進一は欠をしながら、

「警察の人が來るまでお話しようよ。今日はもう、勉強は終わり。ね？」

そう言ってテレビのリモコンを取って電源をれた。

「なんだ、まだニュースになってないんだ……さっきの」

つまらなそうにスイッチを消すと、彼は

「周君、の子にモテるでしょ？」といきなり言った。

「……さぁ？」

「そういえば男子高だったっけ。でも大學にったら、選ばなければすぐに彼ができるよ？　周君イケメンだし、優しいし……なんて言ったって……」

「藤江製薬の曹司だから？」

わかってるんだ、と嬉しそうに進一は笑った。

「でも、俺は人の子だよ」

「そんなの関係ないよ。達にとって大事なのは、肩書きなんだから」

「……そういう先生こそ、かなりモテるんだろ？」

「まぁね……言い寄ってくるの子はたくさんいるよ。けど、どいつもこいつも同じ顔にしか見えないし、頭悪そうで……だいたい金目當てなのがけて見えるから、ものすごく嫌」

そうだろうな……と周は思った。

そこへちょこちょこ、と子貓が走ってきた。先日彼の実家で見たキジトラの子貓だ。

「あ、この子……この子だけ、こっちに連れてきたの？　スコティッシュの方は？」

「死んだ」

「え……どうして？」

「この子のことをイジメるから、始末した」

始末。その単語に周は戦慄を覚えた。

「前にさ、周君言ったよね。高いお金を出して買った子貓と、拾った雑種の子貓。どっちの子も同じだけ可いって。でもね……人間だったらどう？」

「何を言って……」

「良家のお嬢様と、貧乏な家に産まれたの子、２人から同時に好きだって告白されたら周君はどっちを選ぶ？」

進一はし考えた様子で首を傾げた。

「うーん、ちょっと違うかな……周君に息子がいたとして……」

この人は何を言っているんだ？

周の頭は混をきたし始めている。

「ねぇ、周君。一応形式的にだけどさ、人質に取ったからにはそれっぽくしておいた方がいいよね？」

進一は予め用意していたのだろう、ソファテーブルの上に置いてあるロープを取って、周の手首をつかんだ。

「抵抗しないでね。ちょっとでも変なき見せたら、ほんとに撃つよ？」

周はただ、黙って頷くしなかかった。

両手も足も縛られた狀態で、本當にきが取れなくなる。

ようやく、尋常ならざる事態なのだということがひしひしと伝わってきた。

その時、進一の攜帯電話が鳴った。

「はーい、警察の人？　僕です。周君？　もちろん一緒にいるよ。でもまだ無理にって來ないでくださいね。彼と話したい事がたくさんあるから。それじゃ」

進一は攜帯電話を床の上に投げ捨てた。

「ほんと警察の人って気が短いよね」

ね、と進一は笑いながら銃口をこちらに突きつけてくる。それが本であることは先ほどの騒ぎで証明済みだ。

「……先生、さっきの話だけど」

「なんだっけ？」

「人を殺したって……」

進一はああ、と何でもないことのように笑った。

「殺したんだよ、僕がアレックスをね。警察も一度はそのことに勘付いたみたいだったから祖父に頼んでうやむやにしてもらった。けどさぁ、しつこいんだよ。何か証でも出たのかな？　それとも……」

「どうして……？」

「どうして、だって？」

そう問い返した進一の瞳が、ひどく冷酷なを帯びているように周には見えた。

「そうだなぁ、周君にだけは全部教えちゃってもいいかな。確か、大好きなお姉さんがいるんだったよね。君もこの先、僕と同じ思いをすることがあったらきっと……間違いなく役に立つから」