《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》記念に一枚

「わかっているんなら、とっとと失せろ! 仕事の邪魔だ!!」

ああ、嫌だ。こういうのが大きな顔をして『警察』を名乗るから、一般市民から嫌われるのよ。

思わず結は口を挾んだ。

「そんな口のきき方していいんですか? この人、それでも一応警部補ですよ?」

警察部で階級が何よりもを言うことぐらい、結でも知っている。

わかりやすく態度に出る人だ。

相手は途端に、ぎょっとした。

和泉は何も言わない。

がさらに何か言おうとした時、なぜか影山の表が明るくなり、ニヤリと笑顔を浮かべた。

「ああ、嫁さんの力で昇進したっていうので有名な……」

何それ?

は思わず和泉の橫顔を見つめる。

彼は無表であった。

ねぇ、もう行きましょう? と、亜沙子が影山を外に連れ出そうとする。

が、影山は暴にその手を振りほどいた。

亜沙子はバランスを崩して床に崩れ落ちそうになる。結は咄嗟に立ちあがり、彼を支えた。

手や腕に怪我でもさせたらいけない、彼はバイオリニストなのだ。

代わりに結の方がソファの角でし腰を打った。痛い。

「そうだ、いろいろ思い出したぞ。あんた、かの有名な高岡警部の部下だろう? 揃いも揃ってポンコツばかりが集まった……」

は亜沙子をソファに座らせ、自分は立ち上がって影山に対峙した。

「かの有名な、ってどういう意味ですか?!」

班長が何だというのだ。

怒りやら、あまり良くないかもしれないが好奇心にかされて、思わず結は大きな聲を出してしまった。

なおも言い募ろうと頭の中でいろいろ考えていた結を止めたのは、和泉の手だ。

ごつごつした手が自分の左手を握っている。

ドキン、と心臓が跳ねた。顔が熱い。

しかし和泉はすぐに手を離すと、立ち上がって言った。

「失禮しました。かつては人事1課のエースと譽れ高かった、影山さんのことを失念していたとは。こんなイケメン、一度見たら忘れる訳がないのですが……」

確かにイケメンの部類にる。結はちっとも趣味じゃないけど。

それにしても『人事一課』とは。

元監察ということか。

「お仕事のお邪魔をして、申し訳ありません。ところで……今では廿日市南署刑事課きってのエースである影山さんと、ここで會ったのも何かのご縁です。一緒に記念寫真を撮ってもらえませんか? 仲間に自慢したいので」

この男は何を考えている?

は目を白黒させるばかりである。

それから和泉はポケットから自分のスマートフォンを取り出すと、

「うさこちゃん、撮って」

訳がわからない。が、とりあえず言う通りにしよう。

やや困気味な影山を完全に無視し、和泉は彼の肩を抱いてポーズをとっている。

「はい、じゃあ撮りますよ~」

班長ならきっと、彼が何を考えているのかわかるのだろうな……。

はふと、羨ましいと思った。

「どうもありがとうございました。それでは、失禮します」

和泉はさっさと玄関の方に歩いていく。

も急いでその後を追った。

「和泉さん! どういうことなんですか……?」

「どうやら、他の楽団員に話を聞いた方がよさそうだね」

そうして和泉はスマートフォンを作し始めた。

「一番、三村亜沙子と親しいっていう……ニイザトさんかな、シンザトさんかな。葵ちゃんもフリガナふってくれたらいいのに。この人に話を聞こう」

あまりよくわからないが、結はとりあえずはい、とだけ返事をしておいた。

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