《ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:5~海をまたぐ結婚詐欺師!厳島神社が結ぶ、をんな達のえにし~人ヴァイオリニストの橫顔、その翳が隠す衝撃の真実》砂を吐く

「進一には、心からするがいました」

ビアンカは悲しそうにそう、話し始めた。

「でも彼は亡くなりました。理由は……自殺です」

「……原因はなんです?」

「アレックスです。あの男が彼を……も心も殺してしまったんです」

「その、彼の名前は?」

「可奈子です、沖田可奈子(おきたかなこ)。進一とはい頃からずっと一緒に育ってきた、仲の良い姉弟みたいなものだと聞きました」

間違いない。うさこが手した寫真に映っていたあののことだ。

「私はこちらで高校を卒業した後、大學はドイツに……母國の學校に進學しました。ちょうど父も本社に帰ることになって、一緒に帰國していた期間がありました」

聡介は黙って彼の話に耳を傾ける。

「そんなある時、私は向こうで三村亜沙子と沖田可奈子という二人の日本人に會いました。2人はバイオリンの勉強のために留學してきていた友人同士でした」

2人は実に何もかもが対照的でした、と彼は語る。

「簡単に言ってしまえば、亜沙子は良家のお嬢様で、とても綺麗なでした。反対に可奈子はお金持ちの家の運転手をしているお父様を持つ、ごく平凡なです。それでも2人は気が合うようで、仲良くしていました。なくとも始め、私はそのことを疑いませんでした」

なるほど、生まれ育ちと外見という意味での『対照』か。

「実はうちの父は……大のクラシック好きで、いずれ自分の楽団を立ち上げたいと考えているような人でした。二人の才能に目を留めた父は彼達をよく自宅に招待するようになり、そうして……私の家によく出りしていたアレックスと、彼達は知り合いになりました」

當時、アレックスの家は既に危ない狀態だったという。

「可奈子は……あっという間に、アレックスに夢中になりました。でも彼は……彼が興味を示したのは亜沙子の方でした。こんな言い方は本當に失禮なんですけど、外見だけで言えばそれは……亜沙子の方が男の好意を得るであろうことは明白でした。それに元々、バイオリンのために留學してきていたのです。亜沙子はアレックスを相手にしていませんでした。でも、それが卻って彼の関心を深め、可奈子の競爭心を煽ったのかもしれません……」

同士というのは、とビアンカは続ける。

「表面上で仲良くしていても、裏では互いの悪口を言い合う、なんていうことはごく日常のことです。ただ亜沙子は決して、私に可奈子のことを悪く言ったりしませんでした。でも可奈子の方はどうも、ずっと亜沙子にコンプレックスを持っていたようでした。だから余計でしょう、アレックスの興味を引こうとして……」

「可奈子さんは、アレックス氏のどこがそんなに良かったのでしょうか?」

思わず聡介は訊ねた。

「本人から直接聞いた訳ではありませんから、推測になってしまうかもしれませんけれども。可奈子はい頃からずっと、外見のことで隨分とからかわれたらしいです。荒れがひどかったこともあったらしくて、心に深い傷を負っているようでした。アレックスは……彼にとっては挨拶代わりの【可いお姫様】っていう言葉が、彼の心を摑んでしまったんです」

日本人男なら絶対に言わないな、ホストでもない限り。

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