《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》個人報ダダ

居酒屋を出て駿河は自宅に向かう道を歩き出した。

すっかり秋も深まり、外気溫が低くなった。

駅前は仕事帰りのサラリーマンやOLが急ぎ足で歩いている。

いつしか彼は咲に似た姿のを目だけで追いかけていた。

そんな自分を咎めるかのように、攜帯電話が鳴りだした。

事件か? 駿河が攜帯電話を耳に當てると、聞こえて來たのは上司の聲ではなく、覚えのないの聲だった。

『駿河君? 私、森川紗代(もりかわさよ)だけど……覚えてる?』

悪いが覚えていない。

『あー、ひどい。全然覚えてないんだ。中學の卒業式で駿河君に告白して、ふられたこともあるのに』

そう言われても思い出せない。

『安佐北第三中學、3年3組出席番號38番だったんだけどなぁ』

それは確かに駿河の卒業した中學校に違いない。

だが、未だに思い出すことができないでいる。

『駿河君、もしかして今、駅前にいたりしない?』

「……なぜだ?」

『あはは、全然しゃべり方とか変わってないんだね。ねぇ、後ろ向いて見て』

言われるままに駿河が後ろを振り返ると、ベージュのコートを著たが大きく手を振っている。

ゆるくウェーブした肩までの長さの髪、ほっそりとしたつき、遠目に一瞬だけ咲がそこに立っているのかと錯覚してしまった。

は笑いながらこちらに近づいてくると、

「駿河君でしょう? 駿河葵君。あんまり変わっていないね」

ようやく思い出した。

確かに中學時代の同級生に違いない。

顔は化粧のせいかける印象が隨分変わっていたが、なんとなく面影は殘っている。

いろいろと聞きたいこと、言いたいことがあった。

だが、口を突いて出たのは

「どうやって僕の攜帯番號を知ったんだ?」

自宅には未だに固定電話を引いてあるから、學生時代の同窓會名簿には番號が殘っているだろう。

しかし、駿河がプライベートで使用している攜帯番號は家族と同僚、ごく親しい友人にしか教えていないというのに。

すると、森川紗代は興ざめしたような顔で答えた。

「學生の頃のクラス名簿を取っておいたから。駿河君のお家に電話したら、お父さんが電話番號を教えてくれたわよ」

余計なことを。駿河はで父親を罵倒した。

からの電話、ということで何か期待したに違いないのだ。

そんな彼のを知ってか知らずか、森川紗代は弾んだ聲で言う。

「ねぇ時間ある? 久しぶりだし、どこかで一緒にお茶でも飲まない?」

一瞬だけ父親に苛立ったが考え直した。

懐かしい顔と昔話に花を咲かせるのも悪くはない。

駿河は同意し、近くのファミリーレストランへ向かった。

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