《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》飲み屋のできごと

「おいおい、兄ちゃんどうした?」

友永は男に聲をかけた。確実に面白がっている。

彼は時折飲み屋で、知らない人間といつの間にか仲良くなっていたりする。

そうして人脈を増やし、報提供者である『檀家』を増やすのだそうだ。

駿河にはとうていできない蕓當である。

「うっうっ……彼が……」

「彼が浮気したか?」

「うわあああんっ!!」

図星だったようだ。

「おいおい、そんなに泣くなって」

友永はポンポンと男の肩を軽く叩く。

「……そりゃ、仕事が忙しくてほったらかしにしてたのは確かに俺が悪いですよ。彼、ストレスの多い職場にいるみたいで、同僚の男にいろいろ相談してるうちに、そういう関係になって……挙句、向こうの男の子供ができたから別れるって言われたんですよ?!」

「あちゃー……」

「うぅ、なんて誰も信用できない!」

若い男は涙で顔をぐちゃぐちゃにし、カウンターの上に突っ伏した。

「ならいっそ男に走るか?」

「……」

「冗談だよ、冗談。忘れちまえ、そんなのことなんか」

「それができたら、こんなに苦しい気持ちになったりしません!」

いっそ忘れられたらどんなに楽か……。

それは今の駿河の気持ちをありのまま言い表していた。

そして思い出してしまう。夏に咲から言われたこと。

今でも好きだと。

「まぁまぁ、一杯ぐらい奢ってやるから泣くなって。生ビールでいいよな? 大將、生二つ追加な」

友永はカウンターの中の店主に聲をかけた。

駿河はいたたまれない気分になって立ち上がる。

「足りなかったら後で請求してください」一萬円札を一枚取りだす。

「……今、お前が何を考えているか當ててやろうか?」

隣の男の背中をさすりながら、友永は駿河を見上げて言った。

「……やめてください」

「忘れろとは言わない。ただ、あんまり深く考えるな」

それもできない、なんて言ったら叱られてしまうだろうか。

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