《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》なんとか先生を勵ます會

出來あがった新しい著に袖を通しても、咲の心は晴れなかった。

周はあくまで前向きに旅館の再建を考えてくれている。気持ちはすごく嬉しいけれど、彼は正直言ってあきらめかけている。

伯父が社長でいる限りは無理だ。

ふと時計を見た。そろそろ出かけなければ。

今日は地元代議士の田代という政治家の資金集めパーティーがある。午後7時からだが、できるだけ早めに來るよう言われている。

パーティー會場に到著するとロビーで既に、賢司が待っていた。

彼は職場から直行したらしいが、きちんとなりは整えている。

「よく似合うね」

何かあったのだろうか? 今日は機嫌がいいらしい。

會場である6階に到著し、エレベーターを降りたところで「あら……?」と、咲はドレス姿のに聲をかけられた。

金髪碧眼の外國人。どこかで見たような気がする。

「こないだ、宮島で……お會いしませんでしたか?」

思い出した。あのアレックスとかいう癡漢の知り合いだ。

「ええ、あの時はどうも、ありがとうございました」

「あれから私、急用ができて先に帰ったんですけど、大丈夫でしたか? アレックスったら、すっかりあなたのことを気にってたから。もしかして、何か困ったことがありませんでしたか?」

実はあれから警察のお世話になったなんて言いづらい。

大丈夫ですよ、と答えるとはほっと息をついた。

「知っている人かい?」こそっと賢司が尋ねる。

「ええ、しだけ……」

するとは微笑んで、

「そういえば自己紹介もまだでしたね。私、ビアンカ・ハイゼンベルクといいます。ドイツ人なんですけど、日本の方が長いので、日本語の方がよくわかります」

どうりで流暢な日本語なわけだ。

「藤江咲……です」

ビアンカはくすくすと笑って、

「そうですよね。じゃあ、あなたが『アキヒコ』さん?」と、賢司に問いかけた。

すると賢司は一瞬言葉を失い、それから苦々しい表を見せた。

「違います」

「……失禮しました」

ビアンカは不思議そうな顔をしている。

そして、賢司はついさっきまで上機嫌だったのに、急に不機嫌になってしまった。

何が地雷だったのだろう。

しかし彼は誰か知り合いを見つけたらしく、すぐに笑顔を裝って、そちらへ急いで向かっていく。

咲は1人殘されたままだ。

「素敵な著ですね。私、和服が好きで……」

流暢な日本語で金髪のが話しかけてくる。

ニコニコと人懐っこい笑顔が魅力的で、咲は一気に彼へ好を覚えた。

「ビアンカ、そろそろ中へ」

と、彼に呼びかけたのはやはり先日、宮島でアレックスと一緒にいた日本人の若い男だ。スーツにネクタイを締めている。

「あれ、確か……」

咲はぺこり、と頭を下げた。

相手も會釈を返す。

この人達はどういう関係なのだろう?

政治家の資金集めパーティーなどに、よほどの興味でもない限りごく普通の一般人がやってくるのは稀だ。

ふと咲は學生時代からの友人が好きだった推理小説のシリーズを思い出した。

確かアメリカの副大統領の娘と、彼のエスコート役であるどこかの大學の準教授。

ビアンカもまたそのような立場のなのかもしれない。

が白くて、眼が碧くて髪は絹糸みたいで、素敵だな……と咲は思った。

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