《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》ナンパ野郎

「あの、すみません」

先ほどの外人の連れである、邦人男が店に戻ってきて、周に聲をかけてきた。

「僕、広島経大の學生なんですけど……今、県の観事業の活化っていうテーマでアンケートをお願いしていて……協力していただけませんか?」

ボールペンとボードにりつけられた用紙を渡され、周はなんとなく気圧されてけ取った。

実は地元民なんだけど……なんて、今さら言えない。

適當なことを記して、アンケート用紙を返した。

予定では買いの後、帰途に著くとなっている。

待ち合わせのフェリー乗り場で周達が男の子達を待っていると、また、

「アキヒコ~!!」

アレックスが咲を追いかけてやってきた。

周は姉の前に立ちはだかり、近付けないようにしたが効果はなかった。

彼は謎の言語でまくしたて、それから咲の手を両手で握り、彼の頬にを近付けようとした。

「気安くるな、外人!!」

周はアレックスの肩を摑んで引っ張った。

が、いかんせん格の差がありすぎる。しも効果がなかった。

嫌がる姉が悲鳴を上げる。

しかし相手はかまわず、なおも執拗に抱きついてくる。

「離せ!!」

周がアレックスの襟首をつかんで引っ張ると、彼はうるさそうに振り返り、先ほど『シンイチ』にしたのと同じように肩を突き飛ばしてきた。

その衝撃が思ったよりも強く、周はバランスを崩してもちをついてしまう。

「警察、おまわりさん呼んで!!」

周が二人のぶと、二人とも手をつないで走りだした。

傍を通りかかった人達はみな、ただ様子を見ているだけだった。

アレックスは咲を解放して彼に背を向け、周の方を向いた。

そしてニヤリとの端に笑みを浮かべる。何か一言二言呟くと、周のぐらを摑んで持ち上げた。

戦後間もない日本の原風景のようだ。

足が宙に浮いている。息が苦しい。

どうしてこんなことに……!!

ピピーっ、と警笛が鳴り響く。警備員が駆けつけて來てくれたようだ。

しばらくして所轄から地域課の警二人が到著した。

まだ若い警と、中年の警は顔を見合わせて困っていた。

若い方は英語ならしわかるが、中年の方は日本語以外さっぱりだと言っている。

「とりあえず本部に連絡して、英語のわかる人呼ぶしかないんかね?」

狹い派出所のパイプ椅子に座り、周と咲は事聴取に応じていた。

アレックスはと言えば懲りずに、ひたすら咲に熱い視線を送っている。

い子供達と友人達にはフェリー乗り場で待ってもらっている。

「この外人さんの連れの人が、どこかにいないんですか? さっきは一緒だったけど」

周が言うと中年の警は、

「何て人?」

「確か、シンイチとか……広島経済大學の學生って言ってましたけど」

それだけじゃねぇ、と警は苦笑する。

「ま、もうししたら英語のわかる人が到著するけぇ。それで、あんたからまず事を聞こうかね……」

そこで周は詳しい経緯を話した。

「要するに癡漢ちゅうことか。でもなぁ……外人さんにとっちゃ、普通の挨拶なんじゃけどね」

「ここは日本です!」

「そりゃそうなんじゃが……」

「挨拶でも何でも、相手が嫌がることをするのは何人でも許されないでしょう?」

アレックスが何か言ったのが聞こえた。

意味はわからなかったが、侮蔑だということだけはじ取れた。

周は思い切り相手を睨みつけた。

「ところで『アキヒコ』って誰? さっきからずっと、この外人さんが言ってるんだけど」

若い警が尋ねる。

ぎくり。

「あ、あの、それは……」

やがて私服警が到著した。

彼はおそらく英語でアレックスに話しかけ、しの遣り取りをした後、

「……申し訳なかった、と言っています」

ほんとかよ? と、思ったが黙っておく。

「あまりにもしいだったので、是非お近づきになりたかったのだ、と。自分は広島市に住んでいるので、いつでも連絡を……とのことです」

周は咲の手を取って立ち上がる。

「通訳してもらえます? 二度とうちの姉に近づくなって。今日のことは忘れてやるから」

行こうぜ、と彼は急ぎ足でフェリー乗り場に向かった。

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