開けてコーヒーを飲んだ。

この人は何を言おうとしているのだろう? 駿河は頭をフル回転させて、彼の言いたい事を理解しようと努めた。

は子供、頭脳は大人な名探偵の臺詞じゃないけどね、真実はいつも一つ。咲さんはきっと泥棒の娘なんかじゃないよ。まわりの人も本當はそう考えてる」

「……!!」

まさか、この人は彼のために20年前の橫領事件を調べているのだろうか?

和泉は空き缶を用にゴミ箱へ投げれ、立ち上がると背びをした。

「和泉さん……」

「なぁに?」

「あなたは、咲のことを……?」

おそるおそる、駿河は彼の整った橫顔を見上げた。

「周君にも言ったことあるんだけどね、僕は彼ほどの素敵なに會ったのは、人生で二度目だよ。だから、好きだよって答えるかな」

駿河は言葉を失って、しばらく和泉の後ろ姿を見送るだけだった。

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