《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》コンサート開始まであと

開演は午後6時半。

周はし早めに會場に到著し、進一と落ち合った。

やはり人気の高い楽団のコンサートだけあり、たくさんの人が集まっている。

チケットの番號に案されると、いつもと何か雰囲気が違う……。

あらためてホール全の案図をよく見てみると、自分が座っているのはなんとVIP席である。

立派な音響施設の整ったホールで生の演奏を聴けるなんて、ものすごい贅沢だと思っていたが、席は今まで座ったことのない、それも普通ならば決して手の屆かない席である。

チケットを譲ってくれたのがいったいどういう人なのか、周は考えたらし恐ろしくなってしまった。

何かお禮をしようと思っていたのだが、これでは何を用意したらいいのかわからない。

「あ、亜沙子さんだ」

舞臺を覗きこんでいた進一が呟く。

はバイオリンを手に練習していた。

おじさんはどこだろう? 周は視線をめぐらした。

見つけた。

彼はピアノの前で誰かと話をしている。

「ねぇ、先生。ビアンカさんってどういう人……? こんなすごい席、譲ってもらったりして……ほんとに良かったの?」

今日の進一は何かいいことでもあったのか、ひどく機嫌がよさそうだ。

「かまわないよ。彼、來れなかった訳だし、チケットが無駄にならずに済んで良かったと思ってるんじゃない?」

それはそうかもしれないが。

「ちなみに彼のお父さんがこの楽団のスポンサーなんだ。だからだよ、この席は」

へぇ~……と、周は思わず間の抜けた聲を出してしまった。

それから進一はなぜか、周の耳元にを寄せてきた。

「ちょっと耳貸して」

後で楽屋に挨拶行こうね。

彼はそう言った。

何もわざわざ小聲で言うようなことでもないだろうに。ちょっと変な人かも。

「それと。なんかちょっと場違いな人が紛れこんでるみたいだから、絶対に僕の傍を離れちゃダメだよ?」

「え、何それ……?!」

場違いな人間と聞いて、すぐに思い浮かんだのがヤンキーとかチンピラとかそういう人達である。

そして、ふと思い出した。

いつかおじさんの彼である亜沙子のことを追いまわし、進一のこともつけていたカメラマンの男。

結局、あの男はなんだったんだろう?

「あ、ほら。そろそろ始まるよ」

緞帳がいったん降りる。

ホール全の照明が落ちて、暗くなった。

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